33話目
学校にやっと着いた
なかなかに綺麗な学校だ。校舎を見渡しながら、思う。新設校なのか、あまり汚れは見えないし、生徒も品が良さそうな生徒が多い。お坊ちゃま校なのか?
二年A組は、1号館の3階にあった。階段を上がる度、プレッシャーで胃がズキズキと痛んだが、必死で大丈夫と言い聞かせて先へ進む。そして俺は、やっと見えてきたA組の扉を、おずおずと開けた。
……よし、多分誰も気付いてない。この間に、席に座って……と、そこで俺は気付く。俺、自分の席知らないんだった。つまり、誰かに話しかけて知らなければならない。……おい、それって……このクラスの誰かに、話しかけなきゃいけないってこと、か……?
嫌だ、そんなの絶対嫌だ。ひっそり学校へ行ったという事実だけで良かったのに。話しかけるなんて、そんな誰かの印象に残りそうなこと……やりたい訳がない。
でも、話しかけないといけない。じゃないと、席につけない……それは結局、もっと目立つことになってしまうだろう。
覚悟を決めて、俺は近くに居た一人の男子生徒に話しかける。
「ッあ、の……」
「おう、どうした……って、お前誰だ?」
俺は自慢のコミュ症を発揮させながら話す。目をきょろきょろせわしなく動かして、視線を合わせない。言葉はどもる。完璧な不審者である。
「お、れ……わかすぎ、ゆうです」
「わかすぎゆう……って! お前、あの不登校の奴か! 来たんだな!」
不登校という言葉が胸に突き刺さる。にしても、コイツ声でかいな。
でも、まあ。俺を嗤わなかった。コイツが誰だかは知らないが、あんまり悪い奴ではなさそうだ。……少し、無神経すぎる気がするけども。
「せ、きを……」
「せき? ああ、席のことか! あーっとな……おい、若杉由布の席ってどこだっけ?」
「若杉由布? なんでまたそんなの聞いて……って、来てる! おお!」
「わかすぎ……来たの?」
「まじか……!」
ああ、なんだこの状況。あれよあれよろいう間に人物が増えている。コイツの声に惹かれてやってきたのだ。ああ、嫌だ。注目なんて集めたくない。皆が俺を見つめているような気がするんだ。例え自意識過剰でも、嫌なものは嫌だ。
「へえ、君が若杉由布? よろしくね!」
「初めてまして~」
わらわらと集まった人が、俺に声を掛けていく。コワイ。……けど、皆優しい、と思う。だってなんか、笑顔だし。それに、口調が優しい、もん。一目見ただけだけど、結構いいクラスみたいだ。俺はそっと、胸をなでおろした。もしかしたら、上手くやれるかもしれない。若杉由布、も。
そこで俺はそっと胸に疑問を抱く。
……こんないいクラスなのに、どうして若杉由布は学校に来ないんだ?




