革命の序章
少年は、すっかり考え込んでいた。少年というか、児童というべきか。
ともあれ、あどけない老け顔に生えかけの無精髭。しかし細身で、運動は不得手なのが外見にも見て取れた。
「みんな、書けましたか!?」と声を挙げるのは担任の教師だ。
ありとあらゆる思い出が頭を巡った。小学生は小学生なりに、色々考えるものだ。
もしかしたら、大人以上に。
教室の窓から見える景色ももうすぐお別れなのだ。校庭のブランコが、アスレチックが別れを惜しんでいる。
黒板には白いチョークで卒業文集と書かれていた。作文というには短いかも知れないが、そこに思いを詰めるのだ。
それでも小学生には難しい作業なのか、6時限目をもってしても終わらない生徒は居るらしい。鉛筆をくるくると回しながら、両隣の席に目をやりながら考え続ける。
――中学校では勉強がんばります。
――たーくんといった遠足がたのしかったです。
同級生達が多様な思いを文章に連ねて行く中で、彼は頭を抱える。
周りの生徒は書き終えるなり雑談を始める。
「思い出とかを踏まえた事が書けると良いですね」
担任の言葉を信じて彼は書いた。
それは全く澱みない本心で、彼の優しさと思いやり溢れる一文だった。
『中学校では、みんなに死ねって言われない様に頑張ります』
そして、最後に名前を添えるのだ。
木村 琢磨
彼は後々、いかなる偉業を成し遂げたのか。