113話目
『了解。○日から、×日まででいいか? 母さんにも説明しておくから。ホテルとかあんの? 泊まるんだろ? ラブホはやめてくれよ。俺の体なんだから』
「だから、彼女じゃないって……!」
そもそも、女の子と俺が話せるのかも確かじゃないし。約束を果たせない、といいたいだけなのだ。なぜか言い訳するように心の中で並べる。
にしても、説明って。どうする気なんだろう。……ちゃんと説明、してほしいんだけどな。優しそうな母の顔が目に浮かんだ。
『ありがとう、助かる。あと絶対に彼女じゃないですほんと絶対に!!!』
それだけ書いて、俺はペンを置いた。ふう、と声が漏れた。あとはもう、やることもないだろう。目を瞑り、ぼんやりとベッドに凭れ掛かった。ちらりとカレンダーを見る。三日ほどで出発の日だ。どっちが出発の日に家を出るんだろう。そんなことを考えた。俺、新幹線の中で寝ちゃうタイプなんだけど……大丈夫かな。なんてのんきなことを考えて、くすっと笑った。そういえば旅行なんて、久々だ。ずいぶん長い間、遊んだりなんてしてこなかったから。
若杉由布にとっても、久々の旅行だろう。きっと、いい刺激になると思う。あそこは何もないけど、逆に言えば、俺たちを傷つけるようなものもないってことだから。人間関係に疲れた時は、ああいう田舎で羽を休めるのも、ありだと思う。故郷に向かってなんで言いぐさだとは、自分でも少し思うけど。きっと、田舎とはなんだって、母さんに怒られ……。
……ああ、母さんに、久々に、会えるだろうか。会ったら、なんていえばいいのだろう。自殺してしまって、ごめん? いや、違うな……。母さんは若杉由布のことを当然知らないんだから、そんなこと言われても困るだけだろう。何を言えばいいんだろう。久々の母親に、何を告げればいいんだろう。
「……」
考えることが、考えなければならないことが、たくさんある。それが少し、苦でもある。でも、やらなければならないこと、だ。
そう考えて、俺はちょっとだけ笑みをこぼした。




