8、少女と晴明
琴姫様の一件からしばらく私は父に外出禁止の命にて、屋敷に縛られていた。
しかし、そんな日々も今日でさよならだ。
8、少女と晴明
外出の禁が解かれるとすぐ、私は晴明様のお宅へ向かった。
声をかけてみる。返事はない。やはり、まだ戻られていないのだ。
出直したほうが良いのだろう。晴明様のお友達とは言え、少しでも怖いものは怖い。この周辺なは物の怪がうようよいるはずだ。先ほどからひそひそといくつかの声が聞こえる。姿が確認できない以上、晴明様のお友達のかもさ定かではない。
でも、早く会いたい。
琴姫様の一件のお礼は言った。晴明様のお力を借りるような相談もない。
なのに、私は真っ先に彼に会いに来た。
こういう気持ちを人々がなんと呼ぶのかは知っている。
外出ができない日々、私は考えた。なぜ晴明様のお顔をずっと見ていたいと思ったのか。晴明様が美しいお顔をお持ちだからと言うこともある。しかしそれだけではないと思えた。
私は久しぶりにお会いした二ノ姉上にご相談した。答えはすぐに姉上の口からはじき出された。
「それは恋でありましょう。そのものに、三の姫は惹かれ始めているのでしょう。」
顔に熱が走るのを感じながら、
そうなのかもしれぬと私は納得した。
「三の姫様?」
後方から聞こえた声に私はすぐに振り返った。その際、笠から垂れる薄い布翻ったことは気にならなかった。
少し驚いた顔でゆっくりとこちらに近寄って来られる晴明様。
私はゆっくりと一礼した。
「どうなさったのですか。」
彼の私への問いかけに、近づいてくる姿に胸が高鳴っていくことを確かに感じた。
「やっと、父からの外出の禁が解かれたのです。」
ああ、と彼ははにかんだ。
「それは、良かったですね。私にも関係ないことではないので、心配しておりましたよ。」
私は久しぶりに会い確信した。
これは恋だと。