68話目
目が、覚めた。
そのままの勢いで、ガっと壁を殴ってしまいそうなのを必死にこらえる。そして、息と共に台詞を吐きだす。
「クソ親父……」
図らずとも若杉由布の台詞っぽくなってしまったが、もちろん俺の台詞である。なんだよ、あの親。母親だって……あんな風に言わなくても、いいだろ。
裕美と恵登は大丈夫だったのだろうか。というか、出て行ったんだよな。なら、なんで今恵登は家にいるんだろう。ますます、謎が深まる。
とにかく、裕美も恵登も可哀そうだ。別に、ただ人を好きになっただけじゃないか。
確かに最初は俺だって戸惑ったけど。それでも、そんな頭ごなしに否定しなくたって、いいじゃないか……。
ましてや……家族、なのに。
裕美と恵登の気持ちを考えると、ぎゅっと胸が痛くなった。
そして、今まで疑ってたこととかも全て含めて、謝りたいと。そう思った。
「……」
次、会えるのはいつだろうか。隣の部屋に、恵登はいるだろうか。学校に行ったら、また裕美に会えるだろうか。もし、会えたら……謝ろう、そう決めた。酷い態度をとってしまったのかも、しれない。
「……よし」
ぱん、と頬を叩く。気分が重くなってしまっていた。さっさと気持ちを切り替えようと、立ち上がる。窓の外は明るい。どうやら昼間らしかった。
箪笥から日記を取り出して、なにか書かれていないか見る。書かれたことを見て、目を見開いた。
「なんだよ、これ……」
『あのふたりのことには、触れるな。アレは無視しろ』
ぎり、と歯を食いしばった。そして、手を握りしめる。
なんだよ若杉由布。お前、いい奴かなって思い始めてたのに。
なんで、そんなこと言うんだよ。
日記を乱暴に床にたたきつける。そのまま部屋を出る。向かう先は、ひとつだ。
出来るだけ大きな音を立てて、扉を開けた。狙い通り、彼はそこにいた。どうやらパソコン中だったらしく、驚いたようにこちらを見ている。ずんずんと進んで、思いっきり……頭を下げた。
「今まで、ごめん」
彼、が……恵登が固まったのが、わかった。




