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ジヲマの箒
「クロアァ。」
アランの雄叫びが一つ、甲高く響いた。
ジヲマはすでに予期していた。
足元のシュシュを一度撫でた。限りのない優しさが込められていた。
空の中で低い唸り声のような音がした。
「ブルルルッ。」
そして静けさが続いた。
これは予兆。この後、雷が落ちてくるのだろう。
その前にジヲマは立った。
ヨジマの遺した大きな本に左手を突っ込み(文字通り、手を本に突っ込んだ)、中から箒を取り出した。竹箒の形をしてはいたが、真鍮でできていると思われ、柄の部分には宝石をはめ込むために縁どられた穴が開いていた。




