学校行くお
「ほら行くよ、夏樹!」
そう言って玄関の扉を開けながら俺の手を引っ張る彼女の名前は、山形 春香。俺の幼馴染だ。
文武両道、容姿端麗、昔から何をやらしてもそつなくこなし、容姿に至っては、すれ違った男全員が振り返るだろう。人付き合いは良好で目立ったトラブルは特になく、彼女の容姿で気後れする人もいるが人当たりの良い彼女はその緊張を解きほぐしてくれる。
彼女は世話好きで、よく家で家事を手伝てくれるが彼女の作るハンバーグは最高にうまい。きっと将来いいお嫁さんになるだろう。もちろん俺の嫁だ。俺は子供のころから、ああ俺はこの子と結婚するんだなと思った。毎日パンツを洗わしている俺がそう思ったんだから間違いない。今もこうして俺の手を握りながら「夏樹はほんと、昔っから時間ギリギリにならないと動こうとしないんだから」と呟きながら通学路を進む。
「いいじゃねえか別に、学校は逃げたりしねえんだから」
100パーセント俺が悪い上に彼女に迷惑をかけていることを棚に上げて俺は気だるげに答えた。きっとこれは、思春期の子供に起こる反抗期と変わらないだろう。
「もう、夏樹はまたそんなこと言って。いい? 時間にゆとりを持つってことは自己管理としてとても大切なことなの。時間の感覚がずれて有効活用できなくなったらせっかくの人生がもったいないでしょう。それにあなたが社会に出たときに・・・」
ブツブツブツブツと春香が俺のために説教を唱え始めた。彼女が説教を言い始めるとこちらが何を言おうと聞く耳を持ってくれない。何かしらで彼女の口を塞げば説教はやめるだろうが俺はそうしない。俺は彼女がこうして喋っているだけでとても愛おしいと感じるからだ。きっと俺は前世に彼女を失った悲しみを今でも覚えているのだろう(中二病and妄想)。
そんな感じで彼女は俺に説教しつつ俺は妄想に耽りながら学校を目指した。傍から見たらバカップルが手をつないでイチャイチャしながら登校しているように見えただろう。