92話目
『アイツ、武谷っていうのか? まあ、ソイツが味方だとかそんなの知らねえけど、勝手に他人の家族について話すか? それが普通なのか? とにかく、プライバシーってもんがあるだろ。勝手に知って勝手に話してんじゃねえよ。あと、食事についてはしっかり摂ってる。原因があるとしたらお前だろ。それから、あと、で日記切るのやめろよ』
「……ごめぇん……」
何度目か分からないが、日記に向かってうなだれる。ほんと、ごめんよ……。
武谷はあの日以来来ていないらしい。それは、ついさっき部屋を訪ねてきた母親にも確認をとった。……やっぱり、引いちゃったんだろうか。あんな重い話をされて。……そうだよな、普通。あんな話をされたら、今まで通りの友達だって、できなくなるかもしれない。
……それは、嫌だな。
まだ、数えるほどしか会ってないし、話して無いけど。いい奴だってことは、分かっている。そんな奴と、友達じゃなくなってしまうとか、そういうのはなんか……かなしい。
ちょっとだけ俯いて、それからがばっと顔をあげた。凹んでる場合じゃない。もっと、なにか役に立つことを、考えないと。まっさきに脳裏をかすめたのがあの約束で、どこまでも心が痛くなった。
「……どんだけ自分のことしか考えてねえんだよ、俺……」
まったく、嫌になる。最近約束のことしか考えていない気がする。
「俺、別にロリコンじゃねえんだけどな……」
約束を交わした相手――幼い少女の顔を思い出しながら、俺は呟いた。




