32話目
やっと学校へ行ってくれるよ嬉しい
真上には太陽が照っている。皮膚がじりじりと焼ける。まだ、六月だぞ? 暑すぎやしないか? まだ家を出たばかりだが、早速戻りたくなる。俺、結構引きこもりこじらせてんな。……ただ、この感覚ははどうも懐かしくて、すこし嬉しくなった。まだ、俺は忘れていなかった。
にしても、と俺は考えた。学校へ、ちゃんと行けるだろうか。俺の通う学校は、歩いて数分の所にあると、若杉由布はいっていた。けれど、それは多分普通の状態で数分だろう。今の俺の脚では、なんだかもっと時間がかかってしまう気がする……。重い足を引きずって、俺はため息をついた。
「あ、コンビニ……」
と、途中でコンビニを見つけたので入る。弁当コーナーへ移動し、手持ち金と値段を比べながら選別をした。えと……やっぱり、おにぎりか? でも、それだけだとバランス悪いしな……。あ、でもこのおにぎり安い。パンとかもおいしそうだし……ああ、寿司も……いや、高いな。迷った末、サラダと紅鮭のおにぎりを購入した。スイーツコーナーに目が引かれるが、我慢だ我慢。若杉由布の体で、あんまカロリーの高いもん食べるのは……。いや、ちょっと待て。コイツ、がっりがりだしな……。寧ろ、食べさせた方がいいのか? うーん……。ああ、このティラミスおいしそう。
とか考えていたら、あっという間に時間は過ぎる。やべえ、遅刻になりかける。俺は慌ててレジを済ますと、駆けだした。やっぱりケーキはやめて、ゼリーにした。これなら問題ないだろう。俺が頼まれたんだから、自由にやっていいはずだ。と、言い訳を吐きながら。
ちらりと時計を見ると、時間は結構ギリギリだった。軽くペースをあげて、走り出す。シャツが汗だくになりそうだ。周りにも、ちらほらと人が見える。俺と同じ制服を着て居る人も多い。当然のことながら、見覚えはない。……この中に、若杉由布を知っている人物が何人いるのだろう。そう考えると、なんだか視線が集まっているような気がして俺は身を縮こまらせた。まあ多分、俺の自意識過剰なんだけどさ。
そして、いよいよ校門が目の前にある。俺は少し息を吸って、明水高校へと足を踏み入れた。




