黒騎士
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※感想への返信はしておりませんが、全て読ませていただきます。
※更新は不定期ですが、更新する際は区切りが良いところまで (本にすれば一冊分くらい) 続けるつもりです。
紅葉のシーズン。
高速道路のサービスエリアは、観光客で賑わっていた。
そこには制服姿の学生たちも大勢いる。
観光地が近く、修学旅行の学生たちが立ち寄っているのだ。
俺【新藤 誠太郎】も、修学旅行中の高校生二年生だ。
少し長めの黒髪は、前髪が邪魔なくらい伸びている。
自分で切りたいのだが、以前失敗してからどうにも切る気がしない。
そんな俺が屈んで覗き込んでいるのは――。
「うおっ! これ、黒騎士のフィギュアじゃないか! 近所で売り切れていたのに、あるところにはあるんだな!」
――ガチャガチャとも呼ばれるカプセルトイのボックスだった。
一個五百円と、カプセルトイにしては高額な部類だ。
景品は黒騎士という特撮番組のフィギュアである。
黒い全身鎧のようなパワードスーツを身にまとう黒騎士は、赤いボロボロのマントをつけている。
武器は様々だ。
拳銃にライフル、剣も扱う。
黒騎士のパワードスーツは、科学と魔法が融合した技術の結晶! ――という設定だ。
とにかく、己の正義を貫くその姿に憧れていた。
少々ダーティーなところもあるが、黒騎士のパワードスーツで悪を倒すところは今でも覚えている。
「本物の黒騎士だ。いいなぁ~」
黒騎士に憧れて、両親に将来の夢は「黒騎士みたいなヒーローになること!」と、元気に答えていた。
両親がそれを見て笑っていたのを覚えている。
ただ――作品の人気はなかったのか、立体物には恵まれていない。
近所でカプセルトイが発売された時は、買う人は少ないだろうと油断していたので買いそびれてしまった。
だから、まったく人気がないとは言えないかもしれない。
ファンとしては複雑な心境だ。
意外と人気があって嬉しいが、そのためにフィギュアが手に入らないのは悔しい。
近くにあった両替機の前に立つ。
財布の中には三千円が入っていた。
「――六回はいけるな!」
祖父母にお土産を購入したら、残りはこれだけになってしまった。
全て五百円玉に両替すると、俺は迷いなく黒騎士シリーズのボックスの前に立った。
「出てくれよ、黒騎士ぃぃぃ!」
ここまでで理解できるだろうが、俺はオタクだ。
ガチではなく、マイルドな部類だろう。
だが、クラスでは明らかに浮いていると思う。
色々と理由があり、今はクラスで居場所がない。
それもいいと思っている。
クラスメイトと仲良く出来るとは思っていないからだ。
正直なところ、退学でもしてアルバイトでもしたいところだが、祖父母がそれを許してはくれなかった。
だが、黒騎士のカプセルトイを見つけただけでも、この修学旅行に価値があったと思える。
「一個目は!? ――外れたぁぁぁ!!」
カプセルは真っ黒で中身が見えない。
開けてみると、入っていたのは違うフィギュアだった。
「でも、外れたけど凄ぇな」
黒騎士の四輪バイクは、タイヤが非常に大きい。
悪役が乗りそうなデザインをしている。
そんなバイクだが、とても精巧に出来ていた。
黒騎士のフィギュアにも期待が持てる。
「よし、次だ――二個目は――また違ったぁぁぁ!」
カプセルトイのボックスが並ぶコーナーで、俺は一人で頭を抱える。
二個目は敵側のフィギュアだ。
黒騎士とは違い、白いパワードスーツに身を包んでいる。
どちらかと言えば、こちら側が正義の味方にも見える。
敵だが――まぁ、黒騎士のライバルで「白騎士」だ。
白騎士は正義らしい正義の味方で、黒騎士のやり方を否定するのだ。
二人の戦う場面は本当に迫力があった。
同程度の性能を持つ敵で、黒騎士がまけるのではないかとハラハラしたのを覚えている。
「うん、これもいいけど、本命は黒騎士なんだよ。頼むぞ、三個目――外れたぁぁぁ!」
出て来たのは、怪人のフィギュアだった。
それも続けて「蜘蛛」「蜂」「蟷螂」の三種類が出て来てしまった。
「おい、待ってくれ。これ、あと一つでもかぶったら、黒騎士のフィギュアが手に入らないじゃないか!」
俺は震える手で五百円玉を入れる。
そしてゆっくりとレバーを回すと、最後のカプセルが出て来た。
震えながら蓋を開けると――。
「来たぁぁぁ!!」
――そこに入っていたのは黒騎士だった。
涙が出そうになる。
「全額投資して良かったぁ」
喜びながら、フィギュアを丁寧にポケットに入れる。
他のフィギュアはリュックに入れて、カプセルは近くにあったゴミ箱へと持っていく。
「修学旅行に来て良かった」
一人でニヤニヤしていると、近くをクラスメイトたちが通りかかった。
カースト最上位のグループで、俺が嫌いな連中だ。
ワックスで髪を立たせた【瀬田 蒼馬】が、俺を見て嫌そうな顔をしている。
「おい、見ろよ。あいつ、玩具なんか買ってるぜ」
俺を指さしてくると、一緒にいた女子たちも俺を気持ち悪そうに見ていた。
「うわ、最悪」
「あいつも退学になれば良かったのに」
「だよね」
――俺も元からボッチだったわけじゃない。
趣味が同じ友人が二人いた。
だが、今年に入ってすぐに――二人は退学させられている。
理由は女子の私物を盗んだから。
二人の持ち物の中に、女子の私物が入っていた。
その日の俺は、風邪で学校を休んでいて巻き込まれなかった。
俺が睨み付けると、瀬田が鼻で笑っている。
「行こうぜ。あれ? そう言えば、雪菜ってあいつと知り合いだよな?」
雪菜、いや――【浦辺 雪菜】は、男子が好きそうな女子だ。
黒髪のショートヘアーで、華奢な体つきをしている。
容姿も可愛く、男子の人気も高い。
だが。
「止めてよ。あんな奴、知り合いだなんて恥ずかしいよ」
「ごめん、ごめん」
子供の頃は一緒に遊んだこともあったが、今は挨拶すらしない。
中学からお互いに距離が出来て、そこからは他人だ。
俺が顔を背けてリュックを背負うと、後ろから馬鹿にした笑い声が聞こえてきた。
俺に力があるなら、あいつらをぶっ飛ばしてやりたい。
――なにしろ、俺の友人たちを退学に追い込んだのは、瀬田や浦辺たちだ。
友人二人は泣きながら自分たちはしていないと言っていたが、教師たちも瀬田たちを信じてしまった。
その後だ。
退学までさせられるとは思っていなかったのか、それとも退学させられたのを見て怖くなったのか――転校する女子が最後に俺に真実を教えてくれた。
彼女は俺に謝ってきたが、被害を受けた二人には怖くて会えないと言っていた。
俺は二人に謝罪して欲しかったが、それを聞いて教師にも抗議したのだ。
だが、全ては終わった話だ。
今更蒸し返せないと言い出して、有耶無耶にされた。
学生一人ではどうしようもなかった。
俺が事実を知ったと気付いたのか、瀬田たちはそれから俺を無視している。
酷いいじめはないが、クラスでは腫れ物に触れるような扱いだ。
回りも本当のことを知っていたらしいが、ずっと黙っている。
――本当に力が欲しい。
黒騎士のように、自分の正義を貫ける力が欲しい。
同時に、力のない自分が情けなかった。
「もうバスに乗るか」
自由時間が終わるまで時間が少し残っているが、俺は黒騎士のフィギュアを入れたポケットに手を当ててバスへと向かった。
◇
バスが出発しようとすると、他校のバスも動き出していた。
車内で俺の隣に座るクラスメイトはいないので、ポケットから取り出した黒騎士を手に取って眺めていた。
周囲の話し声が聞こえてくる。
「なぁ、さっきの他校の女子、滅茶苦茶可愛くなかった?」
「それより女子校の生徒も来ていたよ。本当に女子ばっか」
「当たり前だろ。でさ、俺って他校の女子と連絡先を交換したんだけど――」
男子たちの話題は他校の女子が可愛かったというものだった。
ついつい、俺も聞き耳を立ててしまう。
興味のない振りをするため、黒騎士のフィギュアを見ている。
見ていると、子供の頃を思い出す。
あの頃は楽しかった。
本当に正義の味方がいると思っていた。
すると、徐々に車内の様子がおかしくなってきた。
「ねぇ、おかしくない?」
「霧が出て来たね」
「ちょっと視界が悪いわね」
先程まで窓の外は駐車場だったのだが、霧が出てくると視界が悪くなる。
徐々に十メートル先も見えなくなり、すぐに窓の外が白い霧に包まれて何も見えなくなってしまった。
濃霧――周囲の様子が分からなくなると、バスの運転手さんと担任教師が話し合っていた。
「時間通りに到着しますかね?」
「この状態だと無理でしょうね」
「仕方ありませんね。学校に連絡して――あ、あれ? スマホの電源が入らないな。おかしいな。まだ十分にバッテリーは残っていたのに」
それを聞いた生徒たちが不安に思ったのか、自分たちのスマホをチェックしていた。
するとどうだ。
「俺のも壊れた! 買い換えたばかりなのに!」
「わ、私のも電源が入らないよ」
「おい、どうなってるんだ!?」
騒がしくなる車内で、俺もスマホを確認する。
電源が入らない。
中古のスマホなので壊れたかと思ったが、周りの反応から何か起きたようだ。
何か自然現象のせいだろうか?
不安に思っていると、立ち上がった男子生徒がゆっくりと――倒れた。
「え?」
驚いている俺が席を立ち上がろうと腰を少し上げる、先程まで騒がしかったクラスメイトたちが気を失っていた。
「な、何が――」
頭が重かった。
眠くて仕方がない。
立っていられずに倒れると、その瞬間に黒騎士のフィギュアを手放してしまった。
床に倒れた俺は、黒騎士のフィギュアに手を伸ばす。
「――ぁ」
最後に掴んだのか、それとも掴めなかったのかも確認できなかった。
◇
気が付くと妙に頭が痛かった。
まぶたが重い。まるで寝不足みたいな気分だ。
「どこかぶつけたかな? あ、あれ?」
慌てて自分の手を見て、それから床を見た。
「ない。ない!」
俺の黒騎士のフィギュアがなくなっていた。
どこかに転がっていないか必死に探していると、クラスメイトたちが窓の外を見ているのが気になった。
全員が窓の外に釘付けになっている。
「何が――っ!」
窓の外を見ると、そこには緑が広がっていた。
木々に草木が窓の外を覆い尽くしている。
伸びた青い草の中に俺たちの乗ったバスが存在し、周囲には他のクラスのバスや――他校のバスもある。
唖然としていると、担任が声を張り上げる。
「み、みんなは中にいるんだ! 運転手さん、外の様子を見にいきましょう。他の先生とも話をしないと」
担任が混乱しながらそう言うと、運転手さんも慌てて頷いていた。
「わ、分かりました」
慌てていたのか、バスガイドさんも一緒に降りてしまった。
クラスメイトたちが不安そうにしている。
「え? 嘘だよね? 私たちがいたのって駐車場だったよね?」
「これ、新手のドッキリじゃないの? ほ、ほら、今は一般人をドッキリにかけて楽しむ番組もあるし」
「そ、そうだよね! きっと先生たちもグルで――」
これはドッキリなのではないか、それを思った生徒たちが安堵していた。
だが、本当にそうだろうか?
本当にこんなドッキリがあるのか?
――俺は黙って黒騎士のフィギュアを探す。
「どこだ? どこにあるんだ?」
椅子の下を覗き、左手を伸ばしてそこで気が付く。
「あれ? 何だ、このブレスレット?」
銀色のブレスレットをしている俺は、それをどこかで見かけたことがある気がした。
すぐに思い出そうとして、答えが出かかると窓にバシャッ! ――と、何かがかけられた。
液体だろうが、大量の水をかけられたような音だ。
「何だ?」
顔を上げると、窓にベッタリと――黒っぽい液体がかけられているように見えた。
ベットリと窓に張り付き、垂れていく。
それが赤色だと気が付いたのは、少し間を開けてからだ。
女子生徒が金切り声を上げた。
「キャァァァァ!!!!」
その理由がすぐに分かった。
窓にへばりついていたのは、赤い液体だけではなかったのだ。
担任の体の一部――腕がバスの屋根に引っかかる形で垂れ下がっていた。
外から聞こえてくるのは、運転手さんやバスガイドさんの声だった。
「く、来るなぁぁぁ!」
「だ、誰か助け――きゃぁぁぁ!」
二人の叫び声が聞こえてくる。
そして、男子生徒の一人が「ひっ!」と声を出すと、全員の視線が前方のドアへと向けられた。
そこは開いたままだったのだ。
「男子が閉めてきなさいよ!」
「ど、どうやるんだよ!」
「だ、だから、手動で――ひっ!」
ドアに手をかける何かがいた。
三本指で緑色の皮膚。
血のついた手が見える。
入ってきたのは、身長の低い何か、だ。
頭部が大きく、口は顔の端まで広がっていた。
手には石で作られた斧。
そちらにも血がベッタリと付いており、外に出た担任たちを手にかけたのはこいつらだと思った。
その後ろからも続々と入ってくる。
全員――口の周りが血で汚れていた。
それが何を意味するのか、俺は嫌でも理解してしまう。
「人を――食べたのか?」
クラスメイトたちが大慌てで後部へと移動すると、その化け物たちは舌なめずりをして近付いてくる。
俺たちを餌として見ていた。
我先にと後ろへと逃げるクラスメイトたち。
「退けよ!」
「止めてよ!」
「こ、こいつら何なんだよ!」
俺も逃げようと後ろに向かうが、窓の外を見て驚いていた。
「嘘だろ」
バスが揺れる。
大きな手が天井を掴んだからだ。
外には、目の前にいる化け物よりも大きな連中がいた。
大きさは三メートルくらいあるだろうか?
大きな木の棍棒を肩に担いで、バスの中を覗いていた。
そして、近くに停まっていた他クラスのバスに――棍棒が振り下ろされて金属の歪む音が聞こえてくる。
何度も叩くと、バスの中から聞こえてくる悲鳴が徐々に減った。
そして、無理矢理バスを引き裂いて中に手を入れた化け物たちは――動かなくなった生徒たちをバスから引きずり出していた。
嫌な汗が噴き出しながらも後ろへと下がると、俺は腹を蹴られて転んだ。
「なっ、なんで!?」
蹴ったのは――瀬田だった。
周囲も俺を見る目がとても怖かった。
瀬田の腕に捕まっている浦辺も、俺を見る目はとても冷たい。
瀬田が口を開いた。
「前からお前が気に入らなかったんだよ」
化け物たちが近付いてくる。
振り返ると化け物の顔が近くにあり、斧を振り上げていた。
「や、止めろぉぉぉ!」
両手を交差させて防御をしようとするが、その程度でどうにかなるとは思えなかった。
だが、その瞬間に銀色のブレスレットから赤い布が飛び出してくる。
赤い布が俺を包み込むと、外から化け物たちの叫び声が聞こえてきた。
同時に、赤い布が俺を締め付けてくる。
――あぁ、思い出した。
すぐに思いだしかけていたのは「黒騎士の変身ブレスレット」だ。
黒騎士は変身する際に、赤いマントが広がるようなエフェクトが出てくる。
その後、マントを翻して登場するのだ。
赤い布――マントが俺の背中に回ると、ふわりと翻った。
気が付けば、俺の体は何かに包まれている。
顔に触れると、何かに遮られていた。
目の前にあるのがモニターで、周囲の映像を鮮明に写しだしているのだとすぐに気が付く。
自分の手足を見ると、黒い鎧のようなものに包まれていた。
驚いている俺の目の間には、バラバラになった化け物たちの姿がある。
その姿を見て吐きそうになるが、何かの匂いを嗅がされると落ち着いてきた。
よく見ると、燻るように燃えて急速に灰になってしまう。
残ったのは赤い石ころと、爪のような何か。
それを見ていた俺の後ろでは、驚いた顔をしているクラスメイトが見えていた。
俺を後ろで見ているクラスメイトたちの顔も、後ろ側に仕込まれたカメラで振り向くことなく様子を見ることが出来る。
「凄い。まるで本物だ。そうか――これは夢なんだ」
きっとこれは夢だ。
俺が黒騎士になる夢を見ているに決まっている。
そう思った俺が両手を下ろして、そのまま広げると両脇の何もない場所にドアが出現する。
亜空間コンテナ。
黒騎士が武器などを保管するコンテナで、そこに色んな武器をしまっている。
普段は亜空間に存在しているので、荷物が少なくて済む。
ドアが開き、そこからアームが伸びてくる。
アームの先端には拳銃がそれぞれあって、俺は両手に握る。
亜空間コンテナから伸びたアームは元の場所に戻り、ドアも閉まって消えてしまう。
拳銃はとても大きい。
銃口を窓の外に向けると、バスの中を覗き込んでいた化け物たちに向かって発砲する。
気分はヒーローよりも、映画のアクションスターになって銃を撃っている感じに近い。
弾丸は窓を割って外にいる化け物に命中すると、化け物たちが吹き飛んで後ろに倒れる。
「凄ぇ! 本物じゃないか!」
威力がある拳銃を片手で扱っても、まったく反動がない。
あるにはあるが、思っていたほどでもなかった。
前のドアから外に出ると、青い草が太股当たりまで伸びている。
見れば、化け物たちが俺たちを囲んでいた。
人型もいれば、獣や昆虫のような化け物たちもいる。
人よりも大きな蟷螂のような昆虫を、俺は見たことがない。
「こんなに敵がいるなら、色々と試せるよな!」
せっかくのチャンスだ。
黒騎士のパワードスーツの性能を試したかった。
拳銃で敵を吹き飛ばしていると、化け物の後ろにバスがあるのを見て引き金を引く指が止まる。
「銃だとバスに当たるな。うん、それは駄目だ。黒騎士はダークヒーローだけど、ヒーローだからな」
黒騎士の名前を汚すような行為はしたくなかった。
拳銃を手放すと、地面に落ちる前に亜空間コンテナが拳銃二丁を回収する。
そして俺が右手を伸ばすと、新しい武器を持たせてくる。
刀タイプのブレードだ。
「凄ぇ! 長ぇ!」
武器を構えると、パワードスーツが俺の動きに補正を入れてくる。
パワードスーツを俺が動かすのではなく、パワードスーツが俺を動かすように――持っていた刀を振る。
俺自身は何がどうなっているのか分からないが、目の前にいた巨人の腕を斬り飛ばしていた。
後ろから化け物が棍棒を横にフルスイングしてくると、反応が遅れて当たってしまう。
だが、少し吹き飛んだだけで――まったく痛くない。
尻餅をついた俺が立ち上がる。
「何だろう。凄く気分がいいや!」
先程嗅いだ匂いが、まだ続いている。
気分が高揚していた。
刀を片手に持って走ると、地面を蹴って飛び上がる。
高くジャンプできた俺は、そのままパワードスーツに任せて体を動かした。
周囲の映像が目まぐるしく変わると、いつの間にか地面に着地していた。
刀を振り下ろした形で着地しており、顔を上げると目の前にいた巨人を両断しているではないか。
刃の長さを考えると、どのように両断したのか謎である。
長さが足りない気がするが、きっとそこは科学や魔法などでどうにかしたのだろう。
だってこれは――黒騎士のパワードスーツなのだ。
「本物だ。本物のヒーローの力だ!」
興奮が冷めない。
いつになく良い気分だ。
「俺は強くなったんだぁぁぁ!」
襲いかかってくる化け物たちを次々に斬り伏せながら、俺は高笑いを続けていた。
「俺は――俺がヒーローだぁぁぁ!!」
初めまして。
お久しぶりです。
いつも応援ありがとうございます!
――三嶋与夢です。
新作を書きたいと思い、コツコツと書いていたこの「異世界ヒーロー」を本日より投稿いたします。
区切りの良いところまで投稿しますが、今回は一日三回の更新を考えております。
6時、12時、20時 の、一日三回を今のところ考えています。
これは後で変更するかもしれませんが、一日三回更新はするつもりです。
楽しんでいただけたら幸いです。
それでは、新作の応援もよろしくお願いいたします!