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妹? 18

「お兄様、できましたわ」


 彼女は”パア”と目を輝かせてこちらに目を向ける。なんて純粋な瞳なんだ。別人かな!? 多重人格者が一杯いるなあ!? 


 俺はそう思いながらも純粋な彼女に優しく答える。


「ああ、よくできたな。偉いぞ」


 そう言って大文字の頭を撫でようとして手を止める。いかんいかん、春香の目の前で女の子をナデナデするところだった。そう思い春香を見る。春香は頬っぺたを膨らませてプルプルと震えていた。なんてわかりやすい嫉妬の表し方だ、興奮しちゃうね。

 

 俺がニコニコと笑顔を見返すと、プイッとそっぽを向いてしまう。ここで、俺を殴るなり蹴るなりしてくれたら鈍感系主人公やれるのに春香はそう言うことしてくれないからなぁ。今、大文字の頭を撫でてイチャイチャしてたら多分ストレスため込みそうだし、愛想付かされそうで保身に走っちゃう。ああ、なんかケツ触りたくなってきたな。


「お兄様、その肉塊はなんですか?」


 俺が春香の尻を触ろうと手を伸ばしてると、大文字は変なことを言う。


「へ!? 肉塊!? 春香のお尻はそんな太々しくは……って、なんだハンバーグのタネのことかビックリしたぁ……」


 最初は何のことかわからなかったが、大文字が指さす物に目を向け納得し、安堵する。やっべー、お尻触ろうとしたのバレたかと思った。


「え? なんで私のお尻? あッ……」


 バレたわ。触ろうとした本人に、まあ、ええわ。


 俺が「チッ」と舌打ちすると春香が「コラ! なにさ、その舌打ちは!」と怒った。


「お兄様は何を言っていますの?」


「いや、こっちの話。それより、肉塊……これはハンバーグのタネ。これ焼いたらハンバーグになるんだよ。まだ、お肉残ってるからタネから作っていく?」


 大文字は”は?”みたいな顔をしていたが俺はお前には関係ないと意味を込めてあしらいつつ、話を変えて食いつきそうなお題を提示する。すると大文字は「やりますわ」と簡単に食いつく。ちょっろっ、扱いやすいわコイツ。


「じゃあ、春香に教えてもらって。春香は料理上手いから、お前呑み込み早いし、すぐマスターできるよ」


「ええ!? 私!?」


 俺が面倒くさいので春香に擦り付けようとすると彼女は遺憾の意を表に出す。


「いいじゃん別に、どうせ作るの春香なんだから教えながらでもいいだろ? 俺、料理してる女の子を後ろから眺めるのが好きだから手伝いたくないし」


「手伝いたくないって言っちゃうし……」


 春香は手をついて溜息を漏らす。止めろよ、俺が変なこと言ったみたいじゃん。


 その様子を見ていた大文字が春香ににじり寄る。


「お願いしますわ、春香さん! 私、お兄様に料理姿を見せつけ……、いえ、お料理をもっと勉強したいですわ」


 言っちゃてるー、魂胆が全部見えてるー。俺が”裸で出歩く子が好きだ”って言ったらやりそうな勢い。


 春香は大文字の押しに負けて料理教室を始めてくれる。大文字は「ありがとうございます、春香お姉さま~」と甘えた声で春香の胸に顔を埋める。えッ! 何それズルい。春香は「あはは……」と複雑な表情をしている。


「じゃ、じゃあ、ハンバーグのタネから作っていきましょうか」


 春香はそう言うと、俺が先ほどにぎにぎしていた肉だねの入ったポールを手に取るとそこから手に収まるぐらいを取り、形を整える。大文字はそれに倣う様にポールから肉だねを取り出す。


「で、これを両手の手のひらでキャッチボールします」


 春香は自分で言った通りに”パンッパンッ”と音を立てて肉だねをキャッチボールする。


「先生、質問いいですか?」


 大文字が挙手をする。


「はい、どうしました大文字さん?」


「どうして肉だねを両手で交互に打ち付けるのでしょうか?」


 それっぽく返事をした春香に対して大文字は、”どうして肉だねをキャッチボールするのか”を質問する。それに対して春香は分かりやすく説明する。


「これは、肉だねの中にある空気を抜くためにしています。肉だねの中に空気があると、焼いているときに形が崩れて中の肉汁が出てしまいます。肉汁が出てしまったハンバーグは、中まで火が通りづらくなるので焼き上がる頃には、お肉がパサパサになって味が落ちてしまうのです。なので、この作業はハンバーグを作る上で大事な作業です」


 春香は「さあ、大文字さん。私に続いてこう……パンッ、パンッと……」と言って大文字に見せるように肉だねを弄ぶ。


「なるほど……では、できるだけ強くやった方がいい訳ですね」


「え?」


 大文字はそう言うと肉だねを勢いよく、逆側の手に打ち込む。


「グシャッ」


 その音とともに、手のひらに着弾した肉だねは、その勢いを失わず四散する。


「ちょっと、大文字さん!?」


 春香が声を上げると大文字は「あはは、失敗しちゃいましたね。でも大丈夫です。次は失敗しません」と、ポールから肉だねを取り出す。


「ああ、待って大文字さん! そんな(さっき)よりも大きく振りかざしたら、同じッ、わあ弾けた! キャッチするどころか、そのまま壁に打ち付けちゃってるよ!?」


 「キャー!キャー!」と奇声が上がり、台所は、肉塊が飛び散り悲惨な状態になっていく。どこぞの統合失調主人公ならSAN値を回復するのだろうが、俺は至って正常の人間なのでその状況に目も当てられなくなる。


 この場から逃げ出したくなった俺は、事態を収拾するために秋穂を探すことにした。


 俺は、台所で「なんか楽しくなってきました。取りあえずもう一度……」とまたポールに手を伸ばす大文字を制止させ、「ダメ! いったん片付け! 掃除してから!!」といきり立つ春香を尻目にリビングを後にした。

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