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107話目

 ふたりといっても、二重人格とかそんなんじゃない。一度、離婚したんじゃないかってハナシだ。そしたら、若杉由布の好き嫌いをあの人が知らなかったのも、納得できるし。うだうだ言葉を連ねつつ、こんなこと知ってなんになるのだろうとも思った。家庭環境がさらにややこしくなるだけじゃないか。若杉由布の過去を、もっと把握してみたいと思いつつ、それってただの、俺の好奇心なんじゃないか、という気もする。

 ため息をひとつついて、日記帳を手にとった。


 ……ん?


 よく考えれば、若杉由布の過去、って……。


 この日記帳に、全部、かいてある、ん、じゃ……?


 ハッとする。数秒間固まっていた。自分の馬鹿さ加減に。そういえば新しい方しか見ないから、古いものは全く気にしていなかった! けど、けれども! もしかしたら、分かるか、も……。震える手で日記帳の最初の方を開く。


 ……。


 破られていた。


「……まあ、当然、だよなあ」


 ため息をつく。天才的な発明だと思った分、結構ダメージも大きい。俺ってほんと、バカだなあ。自分の馬鹿さ加減というものはよく知っているが、それでもダメージはあるものだ。そして、ダメージを受けている自身、という事実にまたダメージを受ける。


「はあ……」


 ため息をつき、ぱらぱらと日記帳を捲る。最新のページを見て、若杉由布からの日記を見ようと思ったのだ。しばらく、俺は書いていなかったけど。書いて、くれているのかな。なんだか少し、手が汗で湿る。緊張でもしているのかと、嫌な気分になった。

 そして、最新のページを、開いた。


『お前、大丈夫か?』


 一言だった。たった、一文。

 ちょっとだけ、涙が出てきたのが分かった。自分のことを心配している人がいるのだと思うと、なんだか心があたたかくなったからだ。それこそ、しにたくなるほど。

 ああ、自分はどうしてこうなのだろうと思う。嫌なことがあった訳でも、若杉由布のような具体的な理由がある訳でもない。なのに、酷く死にたいと思う。自分のような者が、心配してもらえているという事実が、つらいのだ。


「……ありがとう……」


 消え入りそうな声で、呟く。そうでもしないと、本当に壊れきってしまう気がした。

 嬉しいんだ、本当に。けれど、幸せであればあるほど、優しい言葉を投げかけられるほど、生きてちゃいけない気分になるのだ。

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