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機械仕掛けの龍は大空を翔る  作者: ニコラシカ
9/15

9機目 第6攻撃隊

「今回の任務は攻撃隊の護衛です」


作戦室に俺たちを集めたアイリス中佐は任務内容の説明を始める。


「現在、リス、ローザ連合軍がクラベルとの国境付近で黒雲と思しき機甲師団と戦闘状態に突入しています」


机に広げられている地図の一角を指しながら中佐は続ける。


「先程、コルンブルーメ本国の司令より第6攻撃隊はこれを撃滅、連合軍を支援せよと出撃要請がありました」


第6攻撃隊、ハンスのいる部隊か……


「我々第88飛行隊は第6攻撃隊の護衛に就き、迎撃機の排除にあたります」


「一応制空権はこっちが握っているらしいんだが……なんせ"奴ら"は神出鬼没なんでな、念のためにだそうだ。正直あいつらに護衛は必要ないと思うがね」


フィーゼラー少佐は面倒そうに息をついている。


「おやおや、それはあんまりな言い方じゃないか」


不意に背後から声が聞こえた。


「遅いぞ、ハンス」


「すまないね、相棒を連れてくるのに手間取ってしまったんだ」


後ろを振り向くと入り口にハンスが立っていた。


「ハンス大佐、エスコートはお任せください」


中佐がそういって敬礼をする。


ん?、今大佐って言わなかったか?


ハンスの肩を見ると佐官用の肩章にピフが2つ……紛れもない大佐の証だ。


『あの人そんなに偉かったんですか?』


思わずアリサに聞いてしまった。


『まあね、大戦の頃からずっと軍にいるしぶっちゃけ同階級の私より立場は上』


そうだったのか、あの人普段は制服着てないし話してる時も気さく過ぎて全然気づかなかったぞ。


『でもそうしたらなんで少佐はハンスさんに対してあんな話し方なんです?』


さっきも遅いぞとか言ってたし。


『あの2人同期みたいなものだから、共に大戦を戦い抜いた戦友ってやつ』


な、なるほど……


「やあ、クリス」


ハンスがこちらに気づく。


「どうも、ハンス大佐」


「はは、そんなに畏まらなくてもいいんだよ。いつも通りに呼んでくれ」


どこか嬉しそうな様子のハンス。


「君と一緒に飛べるのが楽しみでしょうがないんだ。制空権も取っているという話だから気楽に遊覧飛行と行こうじゃないか」


「よろしくお願します、ハンスさん」


「ハンス、お前は対地攻撃の任務があるだろう」


呆れた声の少佐。


「もちろん戦車はきっちり壊すとも」


「間違って味方の戦車を攻撃するなよ」


少佐が冗談交じりに言う。


「そんなことはしないさ。ロマーシカの連中だったら話は別だがね」


ハンスも冗談で返す。


戦友……か、確かにこの2人息が合ってるっていうか互いをよく知ってるって感じだよな。


「さて、おしゃべりはここまでだ。ハンス、俺たちは第6攻撃隊の上空を護衛掩護の形でエスコートする。異論はあるか?」


「いや、異論はないよ。それでお願いする」


それを聞いた中佐が手を叩く。


「さて、それでは作戦開始としましょうか」


俺たちは飛行場へと向かった。




離陸準備を済ませ、順番を待っていると第6攻撃隊の機体が格納庫から出てきた。


逆ガル翼、固定脚の少し古めかしい雰囲気の爆撃機だ。


ただし、機体に爆弾は搭載されておらずかわりと言わんばかりに翼下に馬鹿でかい機関砲が取り付けられている。


『なんです? あれ』


『37㎜機関砲、ハンスが無理言って付けさせたらしいよ』


確かにあれなら戦車も余裕で撃破できそうだが、飛びづらいだろうな。




離陸後、飛行場の周囲を旋回し攻撃隊が離陸するのを待つ。


「こちらハンス、第6攻撃隊は全機離陸完了した。それではエスコートをよろしくお願いするよ」


「了解しました大佐、各機はシュヴァルムを組み護衛掩護の形をとってください」


「「「「「了解」」」」」


88飛行隊は攻撃隊の5000フィートほど上空でシュヴァルムを組む。


「まあ、目的地付近に行くまでは迎撃機も上がってこないだろう。のんびりいこうや」


「かといって警戒をおろそかにしてはダメですよ」


リラックスした様子の少佐を中佐が窘める。


今回は中佐、少佐、ニーナ、俺でシュヴァルムを組んでいる。


「……そういえば先程フィーゼラー少佐はウルフ大佐と親しげに話していましたがお知り合いなんですか?」


ニーナが少佐に問いかける。


「まあな、あいつとは古い付き合いなんだ。空軍学校からのな」


「……そうなんですか」


学校からの仲か、俺とニーナやテオみたいな感じかな。


「あいつは当初は戦闘機隊を志願していたんだがな。どういうわけか爆撃隊に入っちまった」


爆撃機に乗ってる方があいつは生き生きしてるよ。


そういって少佐は笑った。




ーーー数十分後ーーー




リス、クラベル国境まであと数分


「目標地点まであと少しだな。敵さんが上がって来るならそろそろだぜ」


先程までリラックス状態だった少佐の雰囲気が変わる。


「各機、警戒を怠らないように」


中佐が改めて周囲警戒の指示を出す。


「こちらテオ機、12時の方角に敵機と思しき機影を発見しました。おそらく10機ほどはいるかと」


流石テオ、発見が早い。


「了解、流石ね。各機、戦闘態勢を取ってください」


「「「「「了解」」」」」


編隊を崩さないように注意しつつ速度を上げていく。


「こちらテオ機、敵機は桜国のA6戦闘機です。数は12、まっすぐこちらの攻撃隊に向かってきています」


「A6か、だとしたら格闘戦は不利だな。一撃離脱かビーム・ディフェンス・ポジションでいったほうが良さそうだ」


「そうですね、では各機、増漕を投棄、一撃離脱戦法の準備をしてください」


中佐の指示で増漕を切り離し更に速度を上げ降下を始める。


敵機が徐々に見えてくる。


空冷エンジンの標準的な形の戦闘機だ。


「いけ、このまま突っ込め!速度を落とすな!低速で格闘戦をすると食われるぞ!」


少佐の声が響く。


照準を合わせ、引き金を引く……が


「くそっ、回避された」


直前で回避行動をとられ、弾丸は虚空を射抜いた。


「だめだ、半数しか仕留められなかった」


悔しそうに呻く少佐


「半分まで減らせたのならサッチ・ウィーブでいきましょう」


中佐が指示を出し、2機編隊で交差するようにS字旋回を繰り返す。


どちらかが背後をとられてもそれぞれが援護できるようにするためだ。


『クリス、後ろに喰いついた!』


アリサが背後につかれた事を知らせてくれる。


「クリス! 6時方向に敵機! 左にブレイクしなさい!」


「了解!」


中佐の指示に従い左にブレイクする。


その直後、背後の敵機は中佐の攻撃を受け墜落していった。


周囲にもう敵影はない。


他の連中もうまくやったようだ。


「アイリス中佐!敵機が1機突如出現、攻撃隊の方へ向かっていきました!」


まだ残党がいたらしい。


「落ち着きなさいテオ、大丈夫よ」


慌てた様子のテオを落ち着かせる中佐。


「申し訳ありません大佐、1機そちらに行ってしまいました。お手数ですがよろしくお願いします」


「構わないさ、いい準備運動になる」


落ち着いた様子の中佐とハンス。


「本当に大丈夫なんですか?」


「ああ、大丈夫だ。心配なら見に行くか?」


少佐まで余裕な様子だ。


「ええ、ぜひお願いします」


心配なので少佐と様子を見に行く事にした。




俺たちが攻撃隊のいる位置に到着するとありえない光景が目の前に広がっていた。


攻撃隊の一番先頭、オオカミのマークの入った派手な機体に襲い掛かる敵戦闘機。


標的にされた爆撃機はなんと攻撃を回避し、そのまま両翼の機関砲で戦闘機を文字通り木端微塵にしていた。


「な? だから大丈夫って言ったろ?」


少佐は笑っている。


「なんですかあの機動、とても爆撃機のそれとは思えないんですが」


「まあ、それがこいつら第6攻撃隊だからなあ。だから護衛なんかいらねえっていったんだよ」




その後の攻撃隊の活躍ぶりは筆舌に尽くしがたいものだった。


地上に展開していた戦車群は攻撃隊の機関砲によって破壊されていく。


中には弾薬庫に引火したらしく、砲塔が吹っ飛んだ車輌もいた。


攻撃隊は破壊の限りを尽くす。


一通りの攻撃が終わった後にはもうもうと黒煙を噴き上げる戦車の残骸しか残っていなかった。


「さて諸君、今日の任務は終了だ。帰って明日の出撃に備えようじゃないか」


ハンスの号令に呼応し、飛行場へ帰投する攻撃隊。


「私たちも帰りましょうか」


俺たちも中佐に従って飛行場への帰路につく。


今日は色々な意味で衝撃的な1日だった。

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