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90話目

伏線回

 久々に自分のことについてなんて考えたせいか、人恋しくなってしまう。俺の家族、元気にしてるかなあ。全然、ここから遠いから、行けないんだけど。

 そこでふと、気付く。

 ……あれ、今って……いつ、なんだろう。

 いや、月は分かる。7月だ。7月、13日だ。色々あって、あっという間に過ぎてしまった。それはいい、それは、いいんだけど……。

 俺が死んでから、もう……4か月に、なるのか。

 意図的に考えないようにしていた。自分のことについては。それを振り払うかのように、若杉由布のことに集中していた。

 でも……。

 生前、俺は約束をしていた。とある、一つの約束を。

 もうすぐ……その日が、来ようとしていた。


「だからといっても、な」


 俺はごろんと寝返りを打った。


「行ける訳、ねえよなあ……というか、そこまで行きたい訳でも、ないし」


 第一、行ったところでどうなるというんだろう。俺、本当に生前若杉由布と会ってないから、誰? という反応をされるに、違いない。


「……行けない、よな」


 確認をするようにもう一度繰り返す。それは、事実確認というよりは―――自分を説得しているようにも思えて、顔を顰める。別に、ほんとに行きたい訳じゃないんだ。そこまで子どもじゃないし、若杉由布の人生なんだから、俺なんかのために時間を割いてほしくない、というか……いや、居候してるだけでけっこう迷惑かけてると思うし……第一、遠いし……行けないよな……。

 行きたいのかな、と少し考える。自分の感情に、ちょっと改まって向き直る。

 ……行きたく、ないな。

 勇気が出ないとか、そういうのも、あるけど。でも、それ以上に。

 会いたくなかった。会ってしまったら、自分の情けない姿を見せてしまうことになるから。

 それに、あの場所に行く、ということは――――


 唇を噛み締める。やっぱり、行きたくない。きっと、相手も約束を忘れてしまっているだろう。約束をしてから、一年が経っている。だから、どうせ。

 積み重なっていく、行けない理由とは裏腹に、俺の心はずしんずしんと重くなっていった。

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