ローゼ・A・ブラック
「今日から、このクラスに編入されることになった櫻君だ。皆、仲良くするように。」
クラスの担任は、そう軽く言って俺に自己紹介をさせると、一番奥の席を指さしそこに座るよう俺に促した。
俺が席まで歩き出すと、横を通る女子女子がヒソヒソと話している声が聞こえた。
「ヤバイヤバイ、めっちゃイケメンじゃん!」
「ね!ね!ちょーヤバイッ!!」
「背も高ぁーい!あーん抱かれたいぃっ!!」
ほめられて悪い気はしないが、なんともまあ頭の悪そうな会話だ。名門校とはいうものの、やはりここも、親のコネで通っている者ばかりなのだろう。
俺は一抹の失望を抱きつつ、指定された席に着くと、隣でにっこりと笑う不気味な男と目が合った。
「はじめまして、櫻君。僕はローゼ・アンダーソン・ブラック。ローゼで良いよ。これからご近所づきあいよろしく。」
ご近所づきあいというイカしたジョークをあえてスルーし、おれは軽く会釈をして済ませた。俺はもともと話すことは得意ではない。というよりも、話すことがないと言った方が正しいかもしれない。他人に興味が湧かないのだ。
そんな俺の考えを察してか察さずなのか、この男はただニコニコと俺の顔を見つめるだけで何も話しかけてはこなかった。
話しかけてくれば対応もできるが、この状況はどうすればいいのか分からない。気持ちが悪いぜ非常に。
俺には負けるが、きれいな顔立ちの男だ。どこか色気があるというか、妖しい雰囲気があり、笑顔は気品であふれている。前髪を9:1ぐらいの割合で分けていて、右の目は9の割合の髪の毛に覆われ隠れている。
「何か用か。」
俺はローゼのほうを見ずに問うた。
するとローゼは、先ほどまでニィっと吊り上げていた口で答える。
「いいや、何もないけど・・・君の顔がとても綺麗でね、ついつい見惚れていただけだよ。」
よくもまあ男にそんなことを言えたものだ。俺は老若男女構わずかなりモテる、自分で言うがモテる。だがここまで心に響いたアプローチは初めてだ。というのも、こいつの声や言葉、表情が、嫌に自分の中の何かに突き刺さり響くのだ。これは一種の恐怖だ、俺は目の前の得体の知れないこの男に、恐怖を抱いているのだ。
「・・・・・。」
俺は特に返事をせずに、だんまりをきめた。食えない野郎だ。関わり合いたくねぇ。




