22話目
夏休みが終わりました(絶望)
『嫌だ。
お前の絵は凄いと思うけど、俺の話は大したことないし、見せたくない。というか、見るなよ。俺のもんだからな。』
……うん、分かってた。
だって、あの若杉由布くんだもんなあ。すっごい機嫌悪そうだもん。
はあ、一つため息をついて日記を閉じた。少し、悲しい。いいじゃん、別にーーー! 俺はただ、読みたいだけなのにさ。
日記を仕舞い、もう一度ベッドに寝ころんだ。けれど、目は閉じない。考える。
今日は、何をしよう。また絵を描こうか。
ううん、まあそれしかないよな。でも、なあ……。どうしても、またあの話が読みたい。一回だけじゃなくて、もっと読みたいなあ。
ていうか、暇であろう若杉由布はあの話を書いてるから、俺に忙しいと言ったのだろうか。てことは、また続きが書かれているという事だ。うう……読みたい、とても読みたい。学校へ行かず物語を書いてるって、相当文字を書くのが好きなのだろうか。作家とか、本格的に目指してるのかな。だとしたらあの面白さも納得だ。
そんなことを思いながら、ノートを取り出す。昨日も描いていたノートだ。悪いなあ、勝手に使わせて貰っちゃって。さらりと、書き心地を確かめながら考える。さて、今日はどんな絵を描こうか。
真っ先に思いついたのは、勇者だった。
彼の御話に出てきた、勇者。ヒロイン。そして戦士。
まるで存在しているかのように、俺の頭にははっきりとイメージが湧く。描きたい、と思った。指が滑り出す。気付くと絵を描き始めていた。
勇者。物語の主人公。気弱で、苛められっこで、一人じゃ何にもできない、そんな奴。うじうじしているし、見ていてなんだか苛々する。自分自身が大嫌いで、そんな自分を変えようとする。そして、冒険の旅を始めるのだ。
目つきは悪くない。優しげな目で、たれ目……かな。それから、髪の毛は薄い茶色で、明るい茶色の目。背は低め。
ヒロイン。いじめっ子。主人公のことが、嫌いで嫌いで堪らない。いつも主人公を苛めてるから、怖がられてる。周辺一帯のボス。裕福な家の子。
うーん、やっぱり主人公と対照的なキャラだから、見た目も対比させようか。背は主人公より高い。それで、吊りあがった目。色は……うん、綺麗な紫。性格が悪いから、見た目は綺麗にしてあげないと。髪の毛は藍色かな。
戦士。長い髪の毛を引きずっている。確か、性別不明。無口だけど、借りた恩は返す律儀な性格。ぼさぼさの髪で、あんまり手入れはされてない。顔も、あんまり綺麗な訳じゃない。ただ、これといって汚い訳じゃない。つまり、普通。そんな顔。
どんどん想像が湧いてくる。楽しい。今は、最高の気分だった。
俺は時を忘れて、紙に絵を描き続けた。




