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同じ思い

「目が覚めましたか?フフッ おはようございます。」

「ここは?試験はどうなった?」

 

 どれぐらい眠っていたんだろう。寝違えた首が痛い。


「ここは医務室です。あなたは丸一日眠っていました。昨日までに入隊式も終わったので、今日からあなたも訓練に参加することになると思います。あなたのおかげで、あの後の採用試験は平和でした。ぜひ名前を教えてくれませんか?」


 互いに簡単な自己紹介を済ませた。彼女は眼業(げんぎょう) 千里花(ちりか)。俺が暴れた後、もう一度体力テストをおこない正式に合格をもらったのだとか・・・。どうやらすごい能力の持ち主らしい。


「私も翔牙くんみたいに強くなりたい。きっとあの時、立場が翔牙くんと逆だったら怖くて足がすくんでた。だって見ているだけでも怖かったもん。」

「誰だって初めから強いわけじゃ無い。それに能力が強いなら俺なんかよりきっと強くなれる。俺もまだまだ弱いからな。あんなパンチで伸びてるようじゃだめだ・・・。そうだ時間があるなら能力みせてくんない?」


 せっかくだから能力を見せてもらうことにした。彼女は少し得意げになって壁に向かって歩き軽く目を閉じた。


「私の能力は千里眼!鍛えればかなり遠くまで見れるようになるかもって。偵察兵として有望だって合格にしてくれたの。今は隣の部屋が精一杯だけ・・・」


「はぅぅ!!!」


 急に千里花はすっとんきょうな声を上げた。いったいどうしたっていうんだ。・・・そういやこの隣の部屋って俺が鹿医と行った男子トイレだった気がする。


「確かに強い能力だな。覗きたい放題じゃねーか。羨ましいかぎりだ。」

「いや・・・。ちがっ  うるさーい!」


 パァン!


 なぜあの時、俺はビンタされたのか。理解できない。



 目が覚めたのはちょうど昼休みだったようで昼から訓練に参加することになった。昼からは座学らしい。

座学を行う会議室に入ると、千里花以外の合格者もいた。俺を含め20人合格したらしい。その中には鹿医の姿もあった。


「よーう!兄弟!初日から遅刻なんてイカしてるなぁ。さすがは、俺の認めた男だぜ。」


 むかつくヤツだ。

 入隊してから半年は治安維持活動には参加せず、敷地内での訓練が主な仕事になるらしい。そして2期生の訓練の担当は、にっくきドーム中尉だった。



 

「金の林檎の起源は600万年ほど前にもさかのぼり、トロイアルド王国とアキレウロントス王国の戦争中トロイアルド王国が開発した物であり、トロイアルド王国の滅亡と共に世界中に拡散され・・・。」

 

 座学の内容は主に、この世界における一般常識だった。俺がリンテ兵に志願した一つの理由は、情報収集だ。しかし、この座学の内容はすでに師匠に教わったものばかりだった。もともとこういった座学には期待していなかったが・・・。俺が求める情報はリンテ王国の情勢、そしてリンテ王国以外も含めた世界情勢だ。自分の国を取り返すためにはリンテ王国に変わる後ろ盾を得るしかない。リンテ王国は自分以外の国の存在を日本人に隠している。どうにか他国と連絡を取り加勢してもらわないと、戦いを挑んでも勝ち目は無い。そしておなじ失敗をしないためには、後ろ盾になる国を選ぶ必要がある。千里花の能力が自分に有れば情報収集に便利なんだが。

 座学が終わると鹿医が寮へ案内してやる。と言ってしつこく誘ってきた。個人的にはまだやりたいことがあったので断りたかったんだが、理由を聞かれて革命の為の情報収集だと言うわけにもいかず、しぶしぶ了承した。寮は駐屯所の敷地内にある。


「ここがお前の部屋だぜ。」

「そうか。案内ありがとな。」


 そういって鹿医を返そうとしたが、鹿医も部屋に入ってくる。相変わらずめんどくさいヤツだ。


「歓迎会をするつもりは無いぞ。」


 帰ってほしいオーラを全開にする。伝われ!この思い!


「歓迎会は必要ないぜ。それに兄弟も初日で疲れたろう?」


 よし!伝わったぜ。


「でも俺は兄弟と相部屋だぜ?」

「・・・。」


 そもそも俺は鹿医と離れることが不可能なようだ。1人部屋だと集めた情報の整理をしやすいんだが、世の中はそんなに甘くはないらしい。俺が荷物の整理をしていると鹿医が話してきた。声のトーンがいつもより少し低い。


「採用試験の時、なぜ兄弟の前の応募者を見殺しにしたんだ?助けに入れば彼は重傷を負わなくてすんだだろう?」

「彼は鹿医が治療して再度体力テストを受けたんだろう?千里花から聴いたぞ。」


 不老不死だろうと治癒には時間がかかる。その治癒の時間を短縮する医療術を鹿医は持っている。まあ、今はそういう話をしているわけでは無いが・・・。


「話を逸らすなよ。俺が言っているのは結果じゃない。」

「俺には人のことを気にする余裕がねぇーんだよ。俺はどうしてもここに合格する必要があった。あのタイミングで助けていたら、不合格になったかもしれない。それだけだ。」

 

 鹿医も俺を叩き落としても受かると言っていた。理解できないはずはない。


「そうだな。俺も逆の立場なら助けていない。俺が知りたいのは大義名分だ。理由があるんだろう?兄弟はいいやつだ。理由が無ければ助けていた。」

「・・・。」


 俺は返す言葉を見つけられなかった。


「そうだな。兄弟、俺はかつての日本を取り戻したいと考えている。お前もそうじゃないのか?兄弟の目からは強い覚悟を感じるんだ。」

 

 確かに鹿医が言っていることに間違いはない。ここで俺が本音を言えば協力者ができる。


「今の言葉。誰かに聞かれたら反逆罪だぞ。今回は聞かなかったことにしてやる。あと勘違いされると困るんで訂正するが、俺は自分の生活のためにここにいるだけだ。俺はお前の思う兄弟じゃない。」


 だが・・・。俺は嘘をついた。ここは敵地だ。誰にも隙を見せるわけにはいかない。誰も巻き込む訳にはいかない。俺は1人でいい。嫌われていていい。協力はしない。だまして利用するだけだ。そうすれば失敗しても、その責を負うのは自分1人でいいから。





因みに帯電の彼は、ちゃんと不合格になりました。

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