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ネクスト  作者: 黄昏
3/4

3話

20時(8時)にもう1話投稿します

魔法陣から放たれる眩い光により目を瞑っていた浩二は、光が消えた事を目蓋越しに確認すると、目を開けた。


するとそこには、自分の知らない部屋の光景が広がっていた。木造で作られたはずの部屋は、コンクリートで作られた浩二の部屋よりも頑丈そうに感じられ、おそらくそれが魔法か何かによるもののせいだろうと浩二は思う。


部屋の中には、ベッドと机、椅子、本棚、クローゼットと思われるものがありそれ以外の家具は置いていない質素な部屋であった。



「ここが、レイスの本に書いてあった異世界で最初に訪れる事になるレイスの家の部屋の一つ、なんだろうな。」



レイスが置いて行った本の中には、浩二が異世界に来た場合どこに転移するかという説明が書かれていて、そこには辺境にあるレイスの家の一室に転移されるように設定されていると記されていた。浩二はその事を思い出しながら、下を見ると人が一人分入れる大きさの魔法陣が描かれていて、本の異世界転移の儀の魔法陣と見比べるとその大きさ以外全く同じ魔法陣であることが分かった。



「うん。大きさ以外全く同じ魔法陣だ。おそらく本の魔法陣と対になっていてこの魔法陣がある場所にしか転移できないようになってるんだろうな。」



浩二はそう結論付け、ふと机の上にある文字が書かれた紙に気がつく。



「なんだこれ?いや、状況を考えるとレイスって人の書き置きか。」



そこには、こう記されていた。


浩二君へ


こんばんは。いや、浩二君の性格と私が施した思考誘導の魔法を考えると、こんにちはかな?君は今、思考誘導の魔法とはどういうことかと思っているだろう。簡単な話さ。浩二君が異世界に確実に来るように、その思考を少し誘導するための魔法を君の脳内に現れたときにかけさせてもらったんだ。これは、異世界に行きたくない人を無理やり行きたくさせるような強い魔法ではない。ただ、少しばかり異世界に対する不安、恐怖を取り除き、また私やその本に書かれている事に対する疑問、疑念を少なくさせるくらいの効果しかない。もちろん私は君を騙そうとは思っていないし、あの本に書かれている私についてのことやこの世界についてのことは全て事実だから安心して欲しい。本当はそんなことをしたくなかったんだけど、こちらにも異世界転移の儀に必要な魔法陣の維持のための魔力が、あと少ししかないという事情があってね。浩二君の性格なんかを考慮したら、異世界に来ることはほぼ間違い無いと思って、魔力がなくなる前に素早く異世界に来て欲しかったんだ。だから、こっちに来るとかに感じる戸惑いなどを少なくさせて貰った。ただ、勝手に魔法をかけたことは本当にすまないと思っている。どうか許して欲しい。もう、こちらの世界に来た段階でその魔法は解けているから安心してもらって大丈夫だよ。


さて、話を進めたいと思う。まず、私はもうこの世にはいないだろう。君の世界はこの世界と遠すぎてね。異世界転移の儀に必要な魔力を集めるのに私の魔力だけではなく生命力も使ってしまった。もともと、私は長くはなかったから、残り少ない生命力を全て魔力に変える事になるだろう。この書き置きは、生命力を魔力に変える過程で書いてるからもしかしたら私の計算違いで生き残ってる可能性はあるけど、それも数%、いや、それ以下の確率だろうね。まあ、君の近くに誰もいなかったら、私の命は文字通り燃え尽きたと、そう理解しておいてくれ。この世界に誘っておいて、このような形になり、本当に申し訳ない。しかし、君がこの世界に来てこの手紙を読んでいるとすれば、それは私の予想通り君は異世界に来たがっていた証拠だろう。そう考えると私がしたことはそんなに悪いことではないのかもしれないな。安心してほしい。この世は、君が真に求めていた世界であると断言できる。この先、君はこの世界で楽しく暮らせるだろう。


                      レイスより




「なるほど。確かに言われてみれば、いくら異世界に行きたがっていたからといって、俺はあそこまで短絡的ではなかったはずだし、いろいろと疑問に思うこともあっただろうに調べようともしなかった。」



アイテムボックスについての検証はしていたが、それについても浩二の中では異世界に行く前提での検証であった。今考えれば、あり得ないことだったと、浩二は思う。



「もし、いつも通り疑問に思ったことを考えていたりしたら、それこそレイスが書いた通り異世界には来られなかった可能性があったから、結果的には良かったんだろうけど。」



そう言いながら、床の魔法陣を見ると一部が薄くなり消えかかっているのがわかる。



「つっっ!?本当にギリギリだったってわけかよ!」



もし、レイスが思考誘導の魔法をかけてくれなければ、この世界には来られなかったであろう事に浩二はゾッとする。いや、ただ来られなかっただけならまだいい。もし、転移する途中で異世界転移に必要な魔力がなくなり始めたとしたら、自分は一体どうなっていたのだろうと、それを考えると浩二は体が震えるのがわかる。



「落ち着こう。とにかく今は異世界転移させてくれたレイスに感謝するだけだ。にしても、もし魔力が消えかかっているときに転移しようとしたら転移しないだけですむのか、下手したら手足だけ異世界に送られるなんてこともあったかもな。」



浩二は首を振り、これから先のことを考える。家の外がどうなっているのか確認するべきだろう。あとは、家には何があるのかといったことも重要だ。だが今は何より、自分の力について確認したいと浩二は思うのであった。

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