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47話目

たまに辛い目なはなしを描きたくなる

『お前、日記ちゃんと書けよ。飛ばすとか、お前らしくないぞ。

 ……あと、お前、なんか大丈夫か?』


 若杉由布に、心配された。……情けない、と思う。寧ろ、俺がちゃんとしないといけないのに。心配されるなんて。

 日記は、飛ばそうと思って飛ばしたわけではなかった。ただ、思いつかなかったのだ。ペンを手にとって、紙に向かい合った瞬間。思考が、停止した。頭が動かなくなった。何を書けばいいのか、分からなくなった。……なにを、伝えればいいのか。

 情けない、と思う。けれど、本当にその通りだった。

 なにかに怯えているのだ、と思う。人生やら、友達やら、家族やら、生きることそのものとか。そんな、あって当たり前のものに。俺は、酷く怯えを抱いている。


「……寝よう」


 できるだけ長く、人生を若杉由布に渡してやりたい、と思った。いや、押し付けたいのかもしれない。とにかくもう、起きていたくなかった。もう二度と、目覚めることがなければいいのに、と。そう願ってしまった。

 なんだか、酷く気分が落ち込んでいる。どうしてだろうか。色々な要因が思いついた。普通の学校生活みたいなものを送って、羨望を。若杉由布の家族に……姉に、出会って、罪悪感を。色々な感情を、若杉由布に対して抱いたからか。それとも、ただの偶然か。よく、分からない。ただ酷く気分が重たくて、しにたいと思った。こんな感じだったかも、俺が死を選んだ時の気分も。

 ……それがどうして、今生きてるんだろうなぁ……。

 気分が落ち込んでいるからだ、俺はそう結論付ける。気分が落ち込んでしまっているから、こんなにも暗い思考ばかりを繰り返してしまうのだ。

 しょうがないことなのだ、その筈なんだ。

 ああ、駄目だこんな思考は。

 俺はペンを手に取って、紙に向かう。絵を描こうとして―――――描けなかった。


「……ッ、あ」


 こんな感覚は、久々だった。

 描きたくない、訳じゃない。描きたい。こんなにも、描きたいのに。

 構図も、デザインも、なにもかも思いつかない。


「……うぇ、」


 吐き気が込み上げてきて、思わず口を押える。ペンが宙に舞った。


「う、あ……え、……」


 ああ、なんでこんな気分にならなくちゃいけないんだろう。朦朧とする頭でそんなことを考えながら、ベッドに倒れこむ。

 ……ああ、また日記書けなかったな。そんなことをぼんやり考えて、俺は意識を手放した。

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