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温室の主
朝食を終えたロロは、いつものように家の裏の温室へと向かった。
温室と言ってもこじんまりとしたものでありながら、ハーブが豊富に育てられていた。セージ、レモングラス、ラベンダー、コリアンダー、アロエ、タイム、チコリ、マジョラムなどなど、愛が込められて瑞々しく育っている緑たちがそこにいた。
その間を、30センチほどの細く美しい、翠の輝きを放つ黒い身体の蛇が現れた。しゃなりしゃなりという言葉がこれ以上に似合う動作は他にないだろう。
「ごきげんよう、リリス。」
「ごきげんよう、ロロ。」
ハーブの世話よりもむしろ、こうしてリリスに挨拶をするのがロロの重要な日課となっていた。
リリスの声は高く美しく、若い娘を想像させた。
ロロは知っていた、この主を決して怒らせてはいけないことを。シュシュは入り口近くで健気に大人しく、置物のようになってロロの作業を見守っていた。




