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30話目

 流れるように時が過ぎて。俺達の関係ももうすっかり慣れきってしまった、6月の終わり。丁度梅雨の時期で、外からはいつも雨音が聞こえている――そんな時期。

 俺達の日常に、ひとつ、変化が起きた。


 きっかけは、若杉由布からの日記だった。


『なあ、ちょっと問題が起きて。絶対に学校行かなくちゃならなくなった。

 お前、俺の代わりに学校いってくんねえか?』


 それを見た俺の心情が分るだろうか。混乱に、お前はそれでいいのかとか、そういう思いとか……。とにかく俺は、日記の返信を書いた。


『……あの、まあ。いいんだけど。お前、一体何があったんだ?

 そんで、いつ行くんだよ』


 返事は、随分とそっけなかった。


『制服は、箪笥に閉まってある。見たはずだから、分かるよな。

 日付は、次の月曜。とりあえずそれだけでいい。また後から告げる。

 あと、母さんと父さん、兄貴にはゼッタイ見られるなよ。こっそり行くんだ。

 よろしく』


 若杉由布は、肝心なことを全く教えてくれない。なんだよ、教えてくれたっていいじゃないか。


「俺、やっぱ頼りにされてないのかあ……」


 呟くと、ますますその事実は俺の心に覆いかぶさった。そりゃあ、確かにまだ顔を合わせてないとか不審者とか体を乗っ取ってるだとか同居者とか……色んな怪しい要素はあるけど……いや、怪しい要素しかないか……。


「こんなん頼りにしろって言っても、やっぱ無理だよなあ……」


 俺だって当然無理だ。そんなこと、出来るはずがない。……うーん……どうすれば信頼されるだろう……。……どうすれば……。やっぱり、方法は思いつかなかった。よく考えたら、俺が考えて答えが出たためしがない。うん、俺はやっぱりこういうことが向かないらしい。


「駄目、だなあ……」


 呟く。心がどんどん下に沈んでいくような気がする。ああ、駄目だ。もっと希望を持とう。前へ、進まないと。

 そうだ、学校生活について考えよう。学校生活。過ぎ去ってしまった、俺の青春だ。あれ、でもよく考えると俺って友達いなかったな……。ああ、つらい。窓際で一人、昼休みに寝たフリをしている奴。誰も話しかける人が居ないから、話しかけてくれる人がいないから、寝たふりしてた奴。それ、俺です。


「……若杉由布の学園生活、ねえ……」


 どうだったのだろうか。少なくとも、希望にあふれてはいないのだろう。なんていったって、自傷行為を繰り返しているし、若杉由布は行きたい、と。一言も言っていないのだから。生きたくない、場所なのだろう。


「こりゃ、相当覚悟しないと駄目かな……」


 ああ、胃が痛くなってきた。

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