29話目
『……ごめんな』
『何謝ってんのか知んねえけど、そういうのキモチワルイからなしな』
若杉由布は、なにもかわらなかった。俺は、どうすればいいのだろうか。
今はもう、5月の半ば。……このまま、ぬるま湯みたいな日々を過ごし続けてて、それで。いいの、だろうか。俺にはわからない。それに、決めるのはきっと……若杉由布だ。
ぶるりと身を震わせる。こういう時期なのに、まだちょっと寒い。ベッドに座って、そんなことを考えた。
日記帳を指でなぞる。若杉由布の物語は、ちゃんと前に進んでいた。もうそろそろノートが終わりそうだ。俺の、落書き帳も。それと同じくらい書かれている。それくらいしか、やることがないからだ。
若杉由布も、なにかやることができたら、変えられるのかもしれない。退屈って、なにもかも人のやる気を奪ってしまうから、あまりよくないと思うんだ。……あくまで、俺の持論だけど。
でも、と俺は考える。今若杉由布は俗にいう引きこもりな訳で。そんな中、やれることってなにがあるんだろう……。ない、か。
俺はもう一度ため息をついた。自分が子どもなのだと、わかった気がした。
せめて、インターネットとかがあればなあ……。だがしかし、なぜかこの家にネットはないようだった。不便だろ、それじゃ。父さんはノートパソコンを持っているらしいけれど……俺たちの分など、勿論ない。バイトしたりして、どうにかためらんないかな。いや、でもこの体じゃ禄に仕事も覚えられないからな……。
力が欲しいな、そう思った。
金でも、権力でも、人脈でも。なんでもいいから。
力さえ、あれば。




