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合同訓練②

 激しい鋼と鋼の打ち合い。砂痕の攻撃はなかなか敵を捉えることが出来ずにいた。


「攻撃が当たらねぇ!!チクショウ。」

 

 敵は素早く、いくら泥を作り出しても足を取られない。致命打こそもらってないものの、持久戦が続くと負けるのは目に見えていた。


「お前、なかなか強い  な!!」


 砂痕は深く地面を踏み込む。


「2期生砂痕。ドーム中尉のお気に入りだっけか?」

「そうだぜ。1期生の侍とやらに打ち勝てばドーム中尉はリンテ王国の警備兵に斡旋してくれるって話だ。」

「哀れだな。ドーム中尉の嫉妬に付き合わされるなんて。私は煙香(けむりか) 速羽(そくわ)。残念ながら私は、貴方の狙っている•••。」


 ギリギリ ガサガサ


「おしゃべりはそこまでだ。ぬかるんでるせいで木が倒れるぜ。」


 大きな音と共に木は倒れ、速羽に迫る。おそらく避けられるだろうが、避ける動作に合わせて攻撃すれば捉えられる。


「逃げ道が分かっていれば、造作もないことだぜ!」

 

 速羽はなんとか剣で防御したが、砂痕は力で剣もろとも速羽を吹っ飛ばした。しかし追撃する前に視界がホワイトアウトしていた。


 (くそ。煙幕か!逃げるつもりか?)


 そう思ったのも束の間、砂痕は切られていた。とっさに身を逸らしたため、ダメージはさほど無いが一気に状況が悪化したことには変わりない。


 (あいつ、この煙幕の中で俺が見えてやがる。能力か?)


「まぁ いいわ。私もお前ぐらい倒せなきゃ追いつけない。この煙幕は私の能力。もう2度と私を捉えることはできない。」


 煙は引かず、真っ白な視界の中で砂痕はただ防御に徹するしか無かった。僅かな物音を頼りに攻撃を察知するが、限界は近かった。


 (いい攻撃も何発かもらっちまった。どうすればいい。ドーム中尉の期待を裏切るわけにはいかない。こんな死にかけの星と心中するつもりはない。リンテ王国に行くには1期生を超えるしかねぇ。)


砂痕は速羽の言葉を思い出し突破口を見出した。


「そういやお前、煙が能力ってことは目は普通なんだよな?」


 土壌変化 砂浜嵐種。地面を砂浜に変え、斧を旋回させると、辺りに大量の砂が舞い上がった。


「なにコレ。視界が•••。」


 速羽の視界は巻き起こった砂嵐に奪われた。


「これでまた振り出しだぜ。そして!土壌変化 玉砂利 音痕。ここからは俺が逆転する。」


 地面を玉砂利に変えた。これで敵の足音が分かり、追跡が容易になる。


 ジャリ  ガキィン ズバン


 足音を辿り、斧を叩き込む。砂痕は止まらない。


「うぅ、砂が目に•••。いや•••痛いのは嫌だ。」

「そりゃ兵士に向いてないんじゃねぇの?トドメだ。強いことは認めてやるが俺より下だったな。」


 しかしその一瞬、速羽の動きがキレを増す。


「でもトドメを指すのは私。タイムオーバーよ。玉砂利からは新たに砂嵐は発生しない。砂嵐はある程度収まった。」


 砂痕の腹に剣が突き刺さる。


「カハッ グゥ••• 土壌変化 泥の足枷!」


 砂痕は力を振り絞り、剣を刺されたまま速羽の両肩を持ち、体重をかける。速羽の足は泥に沈んでいく。


「とらえた!土壌変化解除!ウ••• グハ。」


 速羽の足が地面に埋まったまま森の土に戻り、彼女は身動きが取れなくなった。剣を体から引き抜き。傷が塞がっていく、意識を持っていかれそうになりながら、斧を振りかぶる。


「俺の勝ちだな。寝てろや!」

「嘘•••。降参します!私の負けです!」


 速羽は剣を捨て両手を挙げた。


 (俺は腹に穴が空いたのに、お前は軽症で助かろうとしているのか?ムシが良すぎる。)


 砂痕は斧を振り下そうとすると速羽は喋り出した。


「なんでよ!?降参したじゃない!?」


 しかし砂痕はトドメをさそうとする。


「なんで•••。わ 私はお前の狙っている侍じゃない!私は1期生でも2番目の実力しかないの。だから•••。」


 砂痕の斧を持つ手に力が入る。


「一期生のトップ 切那なら、そもそも模擬戦に参加していない。私でも全く歯が立たないほど強いから。」

 

 苦労して倒したヤツが1期生のエースでは無かった。この調子で侍に当たって勝てるのか?という不安を怒りでごまかし塗りつぶす。

 砂痕は斧を振り下ろし、非情にも完全な勝利を手に入れた。




 





 砂痕が勝利を納めた頃、千里花は不安に押しつぶされ泣きそうになっていた。少し涙が出ていたかもしれない。チームの翔牙と離れ離れになってしまったからだ。


「翔牙さ〜ん。寂しいよ〜。怖いよ〜。」


 そして千里花は能力を使って前の安全確認をしながら進む。石橋を叩いて渡るように。

 その時、たまたま地下に空洞があることを見つけた。


 (もしかしてここに隠れていれば、安全なんじゃ?でも訓練的にどうなんだろ?でも怖いし。)


 千里花は入り口を見つけ、中に入った。訓練としてとか、評価が下がるとかいろいろ気にしたが、全て恐怖心に勝るものではなかった。

 少し奥に進むと、誰かがさっきまでここにいたかのような痕があった。千里花の下がってきていた恐怖心が、少しずつ増大する。


 (オバケいない オバケいない オバケいない)


 進んでいると能力で前方に2つ、人の影を確認した。


 !!?


 千里花は口に手を押さえ戦慄した。そこにいた人は、明らかにリンテ王国関係の人ではない。武装をしている彼らの装備はリンテ王国に支給されるものではなかった。しかし千里花には見覚えがあった。座学の時に出てきた、リンテ王国の統治後に反乱を起こした反乱軍の装備だったからだ。


 (ウソ!反乱軍は壊滅したはず。なんで!?なんでここにいるの?もしかしてここで何かするつもり?逃げて報告しないと!)


 しかしその時、千里花の背後から別の人が歩いてきていた。


 



 

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