23話目
テスト返ってきました死
扉があいたのは、その時だった。
バン、と。思いっきり大きな音を立てて、扉が開いた。びくりと俺は手を止める。見覚えのある、大きな影だ。俺はごくりと唾を飲み込んだ。知っている。俺は、この人物を。
「……そんな下らないものを描いているのか」
その人……若杉由布の父さんは、冷たい底冷えのする目でそう言った。
怖い。本能的な恐怖が俺の背中を駆け巡る。背筋が冷たい。自然と、体が震えていた。
「学校にも行っていないんだろう」
確かに、そうだった。俺はもちろん行ってないし、あの様子だと若杉由布も行ってないのだろう。……だから、この人は怒っているのだろうか。
相変わらずの仏頂面。感情なんてまるでないような、そんな感じだ。なのに、雰囲気が怒ってる。威圧、してくる。静かに。
「……すみま、せん」
親だ。親相手なのに、敬語。自然と敬語になる。こりゃ、若杉由布もぐれる訳だ。正直、俺もぐれたい。
「謝るくらいなら学校に行け」
「それ、は」
「お前に拒否権はないのだ。……いいか、私はお前の為を思って言っているんだ」
急に、優しい口調……いや、優しさを取り繕った口調で言う。本当に、俺のことを考えているのか? いや、考えてるとしても若杉由布のことだろう。
「……は、い」
小さく俯いて呟く。こういう人には、反応しない方がいいのだろう。そして、素直に従うフリをしてみる。
「分かったのなら、はやく学校に行け。こんな下らないもの、書いてる暇があるんならな」
そう言って、彼は近づいてきた。俺はびくりと身を震わせる。動けない。
ノートに、手が伸ばされる。破られるのだと、分かった。咄嗟にノートを抱え込む。破られたくない、と感じた。他のページはいいけど、この、ページだけは。
すると、父親はぎろりと睨むと、結局諦めたようだった。舌打ちが一つ、聞こえる。
彼が去って、俺は一人ため息をついた。
ぎゅっと抱え込んだノートを見て、そっと撫でた。良かった、と。そう思った。




