7話目
やっと主人公たちの名前が出せました。
目が、覚めた。
漸くこの状況に慣れてきた。見慣れない部屋……というか、大分見慣れてきた部屋だ。
そして俺は気付いた。服が、変わっている。昨日までのジャージと、少しデザインが違う。誰かの着替えさせられたのか、それとも。
「“俺”が、やったのか……だよ、な」
昨日の記憶がよみがえってきた。いや、昨日という保証はないが。
もし俺のたてた仮説が正しかったら、どうなるのだろう。どう生活すればいいのだろう。
ぶるりと身を震わせた。他人として生きていくなんて、そんなの、絶対嫌だぞ。
そのためにも。
確認、しなければならない。
ごくりと唾を飲み込んだ。
おそるおそる立ち上がり、箪笥に近づく。果たして、日記帳は確かにそこにあった。
手を、伸ばす。カツン、と固めの拍子に手が当たった。それを手に取り、ページを捲る。
指が震えて、なかなかページが捲れない。ちょっとずつ、捲って言ってやっと、自分の書いたページを見つけた。
ごくん、と唾を飲み込んだ。
次ページで、分かる。筈、だ。
『……なんだよ、お前。何者だよ。
分かんねえよ、突然自分が二重人格だなんて言われて。
ハァ? おまえ、誰だよ。なんで俺の日記にこんな悪戯するんだよ。
わかんねえ、訳分かんねえよ。なあ。
でも、状況とあってるのは、認める。
この仮説、認めたくはないけど。一応考えておく。
取りあえず、次ページに返事書け。意識の共有がされないんじゃ、分かりにくくてしょうがねえ。
ちゃんと俺のフリするんだぞ。……ああでも、お前俺のことなんも分かってないんだっけ。
いいか、俺は若杉由布。高校二年。
今、春休みの最中だ。
で、あれは母さん。それから父さんと、兄が、ひとり。家族構成はこんだけ。
家は適当に探検でもしてくれればいい……と思ったが、やっぱ却下。部屋から出るな。怪しまれたら困るのは俺なんだ。
ま、出来るだけさっさと出てってくれ。俺は俺なんだからな』
適当に書いたのか、字は結構乱れていた。
……なんだか、思っていたのと随分違う人物だ。結構雑で、そして自分主義。なんだか苛められそうにない人物だし、寧ろ苛めてそうな人物だ。
取敢えず日記に対して返事を書くことにする。
『確認が取れて、よかったです。
俺は、田代晃っていう名前でした。
気付くと、ここに居て。そしてこういう状況になっていたわけです。
ご迷惑をおかけします。すみません。
生活を共にさせてもらえると助かります。どうか、よろしくお願いします』
こんな所か。
俺はあたりを見渡す。外に出るなって言われたけど……。
十分に睡眠したせいか、眠気はない。だから、入れ替わろうとも思えない。
よし、と俺は決意する。
外に出て、探検してみよう。止められたけど。