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64話目

 ぐうう……腹が鳴る。ベッドの中だというのにその音は情けなく響いて、俺は蹲った。


「……おなかすいた……」


 そりゃ、そうだろう。俺はしばらく何も食べていない。それでも大丈夫だったのは、きっと若杉由布が食事をしていたからだ。でも、今日に限ってはものすごく腹が減った。うん、ほんとに。さっきからお腹がきゅるきゅると物悲しい音をたて続けているのだ。


「腹減りすぎて気持ち悪くなって来た……」


 うっぷ、と口を押える。眠気も一切湧かない。どうしよう。このままじゃ飢え死にする気がする。眠れない。それは久々のことだった。どうしたんだろう、若杉由布がぐっすり睡眠をとったりでもしたのか?

 ともかく、このままじゃだめだ。腹を押さえて起き上がる。

 食事だ。食べ物が必要だ。

 ……あまり気は進まないが、緊急事態だ。仕方ないだろう。

 部屋のドアを開け、耳を澄ます。……よし、下から大きな音は聞こえない。人は多分いない……だろう、うん。いや、居たら困る。いないでくれ。

 願いながら、足音を立てないように階段を下りていく。うう、何が悲しくて(一応)自分の家でこんなこそこそしなくちゃいけないんだ。

 ドアに耳を当てる。音……正直よくわからん。聞こえない、ってことにしとく。……よし、行くぞ。バッ、といきおいよくドアを開けて……心臓が止まるかと思った。


「あら由布」


 ……優しそうなお母さんが、そこに居た。

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