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116話目

 幸せだったんだ。それを俺がぶっ壊した。


 ふと気付くと、目の前には見知らぬ風景が広がっていた。ああ、これは夢かと判断する。すっかり慣れてしまった感覚だ。幼い若杉由布が、目の前に……と、俺はちょっとしたことに気付く。成長している。あまり、幼いとはいえないだろう姿に。小学生……いや、中学生だろうか。とにかく、その年頃にまで若杉由布は成長していた。だいぶ、今の見た目に近づいていると思う。昔はかわいかったのに、と俺は少し残念に思う。この年齢、ということは……もうとっくに裕美は家を出ているだろうか。じゃあ、恵登は……。


「……由布」


 声を掛けられる。振り返った。恵登が立っていた。幼い姿で。


「……何」


 俺が喋った。というより、若杉由布が勝手にしゃべったという感じだけど。俺が喋ったような感覚だから、なんだか、不思議だ。

 恵登の目は暗かった。どこか、この世のものではないような昏さを持っていた。


「……お前のせいだ。みんな、みんな……お前が喋るから……お前が言わなきゃ……俺たちは……」


 恵登の口から放たれる呪詛のような言葉を、ただ、黙って聞いていた。言葉の半分以上は、耳から入って出て言った。頭が、理解することを拒んでいた。


「お前さえ、いなけりゃ、俺は……」


 頭の奥が、ぼんやりとしびれたみたいだ。こんなにも純粋な悪意を、敵意を、向けられたことがなかった。


「お前なんか、」


 恵登は少しだけ息を吸った。言葉を発することを、ためらっているようだった。なのに、結局勢いに任せるようにそれは吐き出された。


「生まれなきゃ、よかったのに……」

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