侵略の雨
雨の中で音は捕らえられた
わたしの声
発したそばから
掻き消えるように
巧妙な罠のような
雨粒の連打
隙のない空間に
放り出され
わたしは今から
すっかり雨に
のまれてしまうのだろう
雨の胃の中で
近隣の景色──
狭い小路と
ブロック塀
隣家の庭先のオリーブ──
そんなものと溶けあい
ちょっとした
自己憐憫が霧散するさまを
わたしは他人事のように見つめ
濡れている
されど、
わたしの声
捕らえられたわたしの声は
唇の形そのまま
打ち付けられた
古びたアスファルトの上
窪んだ水溜まりのなかで
時折跳ねては
波紋をつくり
否応なしに
組み込まれるこの世界に
なけなしの抵抗を
試みるのだ