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銀色の髪の精霊騎士

みなさんお久しぶりです、こんにちは。そしてこんばんは。

作者の代弁者の紫乃宮綺羅々でぇ~す! 元気にしてた?


第二話が完成したのでアップしまっすよ!


それと、ここはまえがきなので本編を読みたい人は

どんどんと下までスクロールさせてねっ!


さて、間宮冬弥さくしゃが最近元気がありません。

まぁ、それは今に限ったことじゃばいけどね!

それに……今回のこれは個人的で故人を思っての事だし……


しんみりしちゃうんでさっさと本編に行きますね!


では、第二話をお楽しみください。それではっ!

「なんだ……力が……湧いてくる?」

 剣を握った瞬間……光が収束し、俺の中を無遠慮にかき回す溢れでる、わからない力……


「これなら……あの大鎌女に……勝てる!」

 剣を強く握り、俺は大鎌の子を見据える!



「勇者を継承される前に……黒き刃で切り刻んでくれる!」

 空間に躍り出る、無数の黒い光の剣。


「一時継承完了。状態変化及び身体異常なし。記憶、能力制限設定完了。これより限定勇者での行動を許可。勇者行使時間。残り三十分」


「言ってる事がわかんないけど……一撃で終わる!」

 頭の中に次々に浮かんでは消えていく様々な攻撃方法。


「切り刻まれて! 消えろ!」

 俺は剣に光を篭め……ゆっくりと天へと掲げ


「これで、終わり!」

 一気に光を纏った剣を……振りおろした!



「な、なんだと! きゃああああ〜〜〜!!」

 剣から放たれた光の奔流は大鎌の子を仰々しく光輝きながら巻き込み、空中にあった黒い光の剣も消し去った。


 部屋全体が光で満たされる。光の中の闇。そんな言葉が頭の中でよぎるほどの光の強さ。


 そして、収束されていく光。収束された光は消えて……


「終わった……?」

 部屋を光で満たした、まばゆい光……が収まる。


 そして、残ったのは部屋を覆うほどの風で舞い上がった煙と埃。そして、崩れさった壁。


「ハァハァ……お、おのれ……」

「!!」


 コスプレ鎌女の声が……ダメだったのか?


「父上から頂いた闇の衣が……くそ、忘れぬぞ、きさまの顔……必ず……殺してやる……」

 晴れた煙から姿を見せたのは額から血を流し、鎌がポッキリと折れ、さらに鎧が破壊されて、その下の服も半壊していた……髪の長い女の子。その顔は、視線は俺を捉え怒りとも憎しみともとれる形相だった。


「必ず……殺す……私がお前を殺す」

 理解できない言葉を吐き捨て、鎌の女は闇の霧に包まれ、そのまま姿を消した。


「た、助かったのか……」

 俺は、地面に腰を落とし、座り込んだ。


「アドニスさま!」

 座り込んだのと同時に、持っていた剣は、元の手のひらサイズの女の子に戻り、羽を羽ばたかせ飛び去った。


 俺も追いかけるように、立ち上がり、鎖に繋がれている男の元へと駆け寄った。


「大丈……夫……」

 俺は問いかけは無駄だった。そんな訳ない。大丈夫な訳ない。もうたぶんこの人は……長くない。この状態と……血の量を見れれば……イヤでもわかってしまう。


「わりぃな。急だけど『勇者』なってくれや」

「えっ……」

 言葉が……わかる……?


「あ、あの……俺の言葉わかります?」

「ああ、わかるよ。この言葉でひとと話すのは久しぶりだ……」

「あ、えっと……」

 聞きたいことは山ほどある。山ほどあるだけど……


「すまんな、時間がないんだ。あとはリムルから聞いてくれ。リムルはじめて」


「はい」


 小さい空飛ぶ女の子が目を閉じ、片腕を大きく払う。


 それを合図にしたように俺の足下に光る魔法陣が形成されていった。


「ちょっ!」

「お前に選択肢はない。勇者にならなければ……あの鎌の女に殺されるだけだ」

「えっ……」


 殺される? もしかして、あの去り際に怖い顔で言ったことは俺を殺すという宣言……?



「古き勇者。新たな勇者に勇気、知恵、力を授けん」

「待って!」

 俺の制止を聞かず淡々と進む。


「儀式を止めるな。あきらめろ……おまえは『この世界を変える』ために勇者にならなければならない」

「だけど……」

「今死にたくなければ……受け入れろ!」

「そんな……」


 俺は……どうすればいいんだ……





 ◆




「……」

 黙る少年。


「戸惑っているな……いいか。おまえは『生きている』忘れるな」

「生きている……」

 勇者と呼ばれた男は少年が黙ったことを確認すると静かに声をこぼした。

「古き勇者よ、彼の者を新たな勇者として認めるますか?」

「ああ、もちろん認めるよ……なぁリムルそのままで聞いてくれないか」

 そして紡ぐ言葉を勇者継承の儀を行っている精霊に向けた。


「彼の者を勇者と認め、新たなる勇者に新たなる時の刻みを」


「あいつに……新しい勇者に『こっちの言葉を理解させて』やってくれ」

「そして新たなる勇者に祝福と加護を……」


「それと……みんなとの旅……楽しかったよ」

「光り……輝く……ううっ、アドニスさまぁ……イヤです! いきなりそんな事言わないでください! それじゃあまるで……!」

 小さい瞳から涙を落とす空と飛ぶ小さな女の子。


「リムル……ダメだよ。続けて」

「ううっ……光輝くリンゴを今ここへ!」

「今言わないとな……リムル。いままでありがとう……俺を支えてくれて。願わくば、いつまでも変わらぬ『その姿』でいて……」

「ア、アドニスさまぁ……」

 小さな精霊リムルは泣きながら顔をアドニスに向けた。



 ◆



「うわっ!」

 俺の床に展開されている魔法陣がいっそう輝き、そして光が収束して……


「……リ、リンゴ……?」

 俺の目の前に突然現れたのは、宙に浮いた光輝く黄金のリンゴだった。


「そ、れを……ひと口食べれば……勇者継承は完了だ……」

「た……食べる……」

 この金色のリンゴを……食べる……?


「ああ、そうすれば俺……歴代の勇者たちの『力、記憶』がすべてがおまえのモノになる」

「これを……食べるのか」

 リンゴを食べるだけで……勇者に……


「安心しろ。毒なんて……盛っちゃいない。ただ……最初は頭の中が混乱するだろうけど、すぐに慣れる」


「頭が混乱……?」

「俺の意志を継いで……勇者になってくれ……」

「俺が……勇者に……」

 RPGゲームでよく聞く勇者に……俺が……現実に……?


 俺の前に浮かぶ光輝く黄金のリンゴ……



「早く……リン……ぶっ!」

「だ、大丈夫!?」

 口から血が……


「び、病院に!」

「この状態で? 無駄だよ……俺は確実に死ぬ」

「……! そ、それでも!」

「頼む……勇者に……この世界を変えてくれ……」

「お、俺が……」

「おまえしかいない……早く……世界が俺とおまえを『認識』する前に……リンゴをかじれ」

「な、なんで俺が……」

「お前は勇者に最適だ。死にゆく男の生涯で最後の頼みだ……おまえなら聞いてくれるだろう?……」

「……」


 俺は……目の前に浮かぶ輝く黄金のリンゴを手に取る


「そうだ……後はそのリンゴを一口かじれば……勇者の意志を使命……を理解できる……」


 そして……俺は光のリンゴを口に近づけ……歯を立てて……ひとくち……かじった。


「……ああ、最後にもうひとつ……俺の仲間を……生きていたら助けてやってくれ……」

「ア、アドニスさま!」

「リムル……あいつが目を覚ますまで……頼んだよ……」

 そして、目の前の……勇者と呼ばれていた……男は静かに目を閉じた。


「アドニスさまぁ……! ううっ……」


「うっ……!」

 俺の頭が……


「なんだ……」

 頭の中が……かき回されて……映像が入り込んでくる……


「知らない……何なんだこの記憶は……」

 俺の知らない記憶……知らない記憶が俺の脳を、かき乱して浸食していく……!


「うっ……うげっ〜〜」

 突然の吐き気。耐えきれなくなりその場で嘔吐し、床にまき散らす。


 誰かも知らない記憶が俺を包む気持ち悪い感覚。


「ハァハァ……何だ……誰だ……知らない……気持ち悪い……誰なんだ……何なんだ」


 知らない人物、知らない場所、知らない街。知らない言葉。知らない出会い。知らない武器。知らない魔法。知らない技術。知らない戦術。知らない道。知らない山。知らない乗り物……知らない空……


 知らない人殺し……?


 知らない記憶から……怒りが、喜びが……悲しみが入り込んで感情がおかしくなっていく



 知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。




 俺の知らない……何も知らない世界……




「うう……うわああああああああぁああぁあああっっぁあああぁあがあがああがっががあがああがああがあ〜〜〜〜〜〜〜!」


 頭を抱え、口から自然と叫び声がこぼれる。


 叫ばないと保てない。いや……叫ばないと、もっと狂ってしまう……! もっと悪化する! 俺が俺でなくなる!



 ◆



「うっ……うがあががああがががががあああああがががががががあががあああががあああ〜〜〜〜」


 もう何分叫んだだろう……三十分? 一時間……? わからない。何も、何も……俺には何もわからない……



「ううっ……」

 そして、俺の脳は処理できない情報量を放棄して……意識と眼はゆっくりと閉じていった……




 ◆



「アドニスさま……安らかな眠りを」

 残された精霊・リムルは光になって消えていった元・勇者のアドニスを看取った。


「ぐぉおおぉぉぉぉおおぉおぉお!」

 遠くから聞こえる魔物の叫び。先の光の爆発で魔物たちがこちらにむかってくるのであろう。



「必ず……このひとは守って見せます」

 精霊リムルは意識を失って倒れている新たな勇者を横目で見た。そして何かをつぶやくと同時に新たなる勇者の周りに淡い光がドーム状に展開する。


「よしこれでしばらくは」

 一息つくと精霊リムルは目を瞑った。


「人化は魔力をだいぶ使うけど……この際は仕方がない!」


 そう宣言し、リムルの身体が光に包まれる。光は身体に纏われ変化が現れる。身体が大きくなり背が伸びていく。そして腕が、足が、銀色の髪が、身体が急激に成長して変化していく。


「この姿は……飛べないからイヤなんだけどね……」

 リムルは銀色の甲冑をその身に纏い、ひとの姿をとっていた。その姿は凛々しい騎士そのものだった。


「エレメンタルフォース『風』にて戦闘モード発動。視覚と聴覚以外のすべての感覚をカット。身体能力及び戦闘能力の強化へと変換」


 一瞬、リムルの身体が光輝き、すぐさま光は消えた。


「レプリカント構成開始。『精霊神剣アレフガルド』レプリカ生成」


 リムルの左手に先の少年が手に取った剣『精霊神剣アレフガルド』が現れる。


「ぶぉぉぉおぉぉぉぉぉおおおぉぉん!」


 ドアを蹴り破り、十数体の、ガイコツや悪魔といった魔物が拷問部屋へと踏み込んでくる。



「生成完了……よぉし! かかってこい、斬り伏せてやる!」


「ぐぉおおん!」

「遅い! 遅い!」

 イノシシの魔物が振り下ろす槍をリムルは華麗にかわし、その流れの中で横薙の剣を繰り出す。


「ぶきぃいいぃいい……」

 剣で斬られたイノシシの魔物は黒い砂となり崩れ落ちる。


「ぶしゃああああ〜〜!」

「ぐきぎぎぎ!」

「いいよ、まとめてもっとこい!」

 ガイコツのボロボロの剣をいなし、サイドから攻撃してきた動く鎧の剣をかわし、その後ろにいた羽の生えた悪魔の魔物を斬り裂く。


 そして、振り向きざまに動く鎧へ袈裟斬りの一撃。


 斬られた悪魔と鎧は黒い砂になり崩れ落ちる。


「ぐっ、はぁ!」

 後ろから、左右からの攻撃を食らいながらも、血を流しながらも精霊リムルは勢いを落とすことなく応戦。これはひとえに視覚と聴覚以外の感覚を遮断しているからだろう。その遮断した感覚の中には『痛覚』も含まれているのだから。



 ◆



 精霊リムルが人化してから三十分。留まることのない魔物の進行は続いていて、その猛攻にリムルの身体に変化が現れていた。


「痛くない痛くないけど……これは少し……数か多いかなぁ」

 崩れた壁から途切れることなく魔物が押し寄せる。


 感覚を遮断しているからとえ体力は無限とはない。リムルは疲労から徐々に動きが鈍くなっていた。そして、身体も傷だらけ。傷口から血が止まることなく流れている。


「これだけ魔物が押し寄せるなんて……なんかおかしい……そうかどこかにあるな召還陣が……」

 これだけ途切れることなく魔物が押し寄せてくることに疑問を感じたリムルは『召還陣がある』とそう結論づけた。


 召還陣。それは魔物を送り続けるだけの転送魔法が施された魔法陣。


 その召還陣を破壊しない限り、永遠と魔物がこの部屋に押し寄せる事になる。


「壊しに行きたいけど……新しい勇者さまをここに残していく訳にはいきませんよね? アドニスさま」


 前勇者に問うがもちろん答えなんて返ってくるはずがない。


「さっさと起きてくださいよ……」

 懇願、または悲痛にも似た言葉を、新たな勇者にかけるリムルだった。



 ◆



「うっ痛っ……」

 記憶が……まだ、混濁している……


 顔を上げ、目の前をみる。目の前には光が射している……


「光……の壁? 防御障壁か?」

 光の壁を触る。俺はこれを『知っている』この光の壁を。魔力で作り出した魔法障壁を。

 そして、その光の壁の先では、銀色の鎧を纏った女の子が剣を薙いで、戦っている。


「魔物……」

 女の子が戦っている動物の形をした異形の生物。それを俺は『知っている』


「あ、起きましたね」

「ごめんね……『リムル』」

 俺はその女の子を『精霊リムルを知っている』目の前の騎士の格好をした女の子はああ見えても勇者だけが持つことができる『精霊神剣アレフガルド』に宿る剣の精霊。精霊神剣アレフガルドそのものだ。


「では、私の役目はここまでです。この不毛な消耗戦をさっさと終わらせましょう」

 リムルは瞬時に『精霊神剣アレフガルド』へと姿を変えた。


「ごめんね。まだ言葉は理解できないけど……状況は理解できる」

 目の前には魔物と『剣』これは『この剣で魔物を蹴散らせ』といっているんだろう。この精霊(けん)は。


 左手を伸ばす。指先が光の壁に触れる。


「ありがとう。もういいよ」

 その言葉に光の壁はきらめきながら一瞬で砕け、輝きながら粉々になった。俺は『知っている』この魔法障壁の解除方法を。


 解除したまま左手をさらに伸ばし、一歩前へと歩む。


「行くよ。リムル」

「はい。新たな勇者さま」


 二回目の精霊神剣を強くさらに強く握る。


「ふぅ……」

 深呼吸。こみ上げてくる勇者の力を制御するために、まずは息を吐いては吸っての動作で心体を落ち着かせる。


「ぐぎゃあああごおおおぉおぉぉぉぉ〜〜ん!」

 大きな一つ目の人型魔物……たぶん『リトルサイクス』が棍棒を振りかざして襲いかかってくる。


「ぐがあああ……」

 ひと薙。一度の横薙の一閃で一つ目の魔物は黒い砂となり消える。


「ぐうぎゃああぁおおぁん!」

「ぶしゃぁあああああ!」

 さらに襲いかかってくる魔物のむれ。


 それを、俺は剣で左右上下、斜め、跳躍しての連続の攻撃。むしろ猛攻。斬り裂かれた魔物は黒い砂となり、砂が床に大量に積もる。


 どんどん押し寄せへ次々と襲いかかってくる魔物を、俺は縦横無尽に駆け抜け次々と斬り伏せる。


「……召還陣」

 一向にとまらない魔物の進撃に疑問を感じて、つぶやく


「どこだ?」

 戦いながら召還陣の魔力を探る。そしてふと思った。


 俺にこんな余裕と芸当があるのか? と。……でも、どうやら『勇者』はそれができるらしい。知っていて、まったく覚えのない知らない記憶がそう言っている。


「部屋の外……」

 徐々に魔法陣の魔力の方角が分かってくる。


「出て左……か」

 襲い来る魔物を一太刀で斬り、さらに深く魔力を探る。


「見つけた!」

 召還陣の魔力を探り当て、場所を特定する。


「はぁ!」

 剣を天をへと薙ぎ、地を這う魔力の塊で魔物を一掃する。


 開かれた一筋の道筋を駆け部屋から出て、一目散に『召還陣』へと駆ける。


「邪魔!」

 召還陣が近づくにつれどんどんと魔物の猛攻が激しくなる。だけど……こんなのは苦戦のうちには入らないんだよ!


 押し寄せる魔物の壁。その壁を切り裂き、その先にある『召還陣』へとまっすぐに疾走。俺の後ろには黒い砂の道筋が出来ている。砂が積み重ねられていく。


「ぐっ!」

 魔物の攻撃をかわし、駆ける。剣を振ってては時間がかかる。その間に魔物はどんどんと召還転送されて続ける。なら魔物の攻撃をかわし、駆け抜けた方が早い!


「あれか!」

 魔物の攻撃を全力でかわし、全力で駆け抜け、駆け抜けた先に見えたのは、大きな空中に浮かび空間に描かれている淡く、禍々しい黒い光を放つ真っ黒の召還魔法陣。


「はぁぁぁぁぁああ〜〜!」

 ジャンプし、精霊神剣で上から下へと綴る太刀筋で召還陣を斬り裂く。


「どうだ!?」

 切り裂いた召還陣は、精霊神剣で光の太刀筋から一気に弾け、粉々に砕けた。


「よし! ……あとは」

 残されたこの魔物を倒せば、とりあえずは……


「いくぞ!」

 剣をしっかりと構え、召還された魔物の群へと走り出す!


「うおおおおおおおおっ〜〜!」

「ぶしゃあああ〜〜〜」

 果物のような魔物の拳をかわし、斬る。


「ぶしゅううぅう〜〜」

 果物の魔物は黒い砂となり消える。


「次!」

 どろどろに溶けたような物体から放たれる液体をジャンプでかわし、剣で斬る。


「はぁ!」

 イノシシの化物の槍を受け流し、横一閃で剣を薙ぐ!


「……魔力が……詠唱!?」

 どこからか魔力が膨れ上がるのを感じ、そして魔法を使うための言葉がどこからか発声されている。


「後ろ!?」

 振り向くと同時に魔力でできた炎が魔物を巻き添えにして向かってきている!


「仲間もろとも!」

 仲間であるはずの魔物を焼き尽くしながら迫る炎!


「斬り裂く!」

 剣を腰の後ろで水平に構える。


「四獣・朱雀の太刀!」

 居合い斬りように腰から一気に剣を横へ薙ぐ。


「はぁ!」

 斬られた炎は火の粉を残し、跡形もなく消え去る。


 そして、そのままダッシュし、炎が放たれた方角へとダッシュする!


「あいつか!」

 そこにいたのは実体のない黒いフードだけが空に浮かび、すっぽりと歩覆う顔のない部分からはふたつの光が目のように配置されている。さらに杖がその周囲にぷよぷよと浮かんでいる。それは見るからに魔法を使いますよと言った。風貌の魔物だった。


「……また魔法か!」

 黒いフードは俺には辛うじて聞こえる声で何かの魔法詠唱をつぶやいている。


「させない!」

 さらにスピードを上げ黒フードに迫る! 魔法を発動させる前に潰す!


「静かにし……ヤバッ!」


 黒フードの杖の先端の水晶が光る!


「くっ!」

 直前で緊急停止して、飛び上がり空へと回避!


「………………」

 黒フードから耳障りな声が鳴り、その直後、床から魔力で生成した土が盛り上がる。

 盛り上がった土は槍のように尖り、次々と周りの魔物を串刺しにしている。


「土の魔法!」

 見ただけで俺はそう判断した。これも……勇者の記憶ってやつか!


「なら!」

 俺は腰の後ろまで剣を引く。


「四獣・玄武の太刀ィ!」

 着地地点で発声した無数の土の槍を玄武の太刀の一振りですべて斬り裂く! 土の槍は粉々に砕かれ、消滅し、着地。


「もう終わりか? 黒フード」

 膝をあげ、黒フードを見据える。


「…………」

 黒フード周りから無数の炎の玉が生成されていく。


「いいよ、撃ってこいよ。斬り裂いてやるから」


 その俺の言葉をきっかけにしたのか、黒フードは杖を振り下ろした。


 そして無数の炎の玉が三百六十度、全方位に放たれる。


 落ち着いている。俺はこんなピンチな状況でも、息を整え迫り来る炎の玉を見据える。


 猛スピードで駆けてくる炎と対照的に俺はゆっくりと剣を正眼へと構える。眼球は左右、上下へと縦横無尽に動き回り、炎の位置情報と予測軌道線を脳へと送る。


「直撃する炎だけ……」


 ぽつりと呟く。炎が俺の腕をかすめている。方向違いに放たれている炎は逃げまどう魔物を容赦なく焼き尽くす。


「草壁大和、押して参る!」

 剣を腰の後ろに引き、駆ける!


 眼前の炎を『朱雀の太刀』で斬り裂く。さらに押し迫るみっつの炎を朱雀の太刀で一度に斬り裂く。

 駆けることをとめずに炎を斬り裂く。片っ端から朱雀の太刀で斬り裂く。


「……!」

 黒フードはさらに炎を増やては放つ。詠唱なしの即時発動魔法なんてのは威力がたかが知れる。

 即時発動した炎を、即時朱雀の太刀で斬り裂き黒フードとの間合いを詰める。詰める!


「……!」

「これで終わりだよ」

 黒フードの眼前。黒フードに宿るふたつの光が驚いているのか大きくなる。


「無駄だよ」

 悪あがきで放たれた大きな炎を水平斬りで薙払い消滅させた。


「……!」

 空を漂い逃げ出そうとした黒フードへと飛び上がりし、そして剣を振り下ろす。


「……、……」

 一刀両断された黒フードは黒い砂となり床へと落ちた。


「よし……これで終わりか」

 床に着地し、周りを見渡す。魔物はすでにいない。黒フードの巻き添えと逃げだした魔物によって今ここにいるのは俺ひとりだ。


「ふぅ……」

 剣を袈裟に振り、こびりついていた黒い砂を振り落とす。


「終わりましたね」

 頭に直接響く声。


「えっと……リムルだよね?」

 精霊神剣アレフガルドは光、形が変化し、縮み、そして小さな羽の生えた人型の精霊へと姿を変えた。


「まずは、勇者継承、おめでとうございます」

「えっと……相変わらず言葉がわからないんだけど……」

「えっ? ああ、そうでした。そうでしたね」

「えっと……」

「では、前勇者アドニスさまの言葉に則り、あなたに『言葉』を理解させます……うん、数秒くらいは大丈夫だね」

「はい?」

 リムルは何かをつぶやき。そして身体全体が光り出す。


 そして、リムルは俺が目覚めたときの姿、銀色の甲冑を身に纏った女性騎士の姿になっていた。


「失礼します」

「へっ?」

 突然、俺の頬に手を当てぐいっと引き寄せた。


「……ん、はぅ……」

「んんん〜〜〜〜! んんんん〜〜〜!」

 えっ! ちょっ、えっ!? なにが起こってるの? 目の前に……えっ

? リムルの顔が……唇に暖かい温もりが!? あ、や、柔らかい……


「ちょっとぉ〜〜〜〜〜〜〜な、なにしてるのぉ!」

 俺は、リムルを腕で押しのけ、重ね合う唇を離した。


「なにを驚いているんですか? これが一番早く『言葉を伝えられる』手段なんですよ? 小さいままじゃ無理じゃないですか?」

 キ、キス? 俺今、キ、キスされたのぉ? 今のはキスだよね? せ、接吻だよねぇ?


「だけどさ、と、突然っていうのはどうなの? お、俺の心の準備ってのがさぁ!」

 は、初めてのキスが……精霊っていうのも……


「うん、そのぶんだと大丈夫ですね。言葉伝わってますね」

「えっ?」

「私の言葉。わかりますよね?」

「あっ……」

 ホントだ。リムルの言葉がわかる……


「じゃあ、この姿は魔力的にもキツイんで、戻りますね」

「おっ、おお、いいよぉ」

 まだ、動揺しているし……胸の鼓動が止まらないし……ドキドキしっぱなしだ……


 そして、リムルの身体が再び光り出し、さっきの小さな空を駆ける精霊に戻っていった。


「では、これからどうしますか? 城塞都市に戻ります?」

「いや、その前に……あのひとの仲間を助けに行くよ。生きれいればだけど……」

 俺は前勇者のあのひとの最期の言葉を思い出していた。


『俺の仲間を……生きていたら助けてやってくれ』


 俺はあのひとの最期の言葉を守らないといけない。勇者になったのだから。


「……勇者さま、お言葉ですが……」

 リムルは言いにくそうに顔を背け、言葉を続ける。


「アドニスさまのお仲間は……すでに亡くなってます」

「えっ……マジで……」

 衝撃の告白と言葉。俺は頭の中はその言葉で真っ白になる。


「はい……あのアドニスさまがいた部屋で惨殺……虐殺されています……ですから」

「そんな……じゃあ……」

 なんで、『助けてやってくれって……』言ったんだ? どうして? 片目だけど見えていたはず? それとも知らなかった?


「あっ……そうだ」

 リムルは何かを思い出したかのように床一点を見つめ口を開く。


「マリアさんが連れて行かれたのを見ました……もしかしたらマリアさんは……まだ」

「……その、マリアってひとを助けに行こう! 生命反応の位置はわかる!?」

「待ってください。今、探ります」

「ごめん。なるべく急いで……」

 リムルは瞳を閉じる。


「リムル……」

「すいません。少し静かにしてください」

 俺は押し黙り、リムルを見守る。


「見つけた!」

「場所は!?」

「地下にある部屋です」

「行くぞ!」

「はい!」

 俺は床に手のひらをあて、略式詠唱にはいる。


「我が命に従い、爆ぜろ!」

 詠唱を限りなく最小まで略した爆発の魔法で床に円形の穴をあけ、ショートカットを図る。


「地下まで近道だ!」


 開けた穴から俺は下の階へと飛び降りた。


 続く。


 第二話『銀色の髪の精霊騎士』・完

こんばんは、間宮冬弥です。

まずは、小説を最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


プロットもあまり作成せず、書きたい事を書いている小説ですが、

読んで頂いていると信じて言わせてください。本当にありがとうございます。


これからもこのスタンスは変わらないと思いますが、読んで頂けるととても嬉しいのでよろしくお願いします。


第三話ですが、現在執筆中となります。完成までしばらくお待ちください。


では、これで失礼します。

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