55話目
ああ、そうだ。日記を書かなければ。ぼんやりとそう思い、日記を手に取る。さて、何を書いたものか。若杉由布からの日記が目に入った。
『はあ? お前も見てんのかよ謝って損した。別に面白いもんでもないだろ、見んなよ』
「そうは言われても、なあ……」
見ないですむものなら、俺だって見たくはない。けれど、見えてしまうんだから。仕方がないじゃないか。そんな言い訳を考えつつ、ペンを手に取った。
『ほんとに、ごめんな。俺だって見たくて見てるわけじゃないんだけど……。申し訳なく思うよ。
そして、やっぱり謝らなくちゃいけないんだけど。また、夢を見たよ。お前の過去。砂場で、遊んでた。随分と仲いいんだな。お前の兄と姉。なんか、恋人同士、みたいに見えたよ』
「ばかか、俺は……」
実の兄と姉が恋人同士みたいだと言われて喜ぶやつがどこにいるんだ。ピ、と線を引いて最後の一文を消す。そしてまた、新しく文を追加した。
『俺、兄弟いなかったからうらやましいよ。あと、やっぱり外には出ないのか?』
「よし……これで、いいだろ」
そっと息をつき、ペンを置いた。何もしてないのに、やけに疲れている。睡眠不足とか? いや、十分すぎるほど寝ているから……逆に、寝すぎなのかもしれない。
ぼんやりとベッドに座り込む。今日も、絵を描く気はしない。小説も、更新されていないままだった。俺と似たような気分なのかな。ああ、でも若杉由布に限ってそんなことはなさそうだ。はやく、続きが読みたいな。そんなことを考えて、ベッドに寝そべったところで……。
ドアが、叩かれた。




