表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/120

46話目

『とりあえずの間は行かなくていい』


 学校へ行かなくてもいいのか、という俺の問に対しても、若杉由布はそっけなかった。一体どうして学校へ行かなければならなかったのか、その説明すらされない。


「ったく、なんなんだよ……」


 俺はため息をついた。秘密主義にも程があるんじゃないだろうか。若杉由布に振り回されてばかりだ。せめて、理由くらい教えてほしい。


「あーあ……」


 学校へ行かないとなると、俺の予定は潰える。つまり、暇だ。ベッドに寝転がって、伸びをする。そのままごろごろと転げまわる。

 若杉由美って、なんなんだよ。家族関係どうなってんだよ。そもそも、俺って元の体に戻れるのか? てか、今この状況って二重人格でいいんだよな。若杉由布はこの状況をどう思ってるんだ? 疑問がぐるぐると頭を回る。それに合わせて俺も回る。


「あー……俺、何してんだろ……」


 本当に、馬鹿みたいだ。何をすればいいのか分からないし、何を考えればいいのかも。頭がごちゃごちゃしていて、まともな思考ができない。あーあ、なんでこんな状況になったんだっけ。そもそもなんで俺はこんな、知らない人間の体に居候しているんだろう。そして、今更人間関係のことで悩んでいるんだろう。


 ――――……そういうのを、終わらせたくて選んだはずなのに。


 意味がないまま、ただただ回った。あー……なにも、やる気がしない。考えるのもめんどくさい。

 頭が痛くなって来た。


「はあ……」


 ぴたり、と動きを止める。そしてようやく身を起こした。


「……描くか」


 頭の中を整理するには、それが一番最適なように思えた。ベッドの下から、ノートを取り出す。ペンを用意し、ノートを開いた。新しいページに、しゃっしゃっと絵を描いていく。頭の中のイメージが、紙の上で再現される。それが、たまらない快感だ。

 ――――安心する。やっぱり俺には、これしかないんだなと思えた。

 もし、絵を描くことができなくなったら、俺は死んでしまうんじゃないだろうか。ありと、あらゆる意味で。

 ぴたり、と鉛筆を止めた。無性に不安に襲われたからだ。

 俺、これからどうなるんだろう。どうすれば、いいんだろう。

 もしかして――――ずっと、このままなのだとしたら。このまま何十年と未来のある体に居候したままなのだとしたら。

 ぞくり、と鳥肌がたつ。それは、なんて呪いなんだろう。

 何十年も居候をしなければならないという恐怖。若杉由布にかける迷惑と、それになりより――――


 あと何十年も、生きなければならないという恐怖。


 ぞくり、と身を震わせた。終わらせたいと思って選んだはずなのに、寧ろ長くなっている。これは、おかしいのではないか。理不尽じゃないか。


「……あー……」


 なんだよそれ。俺、これからどうすればいいっていうんだよ。

 未来ある若者の未来を半分貰って、そんで生きてしまっているのだ。それって、なんて迷惑なんだろうか。

 目を背けていた現実が、一気に目の前に来てしまった気がする。謝らなければ、と思った。若杉由布、に。

 ペンを、手に取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ