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機械仕掛けの龍は大空を翔る  作者: ニコラシカ
14/15

14機目 祖国へ

「健康状態に問題はないわ。そろそろ動いても大丈夫でしょう」


ツバキの診察を済ませたリリイはアイリス中佐に告げる。


「ありがとうございます。これでようやく行動が起こせますね」


「はい、一刻も早く向かわなくては」


中佐の言葉に待ちに待ったといわんばかりの様子のツバキ。


「それではララ、"コウノトリ"の準備をしてもらえますか」


「あいよ、すぐに準備する」


ララは中佐の指示を受けて格納庫へと駆けていった。




「それで、誰が本国への道のりについていくんだ?」


フィーゼラー少佐が問いかける。


「そうですね、私が同行しましょう。そのほうが話がスムーズにいくでしょうし」


中佐が真っ先に名乗りを上げた。


「その間、部隊の指揮をお任せしてもよろしいですか?」


申し訳なさそうに中佐が頼み込むと少佐は頭を掻きながらしばらく悩んだのち渋々と承諾した。


「仕方ねえ、少しの間だけなら引き受けてやる」


「ありがとうございます。おじさんになら安心して任せられます」


中佐の顔にぱっと花が咲く。


「おい、おじさんはやめてくれって言っただろ」


おじさんと呼ばれ気恥ずかしそうにうめいている。


「しかし2人きりというのも少々心細いだろう。コウノトリは3人乗りだ、あと1人と護衛に2人つけたほうがいいんじゃねえか?」


ごまかすように咳払いをすると少佐は同行者の追加と護衛を提案した。


「確かに、本国への航路は確保できていますが万が一ということもありますし念のために護衛をつけましょうか」


中佐は提案を受けるとテオの方へ向く。


「ツバキさんの護衛、お願いしてもよろしいですか?」


「えっ、僕がですか? ……はい、かしこまりました。何があろうとも必ず守りきって見せます」


いきなり護衛に任命されたテオは最初は少し慌てていたが意を決したように返事をする。


テオのやつ……なかなか格好いいじゃないか。


「では、護衛にテオ、同行者は私とクリスと、あともう1人はどうしましょうか」


「え? 俺も同行するんですか?」


突然のご指名に俺もテオのように慌ててしまう。


もう留守番する気満々だったんだが……


「貴方は私のウイングメイトですよ。リーダーに付き従うのは当然です」


中佐はいたずらっぽくウインクした。


滅茶苦茶な言い分だが上官の命令には従うしかあるまい。


「了解しました。このクリス、謹んでご同行させていただきます」


わざとらしく畏まった口調で答えると中佐は楽しげに笑った。


「ふふ、よろしい。なんてね」


そんなやり取りをしているとニーナが恐る恐る手を挙げる。


「……あの、アイリス中佐。私も護衛として同行してもいいですか」


「もちろんですよ。それではメンバーはこれで決まりですね」


本国行きのメンバーが決まるとそこに丁度良くララが現れる。


「アイリス、準備できたぞ。早く支度して来てくれ」


「かしこまりました、すぐに向かいます。ではシリル少佐、後はお願いします」


「あいよ、無事に帰って来いよ」


少佐と簡単な挨拶を交わし、俺たちは飛行場へと向かった。




俺と中佐、ツバキは連絡機に、テオとニーナはそれぞれの戦闘機に乗り込み離陸準備を済ませる。


俺が着いた一番後ろの座席には後部に旋回機銃が1丁装備されていた。


7.92mmの機銃がたったの1丁だけとは少しばかり頼りないがないよりはましだろう。


「それでは先に離陸して待機しています」


護衛の2人が先に離陸を始める。


「じゃあ、出発しますよ」


管制塔の信号を確認し離陸を開始する。


俺たちを乗せた連絡機は100mにも満たない距離で離陸を完了した。


「この短距離で離陸できるなんてすごいですね」


ツバキが感嘆の声を上げる。


「どんなところでも離着陸できるので結構重宝するんですよ。ただし、速度が出ませんが」


そう、この飛行機は速度が出ない。


ただ、遅いおかげで逆に狙いが付けづらいらしく、生存性は意外に高いとのことだ。


「私の国にもこのようなものがあれば便利でしょうに」


少し羨ましそうな様子のツバキ。


「そういえばツバキの国、桜国は海洋国家なんだってな。海軍の規模が大きいって聞いたがどのくらいなんだ?」


「以前は相当な規模だったそうです。最盛期には戦艦12隻、空母25隻、巡洋艦40隻、駆逐艦他小型艦艇多数に潜水艦も相当数保有していたと聞きます」


かなりの数だな、潜水艦ばかりのうちの国とはえらい違いだ。


「ですが、先の大戦で艦艇を多数喪失してしまい現在は最盛期の半数も……急ピッチで建造していますが資源の事もあってあまり進んではいないですね」


やはり物資が不足しているのはどこも同じか。


「すまない、暗い話をさせた。今度は桜国の事を教えてくれ、どんな国なのか色々とな」


話題を変える。


気候、文化、歴史の事などツバキは嬉しそうに桜国について話してくれた。




「そろそろ中継地ですね。燃料の補給を兼ねて一休みしましょう」


もうそんな時間か。


『おなかへったー』


休憩できると聞いてアリサが騒ぎ出す。


『はいはい、パンを持ってきてるんでそれでいいですか?』


『パンはいらない、チョコレート持ってきてるんでしょ? そっち頂戴』


寝ている隙にこっそり忍ばせておいたのに本当に目ざとい。


『仕方ないですね、1枚だけですよ。休憩中に食べるんでもう少し待ってくださいね』


早く早くとせかすアリサをなだめる。


ここまでの移動距離はおおよそ全体の3分の1と言ったところか。


この調子なら半日もかからずに着けるだろう。


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