89話目
ごろりとベッドに寝転がる。誰も来ない。昨日の喧噪が嘘のように、平和だった。
……なにも、やることがない。久々に退屈というものを思い出した。今まで、ずっと忙しかったから。考えることが、いろいろありすぎて。
今こんなにも心が余裕に満ちているのは、きっと昨日大きな荷物を下ろしたからなんだろう。
……武谷、元気かな。
あんな話を聞かされて、内心引いてたりしなかっただろうか。いや、そうじゃなくて。若杉由布は、ちゃんと事情を理解できただろうか。今までの話の流れ、ちゃんと理解できたかな。おかしな行動、してないかな……。きっと、自分の体質のことを話しては……ないよな、きっと。若杉由布が素直に話すところなんて、全然想像できないし。
ぐるぐると頭の中を疑問だけが回る。はやく若杉に説明してもらいと思って、とりあえず昨日話しちゃったよー、ってことの謝罪と武谷がどうなったのかを尋ねる文章を日記に書いた。だから、さっさと寝ればなんとかなるのかもしれないけど、こんな時に限ってまったく眠気はやってこない。困ったものだ。
仕方がないから、何度も寝返りをうって考え事をする。主に、今までのことだ。若杉由布に会って(?)から、波乱万丈な生活が続いている。父親からの暴力、兄妹間の恋愛……。家族のことが、ほとんどの問題なのだけど。若杉由布も、気にしてないふりして自殺未遂とかやっちゃってるし、どうなのかなあ。ぼんやえりと思考を巡らせた。
……俺はなぜ、若杉由布と二重人格なんてことになったんだろう。
考えたが、答えは出なかった。神様の悪戯、という他ないだろう。俺の人生……既に終わってしまったものでは、若杉由布なんて人物と、会ったことなんて絶対にない。なのに、なぜ。
なぜ、俺だったんだろう。




