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118話目

 車内はなかなか快適だった。2時間ほどの新幹線の旅を終えると、俺は更に次の電車に乗る。まだ結構、乗り換えなくてはならない。この後は、バスだ。運行時間がそうないから、乗り逃さないようにしないと。……そう、結構田舎なのだ、俺の故郷は。行くのも大変だし、面倒くさい。だから俺は、そんなに里帰りもしていなかった。あのお盆休みで帰ったのを最後に、俺は死んでしまったし。……本当に、薄情な息子だと思う。母さんと父さんの顔を思い浮かべて、少し溜息をついた。

 がたん、ごとん。気持ちのいい揺れだ。けれどもう、眠気はやってこない。おそらく、散々眠ったせいだろう。

 電車の中というのは、不思議な空間だ。何をするでもなく、ぼんやりと外の風景を眺めながら、俺は思考を巡らす。若杉由布について、そして、俺についてのことを。答えは出なかった。なにひとつ。解決しそうな、素振りさえも。ただ時間だけが過ぎていった。

 バスに乗り換えても、まだまだ心の整理はつかない。緊張しているのかもしれない。家族に会うことに。いや、家族に会えるのか、約束を守れるのか。そういうことさえ、まだわかっていないのだけど。自分にその勇気があるのか。会えたとして、何を話すのか。まったくわからなかった。それでも、ただ進んだ。それしか、道はないように感じられたから。


 バスが去ると、後には俺だけが残された。このバス停で降りたのは、俺だけだった。あたりを見渡して、俺は少しだけ息を漏らした。懐かしい。忘れていた故郷の姿が、そこにあった。

 一面、緑。山に囲まれた、小さな集落。……そしてその中に、俺の家が、育った家が。存在していた。

 今度は、懐かしいというよりも、もっとなにか、強烈な感情が俺を襲う。最早衝動に近い。強く振動が脈打ち、耐えられない、と少しだけ思った。

 ……行くのか。進むのか。ほんとうに、その勇気はあるのか。

 自分自身に問を投げかける。わからない、というのが正直な答えだった。

 けれど、足は確かに踏み出された。我が家の方向へ。きっとそれが、俺なりの答えだった。

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