50話目
いくら考えてもさっぱりわからず、そっと目を瞑った。仲のいい夫婦。仲のいい兄弟。それが揃ってて、なんでまたこんな冷え切った関係に……。あのお母さん、この家族の唯一の良心かと思ってたが、怒ってた。そして怒ってた顔は超怖かった。
よし、俺は結論が出たので目を開き、立ち上がった。この家族コワイ。必要以上に関わらないでおこう。
暇だったので、何かないかと机を探る。引出のナイフやカッターは却下。最近は、どうやらあまり切ってないようだった。うむ、いい傾向だ。……痛いのは、勘弁してほしい。若杉由布、自殺志願者……というか自傷行為してたのずっと忘れてたのに。久々に厭な物を見てしまった。こんな、血がこびりついてる刃物、誰も使いたくないだろ……。
全ての引き出しを開けたが、興味のあるものは入っていなかった。はぁ、とため息をつく。ベッドの下のノートも見たが、物語は更新されていなかった。このあとどうなるのか、気になるところなのに。あと、どれだけ待てばいいんだろうな。
鉛筆を取り出そうとして、やめた。絵を描くのは、やめておこう。まだ、風邪、だし。……もしまだ絵を描けなかったら、それは酷く怖い事のように思えるから。
熱は大分下がったのか、苦しくはない。けれど、まだなんとなく体がだるいような気はした。風邪薬が机の上にあったことを思い出して、どうしようか迷う。あの薬、結構苦かった。……少し考えて、一応飲むことにしておく。またあんな苦しい思いをするのは断じてあってはならないことだ。もう自分一人の体ではないのだから……ってこれ、妊婦さんの言うセリフだな。
日記は適当に書いておくことにした。
『熱、大分下がったみたいだな。良かった。
えっと、小説の更新を楽しみにしてます。暇です。あと、自傷行為は最近やめてるみたいで、よかった。あと……その、お大事に? 学校、また行ってみろよな。武谷くんはいい奴だったぞ』
……迷った末に、くそみたいな日記しか書けなかった。
ああもうしらない! とにかく、寝よう。眠気は訪れなかったが、無理矢理寝た。




