君の顔
君シリーズの一作目です。
君ってさ、いつも厚化粧だよね。
化粧ってうまいと下手があるけれど、君は明らかに下手くそだよね。
デートの時、君の顔を時折見るけれど、違和感しか感じない。
時折じゃなく、ずっと見てろって? そんな無茶な事言わないでよ。ずっと見てたら、人にぶつかってしまうでしょ? ずっと前を見てる今でさえ、しょっちゅうぶつかっているのに。
僕のことをずっと見てるけど、ぶつからないって? そりゃ君はそうかもしれないけど。でも僕がエスコートしてあげてるからってのもあるんじゃないかな。僕がエスコートしていなければ、君だって僕ほどじゃないけど、人にぶつかって謝らなければいけない羽目に陥っていたよ。
その点だけは感謝するって? その点以外に感謝するところがないのは残念だけれど、一点だけでも良しとするよ。
次のデートの時には厚化粧ではなく、薄化粧で来てほしいな。どうしてかというと、君の素顔を覚えていないからだよ。
厚化粧の君ばかり見ているからね。
薄化粧なら素顔とそんなに変わらないだろうから、君の素顔を思い出せるかもしれない。
どうしてそんなに怒っているんだい? そもそも君は僕の顔を知らないって? でもそんな僕を選んだのは君じゃないか。
本当に愛しているのかだって? もちろん愛しているに決まっているじゃないか。僕は君の事を心の底から愛しているよ。
素顔を忘れているのにって?
だからさ、君の素顔を思い出すために、次のデートは薄化粧でお願い。
次とは言わず、今からもう一度デートをしようだって? せっかちだな。
化粧はどうするつもりなんだい?
ハンカチを濡らして顔を拭くから問題ないって? そこに公衆トイレがあるから、濡らしてきなよ。
濡らしてきたようだね。それじゃ、早速顔を拭いてくれる?
ああ、そういえばそんな顔をしていたよ。
すっかり忘れていたよ。
でも君にはやっぱりこっちの方がいいよ。
ね、僕の愛しののっぺらぼうさん。
――えぇ、私の愛する透明人間さん。
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