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54話目

 そうつぶやいた瞬間、目が覚めた。体は汗びっしょりになっていて、気分が悪い。……どうして、こんなにも悪寒がするのだろう。しばらくぼんやりしたあと、思い出した。そうだ、夢を見たんだ。……あれ、悪夢ではなかったはずなのに。なんでこんなにも、嫌な感じがするのだろう。


「……恋人、どうし……」


 改めて呟いてみる。ばかげた想像のように思えた。だって彼らは……、兄弟なのだ。そんなこと、あり得るはずもない。ああ、なのに、どうしてだろう。そういう形が一番しっくりするのも、また確かだった。本当に、馬鹿な思考だ。

 ベッドから立ち上がり、伸びをする。外からは、雨音が聞こえていた。そういえば、今日はいつなのだろうか。はたと思う。カレンダーを見ると、もう6月になっていた。梅雨に入ったのだろうか。だから、少し蒸し暑いのかもしれない。寝苦しいから、嫌なのだが。

 部屋の空気が悪い気がして、窓を開ける。むっと、生ぬるい空気が部屋に入り込んでくる。雨のにおいがした。

 ……外の空気に触れるのは、随分と久々な気がする。そういえば、しばらく外に出ていない。

 生ぬるい風だったけれど、なんだか少し気分は晴れた。息を吸って、頬を叩いた。大分目は覚めたと思う。

 にしても、こんなに家に引きこもっていたら、体が鈍ってしまうのではないか。いつか、学校にさえ行けなくなりそうだ。大した距離じゃ、なかったけど。学校には、もう行かなくていいのだろうか。だとしたら、あの一回はなんだったんだろう。そして、あの姉は……。

 考え込んでしまうと、気分が落ち込みそうだった。

 俺は割と、あの姉を苦手に思っているらしいと、改めて確認する。いや、子ども時代ならかわいいのだけど。……どうも、初対面が悪すぎる。怖い。


 ああ、そういえば。

 あの姉、なんで学校に来てるのか、若杉由布に聞いてたな。

 よく考えると、おかしな話だ。まず、どうして俺が学校に来ていないことを知っていたのか。それに、どうして若杉由布が学校に来てほしくないというようなことを言ったのか。若杉由布が学校に行くと、なにか不都合なことができる……? そもそも、若杉由布は姉のことをどう思っているんだ?

 ……わからないことが、多すぎる。

 とにかく、この家にはおかしな点が多い。あまり触れない方が、いいかもしれない。

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