妹? 14
「嘘つきにはお仕置きだべ~」
そう言って俺は大文字の背後に立つと彼女の脇を忙しなく弄った。
「へ? は!? ふぉあッきゃきゃッハハハ!!??」
その間黙って様子を見ていた大文字は、突然というには余りにも猶予があったセクハラに驚きの声を上げる、と同時に面白い笑い声をあげる。ああ、イイ。この、まるで初めて脇を擽られたかのような新鮮な反応。俺は、擽る手をより一層激しく突き動かす。
「ああ、ちょっ……お兄さ、ひゃんっ!?」
彼女は余りの刺激に縛られた体をクネクネと悶えるように動かく。この卑猥な状況に思わず俺は鼻に詰まったティッシュを吹き飛ばす。
「ポンッ」
その音と同時に閉ざされた鼻孔が大きく動く。スウゥゥゥ! 俺の嗅覚に刺激が走る。なんだこのエロい匂いは!? 香水ような匂いではなく、月一で発症する臭いでもない。多分これは大文字 四季の体臭なのだろう。俺は腰まで伸びている大文字の黒い髪をふぁさりと揺らす。そうするとこのエロい匂いを、より濃く感じることができた。
やはりこいつの匂いだがしかし、どうして皆、この匂いを何とも思わないのか? もしかして皆、鼻くそ詰まってる?
「はあはあ……終わりましたの?」
俺が匂いに悶々(もんもん)としていると大文字がそう声を出した。そう言えば俺、こいつに刑を処していたところだった。
「おい、お前。皆がどういうつもりで、ああ言ったか分かってるよな?」
俺は子供を叱るようにそう言った。まあ、子供を叱るには、少しあやふやな言い方ではあるけどね。
「サア、ナンノコトヤラ?」
片言で俺の問いに答えた彼女に俺は、「ほう?」と言って脇に手を添える。すると彼女は「させませんわお兄様」と言って俺の手ごと脇を閉めて押しつぶす。
「小癪! ならばっ」
手を拘束された俺だが、そんなものお構いなしに挟まれて手を出し入れする。俺は手に加わる心地よい負荷に笑みをこぼす。(ぐへへ、女の子の脇気持ちいいンゴ)
「ああ、お兄様の手が出たり入ったり……すごい……!」
彼女は俺の手の圧迫感に堪らず声が漏れる。そうだろそうだろ、すごいだろ。数々の犬や猫を虜にした”ゴッドハンドマジック生田”の異名は、伊達ではない。
俺は今度こそといった様子で「ごめんなさいは?」と聞くと大文字は「はい、ごめんなさいぃぃ」と言ってぐったりとしてテーブルに突っ伏す。どうやら脇が弱いようだ。
俺は昔から春香の脇を必要に攻めていたが、最近では『え、何? そんなんじゃ全然、感じないんだけど?』とでも言いたげな顔でこちらを見返すとそのままされるがまま何の反応も示さなくなった。昔は、もっと「あはは、なっちゃんそれダメー!」とか「もう、クスぐったいよ」とか可愛らしい反応をしてくれていたのに、今では倦怠期を迎えたカップルのような有り様だ。その点こいつは、バカみたいに良い反応をしてくれるため思わず熱が入ってしまった訳である。本当だよ?
そんな昔の思い出などを思い出していると自分の口元が大きく吊り上がっているのが分かった。昔は楽しかったなぁと、老害めいたことを思いながらふと視線を台所に向けると包丁を握ったまま静止している春香と目が合った。口元が小刻みにブツブツという感じに動いているが俺には何を言っているか全くわからない。ええ、なんだって? 聞こえないよぉ!?
俺はそんな春香に仏のような顔をニマリと見せつけると、春香は顔の形だけで分かるように”チッ”と舌打ちを打った。ええ!? 春香さん! あなた、そんな子だったけ!?
俺と春香がプロサッカー選手並みのアイコンタクトを行っていると冬樹が声を発する。
「あれ、こちょこちょしてたの? 僕もやっていい?」
冬樹はぐったりとする大文字と俺を見てキラキラと目を輝かせながら言う。(お前、縛られた女を擽ることを、そんな無垢な顔でやりたがるなんて、俺は将来心配だぜ。)
「ダメですよ。冬樹君はもう少し大人になってからがいいですよ。これは子供には刺激が強すぎます」
俺の心配を他所に大文字が口を挟む。いや、そんなに刺激があったわけないよね? ちょっといやらしい感じに言って家の冬樹をからかわないでくれます?
「ええ、そんな~」
そう言われた冬樹が可愛らしく拗ねる。それもそうだ、この年の子供はバカだからしょうもないことでもやりたがるし、不貞腐れもする。今ここでお前が犠牲になり、冬樹に弄ばれれば冬樹も飽きてこのことに対して言及しなくなるだろう。
俺の思った通り、納得の言っていない様子の冬樹がムーとむくれていると、大文字が更に冬樹に何かを吹き込む。
「仕方ないですねぇ、それじゃあ秋穂ちゃんに……(ゴニョゴニョ)」
そう言って大文字は冬樹の耳元で俺に聞こえないように耳打ちする。テーブル越しに耳打ちししようとするため、必然的に彼女はテーブルに体を打ち付けてた体制になる。パンツは見えてないよ。
「え……股……さする? ……割れ目に……指?」
冬樹は大文字に言われたことを復唱するように呟く。言葉の一つ一つで意味を理解した俺は、大文字の頭を叩き、冬樹から引きはがす。
「冬樹、こいつの言ったことは全部忘れろ、絶対にするんじゃねえぞ!」
俺がそう言うと冬樹は「わかったよ、夏樹お兄ちゃん」と素直に返事を返してくれた。冬樹は本当に素直で良い子だ。




