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超克と再会

 果てしなく続く階段を、あたしとシノブは黙々とただひたすら登っていた。こちらとしては、うっかり弱音を漏らしたり口答えしようとしたりすると脱落となりかねないため、極力口を開かないでいた。

 一方のシノブは、とっとと弱音を吐いてしまえとばかりに、ネチネチと嫌味をぶつけてくる。

「まったく…諦めが悪い割には足が進まんな。後を行くこちらの身にもなってもらいたいものだ」

 相手の思惑通りにさせてなるものかと、あたしは無言を貫いた。しかし、疲労がピークに達してきているのも否定できない。このままだと脱落する前に倒れてしまうかもしれない。

 その時、階段が終わった。もう登り切ったのかと思い、この男との苦痛な時間もおしまいだと思ったら安心しかけた。だが、すぐにそうではないことに気づく。そこは、あたしとエクスがこの世界に初めて来た時にたどり着いた場所だった。

「ここ、中間地点だったのね…。まだ先があるのか……」

 ひとり呟いたが、シノブに聞こえていたのか、彼はまた嫌味を言ってきた。

「どうした? 降参なら早い方がいいぞ? 今すぐにでも終わらせることができるのだからな」

「…しないわ。でも、ちょっと休憩していいかしら?」

「ほう? それは…」

「降参じゃない。どんな修行にも休憩は必要だと思ったから。違う?」

 まっすぐシノブの目を見て話すと、彼はわずかにたじろいだ気がした。少し考えた後、口を開いた。

「ふん。よかろう。好きなだけ休めばいい。だがあまり待たせるなよ。こちらにも他に仕事があるのだからな」

 シノブの許可を得て、すぐ側の石に腰かけた。それからこの後の修行のことを考える。ここから更に階段が続く。エクスと一緒だった時には、確か数時間は登っていた気がする。その道のりだけでも辛いのに、シノブの言動にも耐えなければならない。それを考えると、気分がズシリと落ち込んだ。

「お前は、高貴な身分なのか?」

 いきなりシノブが聞いてきた。無視しようとしていたが、その言葉に反応してしまった。

「そ、そんな人間じゃ、ないわよ」

「ならばなおさら気に入らぬ。我々と変わらぬ身分のくせに、世の苦しみ、厳しさをわかっていない。それがこの上なく腹立たしい」

 シノブの一言一言が、あたしの怒りをぐんぐん上昇させていた。苦労を知らない? こっちがどんな人生を送ってきたのか知らないくせに、よくもそんなことが言える。小学校や中学校時代の思い出が鮮明に蘇ってきた。靴を隠されたり、持ち物を壊されたり、悪口が書かれた手紙が机に入っていたり…。あの仕打ちを苦労と呼ばずして何と呼ぶ? もうそんな奴らに屈するのは終わりにすると、誓ったばかりなんだ。こんなところで、負けていられない。

「休憩終わり。行くわよ」

 突然立ち上がり、言い放ったあたしを見てシノブはやや驚いた表情をした。

「俺の言葉が堪えたのか? 逃げるような真似をするとは情けない…」

「逃げる? だとしたらとんだ見当違いね。あたしは今まで一度だって、逃げたことなんてないの。あなたみたいな人に負けるような、心の弱い人間じゃないのよ。お生憎様!」

 そう言って、あたしは階段を再び登り始めた。


 半ばやけくそで、一心不乱に階段を登る。さっきの発言のせいで、失格にならないだろうか。冷静になって考えてみると、そんな不安が押し寄せてくる。でもシノブが何も言ってこない以上、前へと進むしかない。後ろを確認していないが、気配からついてきているのが感じられた。

 不思議なことに集中している時には時間が早く過ぎ去り、疲れもさほど感じられなくなるもので、気づくと頂上にたどり着いていた。エクスとコテツが並んで待っている。あたしの姿を確認すると、エクスは駆け寄って来て身体を支えてくれた。

「大丈夫か? よく頑張ったな。疲れを癒してやるぞ」

「あ、ありがとう…。助かるわ」

 安心すると急に疲れが出てくる。その場にしゃがむと、エクスの治療を受けた。身体の痛みが消えていくのを感じた。

 コテツはゆっくりとあたしたちの元に近づくと、(ねぎら)

いの言葉をかけてきた。

「アスカ様、まずはお疲れ様でございました。念のため伺いますが、修行中に弱音や反抗などはありませんでしたかな?」

 そう聞かれてギクリとしたが、あれはそんなつもりで言ったわけではない。それにここで、はいありましたと答えるのは自らリタイアするようなものだ。

「いえ、なかった…と、思います」

 それでも自信無さげな答えが口から出てしまった。その時、後ろの階段からシノブが顔を出した。

「コテツ様、ただいま戻りました」

「ご苦労様です。シノブ、アスカ様はいかがでしたかな? 合格と認めてよろしいか?」

 もう終わりだと思った。あの男の口からOKが出るとは思えない。今回は力を授かるのは諦めて、別の機会を待とう。そう考えていた。


「そうですな。合格でよろしいでしょう」


 我が耳を疑った。まさかそんな言葉が出るなんて思いもしなかった。ポカンとシノブを見つめていたが、当の本人はコテツを見たままこちらの方を向くことはなかった。

「わかりました。それならば、こたびの修行は合格とさせていただきます。アスカ様、おめでとうございます」

 コテツは満面の笑みで讃えてくれた。合格…。やった。納得できるかどうかは置いといて、これで異世界の力を身につけることができる。それは心の底から嬉しかった。

「こちらこそ、ありがとうございます。嬉しいです」

「私からも御礼申し上げます。しかし、こたびアスカに与えた試練、如何様なお考えの元にあったのでしょうか? 以前私に課されたものは、このような修行ではありませんでしたが?」

 エクスもここで修行したのか。でも内容は違ったということかな。

「そうでしたな。エクス殿には、言わば肉体の修行をしていただいたのです」

「肉体の修行?」

「左様。私がここで人に与える修行は、その方の伸ばすべき長所を見定め、重点的に鍛えるというものなのです。エクス殿は肉体、武力を、アスカ様は心、精神力を鍛えるべきだと存じ、斯様(かよう)な試練を行っていただいたということです」

 伸ばすべき長所、か。確かに魔法が使いたいとは思っていた。それなら肉体よりも精神や心を鍛えるのは理にかなっていると思う。…階段登りでずいぶん体力もついたと思うけど。

「なるほど、理解いたしました」

「それではしばしお待ちくだされ。アスカ様に授けたいものがございますゆえ」

 言い残すとコテツはテラージの方へと戻って行った。残されたあたしたちに、シノブが近づいてきた。合格と言われたものの、この男にはどうにも嫌な印象しか抱けなかった。また何か嫌味を言われるんだろうと思っていた。

「アスカ殿。試練の修了、恐悦至極に存じます」

 シノブは膝を折り、座っているあたしに目線を合わせて(かしこ)まった。言葉遣いも丁寧になっていたので余計驚いた。

「え? ああ、うん。どうもありがとう。…なんだかさっきまでと印象が違うみたいだけど?」

「お許しくだされ。私は仕事柄、ああした態度を取ることしかできませんでした。心の修行を行う者には、私のような人相の者が適任のようですからな」

 シノブは声をあげて笑った。そういうことだったのか。あえて悪役を演じることで、こちらの技量を測っていたと。

「しかし、ちと言い過ぎたやもしれませぬ。なにぶん、女性を担当したことがほとんどなかったゆえに。気にしないでいただけるとありがたいのですが」

「気にするな、ですって? ふざけないでよ。乙女の心を傷つけた罪は重いのよ。どうお詫びしてくれるの!?」

 突然怒り出したあたしに、シノブは少し驚いた様子だったが、さすが修行を積んだ人間なのか、しりもちをついたり後退りしたりということはなかった。一方のエクスは、慌ててあたしをなだめようとしていた。

「お、おいアスカ。落ち着け。シノブ殿は…」

 しかし、あたしは激昂などしていなかった。ちょっとからかってみようと思っただけなのだ。

「…なんてね。冗談よ。怒ってなんかないわ。そりゃ修行中はイラッとしてたけど、あなたの本心がわかれば全然平気よ。付き合ってくれてありがとね」

 シノブもエクスも、目を丸くしてきょとんとしていたのが面白かった。シノブは表情を緩めると、一礼をしてどこか別の場所へと向かって行った。

「ふぅ、あたしも言い過ぎたかしらね?」

「いや、どうだかな…。そなたも私のような堅物かと思ったが、ユーモアも持ち合わせているのだな」

「そうかもね」

 二人だけになったところで、コテツが戻ってきた。

「お待たせいたしました。アスカ様、こちらを…」

 コテツが手に持っていたのは木の箱だった。長さは十数センチといったところか。細長い長方形をしていた。

 木箱を受け取り、開けてみると中には鳥の羽根が入っていた。否、ただの羽根ではない。付け根の先端に、小さな筆が付いている。和製の羽根ペン、という表現が似合っていた。

「これは?」

「修行の対価です。本日からあなたの物ですよ。大事にお使いください」

 使ってください、と言われても。何をどうする物なのかわからない。ただ文字を書くだけではないはずだ。

「おっと、使い方を教えていませんでしたな。これは失敬。ではまず、利き腕ではない方の腕を出してください」

 言われた通りに、左腕を差し出した。細くて頼りない腕だなと、毎度のこと思うのだが改めてそう思った。

「これはただの筆ではありません。あなたの内なる力を呼び起こすための『鍵』とでも言いましょうか」

「鍵…ですか?」

「はい。どのようにするかと申しますと、あなたの腕に文言を書くのです。文面は何でも構いません。神に力を行使することの許しを乞う、ということを書けばよろしいのです」

 神に許しを乞う、か。簡単に言うけどどんなことを書けばいいだろう。とりあえず、思い浮かんだ呪文っぽい文言を書いてみた。

「書けましたね。ではその文面を読んでください。声に出して」

 よ、読むの? ちょっと照れくさいな。こっちの世界に、中二病なんて言葉はないだろうけど、そんな風に思われないかな。しかしここまで来て、こんなことで止まってられない。あたしは深呼吸すると、自分が書いた文字を読んだ。


「我、力を行使する。(これ)、自らが乗り越えた試練の成果を試さんがため。神よ、許したまえ。力の行使を許したまえ…」


 一瞬、腕が熱くなった。何も起こらないと思ったが、自分の左腕の書いた文字の辺りから、光輝く小さな鳥が現れた。まるで本当に生きているように頭を動かし、今にも羽ばたき飛んでいきそうだ。だが、その前に小鳥は消え去ってしまった。

「おお、素晴らしい。初めてで成功なさるとは」

「せ、成功なんですか。今の…」

 慣れないことをしたせいなのか、急激に疲労が訪れた。しかし、それだけでこんなに疲れるものなのか。息が苦しく、立っているのも辛い。ついさっき、エクスに疲れを取ってもらったばかりなのに。

「ええ成功です。大抵の者は、初めてでは何も出せないのですよ。アスカ様には、素質があるのかもしれませんね」

「私も驚きました。ところでアスカの名前は鳥を意味すると言っていましたが、あの鳥とは何か関係があるのでしょうか?」

 再びあたしの身体を支えながら、エクスが尋ねた。

「その通りでございます。人の名付けられる名前には、様々な想いが宿っているのです。それは人に馴染み、その者を構成する大切な要因になるのです」

 後にウマ兄やヴァルと再会した時に同じ話をするが、実はこれはコテツの受け売りなのだ。でも、それはあたしの心にも響いた。共感できる話だったのだ。

「さて、今夜はもう一休みして、明朝もう一度やってみましょう。失礼ながらエクス殿の治療だけでは十分な休息にはなりません。やはりゆっくりと身体を休めることが大事なのです」


 その日も一晩を過ごし、楽しみに心を高鳴らせながら寝床に就く。明日にはここを出られる。特段、ここでの生活が嫌だったわけではないけど、エクスと色々なところを見て回れるのはやっぱり楽しみだ。もちろんヴァルとウマ兄とも会いたい。ドキドキして眠れるか不安だったが、疲労のせいですぐに夢の世界へと誘われていった―――。


 翌日、早速朝から練習を始める。エクスに助けられつつ、何度も腕に文字を書いては読み、書いては読みを繰り返した。やがて、正午を迎える前には分身の小鳥をある程度自由に操れるようになった。

「やはり素晴らしいですね。短時間でここまで上達するとは。この力、想いを集束することで大きさと強さを高めることもできます。その分、体力も消費するのでおすすめはできませんが」

「そうですね。今はまだ難しそうです…」

 エクスの治療でなんとかなっていたが、これ以上の消耗はキツい。コテツは別の提案をしてきた。

「では違うことに挑戦してみましょう。この力は、分身と視覚や聴覚を共有することもできるのです。分身を大きくするよりは、体力の消費も少ないと思われます」

「わかりました。やってみます…」

 もう一度呼び覚ます分身の小鳥に神経を集中させ、自分が鳥になったようなイメージをした。

 すると、目の前が大空を捉えた。ぐるっと周りを見渡すと、巨大な山々や森が広がっている。下を見ると、昨日まで修行をしていたテラージが見えた。そして、豆粒のようなあたしたちの姿も見えた。

「できました。この周辺の山や森が見えます」

「さすがですな。もう教えずとも、後はご自身で鍛練できるでしょう。よく頑張りましたな」

「やったな、アスカ。私も鼻が高いぞ」

 二人に誉められ、少しいい気になっていたあたしは小鳥を飛ばして景色を楽しんでいた。森の中を飛んでいた時、幾度もくぐってきた空間の裂け目を見つけた。興味引かれて、その中に飛び込んでいった。


 その先には、また森が広がっていたが、修行の世界(ジパグリア)とは違う場所だった。その世界を探索していると、数人の人影を見つけることができた。

 それは、ほとんどが見覚えのある顔だった。一人を相手に対峙している。

『…! ヴァル、ウマ兄!? それにあの女は…あたしのハンカチを盗っていった蝶の…。大変だわ!』

 と、そこで視界が戻った。今見たものが本当なら、こうしてはいられない。

「どうした、アスカ?」

「エクス、大変なの。ヴァルとウマ兄…あたしの兄貴が別の世界にいたのよ。しかも誰かと戦ってるみたいなの」

 できるだけ冷静に、今しがた見たことを伝える。エクスは、自分の妹が関係していることもあり少し取り乱していた。

「それは本当か!? ならばすぐに向かうべきだな。どのような場所だった?」

「森の中だった。こことは違って、日差しが降り注ぐとっても神秘的な…」

「それは森林の世界、レストリアでしょう。ここから近いです。大切な方々なのでしょう? 我々には構わずすぐに行きなされ」

 話を聞いていたコテツは教えてくれた。

「そうさせていただきます。ありがとうございました。行こう、アスカ」

「うん。本当にありがとうございました。この力、無駄にはしません」

「はい、ご武運をお祈りしておりますよ」


 コテツと別れ、エクスと森の中へ入る。分身を飛ばしていたため、裂け目の場所はすぐわかった。それをくぐり、森林の世界(レストリア)へとやって来た。

 ヴァルたちがいた場所は、おそらく少し離れたところだった気がする。エクスとその方向へ急いだ。

「急がなきゃ…。ウマ兄が、ヴァルが…」

「アスカ、気持ちはわかるが焦らない方がいい。ここは足場が悪い上に凶暴な野生動物もいるぞ」

「そ、そうなの?」

 とその時、目の前に大きな牙を持った猪に似た生物が見えた。その生物はこちらに気づくと、突進してきた。まさしく猪突猛進、と思ったがそれどころではない。あたしはとっさに左腕に文字を書き、詠唱した。

 たちまち小鳥が飛び出し、生物の頭をつついた。しかし、大したダメージは与えていないようだった。生物は小鳥を振り払うと、またこちらに向かってきた。

「やばっ…」

「任せろ。下がっているんだ…」

 エクスは剣を鞘に納めたまま持ち、生物の頭目掛けて叩きつけた。生物は痛みに苦しみ、どこかへ走り去っていった。

「あ、ありがとう。エクス。自分だけでどうにかなるかと思ったけどまだまだね」

「礼には及ばぬ。だが、コテツ様も言っていたように鍛練を積めば、戦いに使うこともできるだろう。しかしくれぐれも無茶はしないでくれ」

「そうね。無理のないように頑張るわ」

 それからしばらく先を進むと、焼け焦げた木々が見えてきた。倒れた巨木もある。ますますヴァルとウマ兄の無事が心配になってきた。

 そして、その二人が倒れているのを発見した。あたしたちはすぐに駆け寄り、エクスはヴァル、あたしはウマ兄の身体を確かめた。

「ヴァル…最後に会った時からずいぶん歳は重ねているが間違いない。これは私の妹だ。すぐにわかる。それにまだ息がある。お前の兄は大丈夫か?」

「良かった…。こっちも大丈夫よ。気絶してるだけみたい。早く治療しないと…」

 無事が確認できたのは良かったが、早く処置しないといけないのは変わりない。

「だがここで治療するのは少しばかり危険だ。まだ敵が近くにいるかもしれないからな。しかしジパグリアまで戻るのも時間がかかる…」

 どうしたらいいのか。二人で考えていたが、その時近くに空間の裂け目が現れた。いきなり現れる裂け目、と言えば見覚えがある。

「エクス、これって…」

「ああ、虚無の世界(ヤムー)への入り口だ。身を隠すにはうってつけかもな。あまりいい環境とは言えないが、やむを得ない。行こう」

 ヴァルたちを背負って担いで、ヤムーへ向かう準備をした。エクスはウマ兄と、もう一人見知らぬ女を肩に担いでいた。蝶の女とは別の、虎の尻尾を生やした獣混人だった。

「アスカ、この女は知人ではないのか? 近くに倒れていたのだが」

「知らないわ。…でも放っておけないわね。一緒に連れて行きましょうか」

「了解した。では参ろう」

 あたしとエクスは、裂け目をくぐって再びヤムーに向かった。



「…目を覚まさないな」

「大丈夫よ。きっともうすぐ気がつくわ」

「ほう、そう思える自信があるのか?」

「そう信じたいのよ」

 ヤムーの洞窟を見つけ、そこに傷ついた三人を寝かせた。エクスの力で傷を癒したものの、心の中は不安でいっぱいだった。

「しかし、先ほどの慌てよう、そなたはとても兄上思いなのだな」

「そそ、そんなことないわよ。ただヴァルのことだけが気がかりだっただけ…っていうか、ここで言わないでよ…」

「はは、隠さずともよい。私も長く会っていない妹に再会できると思うと、焦りが押さえられなかったからな。兄上は、良い人間なのだろう」

「まさか…あなたに比べたらこの人なんて……」

 その続きは恥ずかしくて声に出せなかった。

 その時、ウマ兄の意識が戻った。この時ばかりは、ウマ兄に感謝した。

「あっ、気がついたわね。ほら、あたしの言った通りでしょエクス?」

「アス…カ? ほ、本物なのか?」

「久しぶりね、ウマ兄」

アスカ編はここで終了となります。次回からは再びリョウマ、ヴァル、ミーアとアスカの旅路にご期待ください、ね。

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