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序章-採用試験-

初投稿です。生暖かい目で見ていただけると幸いです!

「2120年4月1日午前7時、現在のニュースをお伝えします。この日本がリンテ王国の統治下に入って10年の節目を迎えました。当時、活発になっていた反乱活動も撲滅され、いまではリンテ王国より派遣されたクレン・ステイズ日本国王のおかげで平和な日々が過ごせています。統治を記念した式典が本日13時よりクレン城広場にて......」

 

 俺は、本当にくだらないニュースだと思い、ため息をついた。幸いイヤホンをつければリンテ中央区に流れる不愉快な放送は耳に入って来ない。

 

 何が平和だ。10年前、甘い汁をすすりに来ただけの害虫がよ……

 

 11年前、第三次世界大戦ともいえる戦争があった。だが戦争相手は宇宙人であった。この星(地球)は他の星より侵略を受けたのだ。当時、宇宙人の存在さえ確認できていなかった地球人は当然パニックに陥り、各国の政府は数日で瓦解。生き残れた政府は交渉で平和的な解決を望むしかなかった。兵隊や自衛隊の兵器は通用しなかったからだ。それでも侵略を見ていられず上の命(政府)に背き反逆し攻撃を仕掛けた軍隊は弾圧され見せしめに処刑された。そこから数週間すると地球はかつての繁栄は見る影もなく、地獄と化していた。意味も無く人は命を奪われ、気に入られたものは、その場で奴隷として連れ去られた。

 侵略してきた宇宙人には地球人と違う点がいくつかあった。1つ目は不老不死であり、身体能力が異常に高かったこと。銃弾などの兵器の効果は0じゃ無かった。しかし頭を貫いたはずの敵兵は数日後には戦場に復帰していた。命が有限である地球人は恐れをなし、命が無限の侵略者は日々、勢いづいていた。

 2つ目は、摩訶不思議な力を持っていたことだ。1人で戦車をひっくり返すような力を持っていたり、銃弾を跳ね返すような人物もいた。そんな力を持つ侵略者と戦う彼らは、漫画の主人公にぶっ飛ばされる雑魚と変わりはなかった。

 多くの命と文明は失われていた。人類歴史上、最悪の戦争が始まってからからおおよそ1年経ったあと、やつらは救世主として現れた。リンテ王国という侵略者とは別の惑星より来たという彼らは、地球に黄金の林檎(りんご)と呼ばれるナノマシンをばらまいた。そのナノマシンは地球人を不老不死にした。それにより犠牲者の増加を食い止めることができた。リンテ王国より兵が派遣され、人々を連れ去るために飛び交っていた宇宙船は破壊され、侵略者どもの拠点は瞬く間に落された。リンテ王国の兵士たちによって侵略者は駆除され、この一方的な戦争は終結したのだ。

 

 まぁ、これは最近の社会の授業で習うこの国の歴史だが、リンテ王国に改変された部分もある。それに戦争を終結した代わりに日本人は多くの物を失った。星を救って貰ったリンテ王国には頭が上がらず、彼らの言いなりになるほかなかった地球は、親交とは名ばかりの不平等条約を結ばされた。それは一国の統治権を譲るという内容だった。ボロボロになった世界各国の首脳たちは会議を開き、侵略の中心地だった日本の統治権を譲渡することで決定。日本の首脳は、なぜか欠席していたこともあり即決だった。条約が制定されたことで人権や土地、日本のすべてがリンテ王国のものとなった。統治権と引き換えに与えられるのはリンテ王国で処理できない産業廃棄物ぐらいなものだった。

 

 そして、リンテ王国が日本を支配して4年が過ぎると、日本人にも能力の発現が見られるようになった。更に4年が過ぎると日本人の6割が能力を持つようになっていた。そこで始まったのが日本人のリンテ兵募集の求人だ。日本人の中でも兵士としての才能のあるものは、日本の治安維持。さらに優秀な者はリンテ王国に従軍する兵にしようと考案されたらしい。1期生の募集は1年前に行われ、おれはその2期生の応募者として駐屯場の受付に向かった。


 リンテ王国関連の仕事は、事前に知れる情報が少ない。SNSが大きく制限されているからだ。過去に反乱運動が激化した理由がSNSだった。一部の上流階級に属する人達がリンテ王国統治前に海外に避難したという情報がSNSで拡散されたのを火種に大きな反乱運動が起きた。さらにリンテ人の横暴な態度や、被害の声が発信されると火に油を注ぐように反乱運動が大きくなっていき、最終的にリンテ軍を投入するまでにいたった経緯がある。


 今回の求人も不鮮明で一応高所得、高待遇を謳っているが2度と外に出られなくなる。評価が低くなると洗礼をうける。人体改造を受けるなど、様々な噂が飛び交っている。だが俺はそれでもリンテ兵に志願する確固たる理由がある。


「名前と自分の能力を申告しろ」


 とりあえず受付を済ますとしよう。なかなか強面な受付だ。おそらくリンテ人だろう。


「俺の名は爪乃谷(つまのや) 翔牙(しょうが)!18歳だ。能力は身体強化だ。よろしく頼むぜ。」

「年齢は言わなくてもいい。何歳だろうが貴様ら地球人の成人は20歳前後の状態で金の林檎に固定されているだろう?それとも成人より2歳下だから優遇してもらえると思ったか?」


 なにかと鼻につく受付だ。


「いや、クセで言っただけだ。もう行っていいか?」

「この書類に必要事項を書け。あと同意書にサインしろ。」


 しかしなんて無愛想な受付だ!ちょっとは日本人を見習えっての•••。

 適当に受付を済ませると大部屋に移動するように言われた。そこには50人近くのリンテ兵志願者がいた。


「お前も志願者だろ?一緒にトイレ行こうぜ!」


 大部屋に入るや、いきなり声をかけられた。というか自己紹介より先に連れションに誘われたのは生まれて初めてだ。


「誰だよお前。」


「あぁ。俺の名前を知りたいか?」


「結構だ。」


 なんかめんどくさそうなのに目をつけられたな。逃げるか。

 その場を離れるが、連れション野郎はついてきた。


「逃げるなよ。兄弟!」


 俺とお前はいつ兄弟になったんだ。ムカつく野郎だ。


「ここの大部屋の近くにトイレがないんだよ。1人で行くのは不安でさぁ。ねぇ?めんどくさそうな顔しないでよ。おい。試験中に隣で漏らすぞ?」


 どんな脅迫だ。ていうかコイツと受付番号一つ違いかよ!


「わかった。一緒に行ってやるからちょっと黙れ。」


「ヒュウ。流石は兄弟だ!因みに俺の名前は朝葉(あさば) 鹿医(かい)だ。よろしくな!」


「爪乃谷 翔牙だ。」


 トイレまでの道すがら黙って行くのも気まずいので少し話をすることにした。


「鹿医。なぜリンテ兵に志願を?」


「うちの親父が診療所やっててよ。でも皆んな不老不死になっちまっただろう?病人が少なくなることは嬉しいことなんだが、商売としては上がったりでよ。ただでさえ今、不景気で働き先がないから食っていく為に仕方なくさ。」


 確かに鹿医のようなケースは少なくない。お年寄りが20歳近くに若返ったこともあり病院やお年寄りがよく使うサービス業は軒並み潰れていった。それだけじゃ無くリンテ王国の圧政もあり、ここ数年不景気が続いていて職を失う人が後を立たないのが現状だ。


「お前はどうなんだよ。親御さんは反対しなかったのかい?」


「両親なら11年前の侵略の時に死んだよ。」


「そうか。余計なこと質問しちまったな。俺は兄弟を叩き落してでも採用されるつもりだ。だから同情はできねぇが、お互い受かるといいな!」


「あぁ、そうだな。」


 俺もなんとしても採用されなくてはならない。この国を変える。奪われたものを取り返し、日本人としてこの国に立つため、日本人の人権を無視するリンテ人をリンテ王国に追い返すため。そして俺の師を取り戻すため。こんな場所で立ち止まるわけにはいかない。

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