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3話目

3話目。ぐだぐだと続いております。進まない。

「誰だよ、コイツ……ッ!」


 ぺたぺたと顔を触ると、鏡の中の自分もぺたぺたと自分の顔を触った。


「は……?」


 頬を抓っても、痛みが走るだけで現実は何も変わらない。

 おかしい、おかしい……!

 鏡が手からずるりと落ちた。床に当たって、鏡に(ひび)が入る。


「あ……」


 慌てて拾いあげる。大丈夫、割れてはいない。

 部屋の主が誰だかわからないのに、鏡を割ってしまった。悪い事をした。


 少しだけ、落ち着いて考えてみる。

 もしかしたら俺は、何か顔に消えない傷を負って、整形手術でもされたのかもしれない。それか、指名手配されて整形した……?とか。

 あまりに非現実的な話だが、有りえない話ではない……はず、だ。

 落ち着いて罅の入った鏡で自分を見る。イケメンではないが、特別不細工ではない顔が写っている。残念だから、イケメンにはなれなかった。変われなかった。

 まあ、そんなことはどうでもいいのだが。

 問題は、これは一体どういうことなのか、だ。

 他に何か無いか、引出をごそごそと探る。もう何もない。恐らく、片づけてしまったのだろう。死ぬつもりだったのだから。

 部屋の主について分かっている事は、自殺をしようとしたことと、自傷癖があった事くらいだ。


「くそ……」


 部屋を見渡す。ふと箪笥が目に入る。

 またごそごそとあさり始めた。部屋の主が見つかったら、謝らないとなあ……。

 服がいくつか出てきた。その中に制服があったから、おそらく部屋の主は学生だ。『明水(めいすい)高校』と掛かれた校章が、胸についていた。明水高校、……聞いたことの無い名前だ。少なくとも、俺の住んでる近くには無かった。

 ここは一体どこなのか。それがますます謎になった。


「と……」


 なにか、固いものが手に当たる。

 ぎゅ、と引き出すとその姿を見せた。


「日記帳……?」


 固い表紙で覆われた、日記帳だった。鍵などは掛かっていない。


「なんでこんなところに……」


 服に埋もれて、隠されるようにおいてあった。いや、本当に隠していたのかもしれない。日記なんて、見られたいものではない。

 いや、まあ見せる為に書いたのかもしれないが。


 パラ、とページを捲っていく。当たり障りのないことが書かれている。

 日記を書いた人物は、部屋の主という事でいいのだろうか。

 学生らしく、今日はこんなことをされた、といういじめの内容やら、天気やら。なにかの証拠になりそうな感じの、他人に見せる用の日記だった。

 一番最近の日記には、ひとこと。


『もう疲れた』


 とだけ、かいてある。恐らく、自殺する前に書かれたものだろう。

 最後に書かれた日付は、今からどのくらい前なのだろう。部屋を見わたしカレンダーを見つける。3月と書かれていた。けれど、カレンダーが捲られていない可能性は十分にある。

 荒らした箪笥を片づけ、カレンダーに近づく。埃は被っていなかった。つまり、そこまでの時間は立っていないと予想できる。掃除されている可能性もあるが。

 にしても、異常な程物がない。だから、手掛りもない。今自分がどんな状況なのか、知るすべがなかった。

 ふと、茶色い扉に目をやった。内側――――俺の居る方から、鍵のかかっている、扉。部屋のある唯一の出入り口。

 ここを開ければ、様子が分かるかもしれない。自分の状況も、分かるかもしれない。

 頭痛は随分とマシになっていた。歩ける。外に、出てみようか。

 だがなぜだか嫌な予感がして、扉を開ける勇気が出ない。


「……糞ッ」


 先に窓の方を見ることにした。窓の外を見ると、街が広がっている。どうやらここは二階らしいと推測できた。平和そうな、普通の街だった。俺の住んでる日本。だが、見慣れない風景だから、俺の住んでいる所からは離れているだろう。車も、家も、人も居る。頑張れば助けを求める事も出来そうだ。だから、監禁されているわけではない……筈。一瞬助けを求めようかとも思ったが、辞めておくことにした。なにかの勘違いだったら恥ずかしいし、状況を理解してから助けを求めたかったからだ。


「……」


 無言でもう一度扉を見つめる。外へ、部屋の外へつながる扉を。

 ここを開ければ、何か分かるかもしれない。逆に、何もわからないかもしれない。

 昔から、扉を開けるという行為が大っ嫌いだった。何かが変わるということだから。


 手を伸ばす。ゆっくりと、ドアノブに手を掛ける。


 随分と迷った後、俺はドアノブを回した。


 すると、そこには――――

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