83話目
え、と俺は呟く。なぜだかわからないけど、俺は酷く動揺した。きっと、今まで落ち着いて話せていたのは、顔を見ていないからというのもあったのだろう。とんだコミュ症だ。
でもこいつは、味方だ。なら招き入れても……そこまで考えてから、俺は武谷を部屋に招き入れて、顔を見せて話せるのか、と考える。……かなり、きつい気がする。でも、だけれども。
こいつは味方で、若杉由布の友達なんだ。
大丈夫、大丈夫だと俺は何度も深呼吸する。それから、ようやく返事をした。
「……いい、よ」
「おう」
少し緊張したような声で、返事が返ってくる。
俺は覚悟を決めて、ゆっくりと……ドアを、開けた。
久々の武谷の顔が、そこにはあった。
「……よう」
「おう」
「じゃ、あの……どうぞ」
やけに緊張して、なにを話せばいいのか分からないまま、俺は武谷を部屋に招き入れた。
心臓がばくばくと波打っている。ああ、部屋を片づけておけばよかった。ごちゃごちゃとしていて、埃っぽい。……ほんと、掃除しとけばよかったよ。改めて思う。若杉由布、ちゃんとしてくれよと心の中で八つ当たりをした。
武谷はちょっと迷ったようになってから、地面に座り込んだ。俺は椅子に座ろうかと思ったけど、自分だけ座るのはどうかと思って、前に正座した。すると、武谷も慌てて正座する。向き合ったまま、固まった。……しばらく無言が続いてから、武谷が突然呟く。
「えーと……ご趣味は」
「見合いじゃねえよ!」
「だって!」
どうすりゃいいかわかんないもん! と泣き出しそうな雰囲気で、武谷が喚く。俺だってそうだよ!
ちょっと大きな声を出したら、なんだか大分雰囲気も解れたようだった。
「えーと……じゃあ、若杉の家族に、ついて……聞いても、いいかな」
「う、ん」
俺は息を吸う。それから、武谷に向き直った。
「じゃあまず、俺の、姉と兄の話を……」
こんこん、とドアが鳴った。俺はびくっと身を震わせて、向き直る。武谷もびっくりしたみたいだった。
「由布、いるー?」
「あっ……う、ん」
母さんの声だった。




