2話目
なんとなくぐだぐだ続く。
遺書、というものは。
俺の記憶に間違いがなければ、自殺をする人が残る人に読ませようと残す、手紙だった筈だ。けれど、俺はそんなものを残していない。それならば、なぜ。こんな所に遺書があるというのか。
「……」
少しの罪悪感が湧いたが、すぐにそれを無視する。
封をとき、中身を見た。白い封筒の中身は、やはり白い紙だった。びっしりと、小さな文字が並んでいる。全て手書きだった。やや右肩上がりの、おそらく男だろうと思われる字。
「誰の、手紙、なんだ……?」
手紙に目を通す。要約すると、こんな感じ。
『僕が死ぬのは、決して母さんや父さんのせいではありません。ただ、こんな世界につかれてしまったんです。僕が死ぬことで、少しは彼等に復讐できるのでしょうか。……いや、無理だな。アイツらはきっと、僕の死を笑い話にする。赦せないし、許してはいけないと思う。僕が幽霊になったら、真っ先にアイツらを呪い殺してやる(以下略)』
……どうやら、苛められている男が書いたらしい。
苛められて、自殺。よくある話だ。本当に、よく在る話。
「でも、なんでこんなところに……?」
俺の部屋じゃ、ない。それは確かだ。
……取敢えず、他のものを見て見よう。
机の引き出しの一段目。鋏やカッター、ナイフなどが大量に入っていた。なにか、触れてはいけない物に触れてしまった気がした。少量の茶色い何かがこびりついている。恐らく、血だ。どうやらこの部屋の主(仮定)は自傷癖まで持っていたらしい。ここはおそらく、それに使った凶器を入れているのだ。
無言で閉める。部屋の主が生きていればいいと思った。
二段目を開ける。するとそこには、何も入っていなかった。また閉めた。
三段目。最後だ。そこには鏡が入っていた。鏡。なんとなく拾い上げて、自分を写して言葉を失った。
「嘘、だろ……?」
そこには、自分の見たことの無い、誰かの顔が写っていた。