52話目
……また、変な夢を見た。
あれは、若杉由布の過去なのだろうか。体を共有しているんだから、そういうものがみれるということも、あるのかもしれない。でも、勝手に見てしまうのはなにか……悪い、気がする。けど、若杉由布になんて伝えればいいんだ? 君の過去を夢で見てます。すみません。って? ……逆に、怒られそうな気がする。まあ、伝えなくてもいいか。これが若杉由布の過去だという確証もない訳だし。
にしても、どうしてあんな家族が今、こんなになってるんだ?
お姉ちゃんは別居、か? やっぱり、あの後家族の間でなにか起きたんだろうか。離婚とか? でも、母親は同じ、だよな? 変わってない。
埒が明かない。日記を開いた。そういや、昨日は若杉由布、日記書いてなかったな。どうやら今日は、ちゃんと書かれているみたいだった。
『……昨日は、日記書くのを忘れてごめん。
多分、お前の過去の、夢を見た。勝手に見てしまって、悪い』
「…………え?」
一瞬、完璧に思考がフリーズする。俺の、過去?
過去?
……俺が馬鹿だった。俺が若杉由布の過去を見ているんだったら、その逆の現象が若杉由布に起きてても、おかしくないのだ。
まあ、俺の過去なんて別に大したものでもないし、いいのだが。
にしても、わざわざ自己申告して、さらに謝ってくれるとは。伝えなくていいとか言ってた自分が酷い奴に思えてきた。ごめん、若杉由布。俺もお前の過去を見てるんだよ。……多分。
仕方がないから、正直に日記に書くことにする。それ以外、思いつかないし。
ペンを手で弄び、考えながら日記を書く。
『ありがとう、素直に言ってくれて。……それと、俺も言わなくちゃいけない。
俺も、多分お前の過去の夢を見てる。お前の姉とか、兄とか、両親とか……出てくる、夢です。ごめんなさい』
散々考えて、それでこんな文章か……。自分の文才のなさに泣きそうになるが、それは放っておく。
にしても、これは一体どうなっているんだろうか。なんでお互いに、お互いの過去の夢を見ているのだろう。
……やっぱり、体を共有しているから? 一つの体に、二人の人物の精神。お互いにお互いの記憶を見せる事で………………?
一瞬、恐ろしい想像が浮かび上がったが、多分それは俺の妄想でしかない。漫画の読みすぎ、と蹴っ飛ばされるような話だ。……なのに、一度考えてしまうとなかなか頭から離れない。なかったことにしろ、と必死で言い聞かせて、またベッドに入る。眠気はなかなかやってこなかった。




