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63話目

 ……さて。

 何を書けばいいのか、全く分らない。日記の前で、頭をひねった。

 おまえのにーちゃんとねーちゃん、つきあってたんだなー……って? 性格わっる。

 それに、若杉由布はなにを書いてたんだろう。日記をこの前書き忘れたから、怒られるのが怖くてまだ見れていない。

 小さく息を吐いて、それからようやく日記を開く。


「……あれ?」


 前の、日記から。何も書かれていない。


「書き忘れた、のか……?」


 俺もよくやるし、人のことはいえない。でも、俺も若杉由布も忘れるなんて、なんかちょっと不思議だ。シンクロするのか、こういうのって。

 ……まぁ、いい。

 となると問題は、なにをかくか、である。

 俺が兄と姉が付き合ってる事を知った、というのを書くべきなのか? いやそもそも、本当に付き合ってるん……だよな。アレ、もしかして兄弟同士でキスするのって普通なのか!? 俺兄妹いないからワカンナイ。兄妹でキスをするのは普通なのかもしれない。兄弟愛兄弟愛。……いや、流石にそれはおかしいだろう……と、意味のない問答を繰り返す。

 考え込んだ末、俺は一つの結論に辿り着く。

 ……やっぱり、書くべき、だよな。

 俺個人の考えだけど、やっぱり若杉由布にあんまり隠し事をしたくない。体を共有しているんだから、余計なわだかまりは消しておきたいのだ。あとになってばれたら、信用問題にも関わってくるだろうし。

 打算的な考えも混ぜながら、ペンを手に取る。そうと決まれば問題はない。さっさと日記を書こうじゃないか。


『日記、書き忘れてゴメン。また、夢を見ました。

 ……えーっと、その、恵登と裕美がキスをしているところを、その、夢で見ました。あの、なんか小さい頃です。俺は、そんな偏見ないけど、ちょっとびっくりしました。

 二人は、付き合ってたんです?』


「なんっ、だこれ……」


 自分の文才のなさに愕然とする。日記の中ではそんな思ったことを書かなくてもいいだろう、用件さえ伝わりゃ……まあ、要件は伝わってるんだけどさ……。


「いいかな、これで……」


 そういえば、俺が若杉由布の体に入ってから一人言が増えた気がする。そんな現実逃避をしながら、遠い目をした。

 大丈夫だろうか、こんな内容で。こんなストレートに聞いてしまってもいいものだろうか。……悩んだが、これ以外の書き方を俺は知らない。

 仕方なしに、これで完了することにする。ああ、頭を使ったからお腹が空いた。

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