7、少女と事の顛末
目を開けると、一の姉姫が傍らに佇んでいた。
「姉上?」
私が気がついた事で、姉上はぺちんと私のおでこを叩く。
「無理ばかりして。心配しました。」
「…ごめんなさい。」
「しばらく、外出禁止と、父上が。」
私は、頷くしかなかった。
7、少女と事の顛末
今回の顛末はこうだ。
二の姫様は宮仕えをしていて、時々見かける殿方を慕うようになった。
一方的な思いであったが、二の姫様はいつかその殿方とお近づきになりたいと思うようになり、日々思いは募っていった。
そんなとき、その殿方がご結婚されることが決まったことを知った。二の姫様は食事もできなくなるほど気を落とし、日に日に元気がなくなっていった。そして、体調が思わしくないと宮仕えも辞めてしまった。
そして、ある日二の姫様は思い付く。相手が、いなくなればこの結婚の話は無くなると。
そして、呪詛をかけた。
もちろん、一人ではできなかっまので、その手の者を雇い。
その呪詛は成功し、琴姫様を苦しめた。
何と、二の姫様は殿方のお相手が琴姫様だと知らずに呪詛をかけてしまっていた。
私に会いに来たのは、本当に偶然で呪詛までしたものの段々冷静になり、自分の行ったことを後悔し始めたからであったらしい。
そんなとき、呪詛は返された。
私が依頼した、晴明様によって。
彼女はいきなりの激痛に、首を無意識の内に掻いた。
首の大きな血管を破いてしまえばこの苦痛から逃れられる。
そんな防衛反応だった。
しかし、私を傷つけた事で一瞬我を取り戻した。
そして、苦痛は消えなかったが自傷行為は止めることが出来た。
今は、返された呪詛と戦っているらしい。
呪詛は、返される前に自分の行いを後悔し始めていたことから少しだけ力が弱まっていたらしいが、呪詛が消えるまで彼女の体力が持つのかは分からないらしい。
琴姫様は、まだ床に伏せっているらしく事の顛末を聞いてただ涙していたらしい。
私の首の傷は大したことはないが、禍々しい気に当てられたことにより数日目を覚まさなかったという。
晴明様は、二の姫様に返された呪詛の力が弱まるように毎日二の姫様に力を与えているらしい。
私は父からの言いつけを破り、晴明様の家を訪ねた。
晴明様は、ただ疲れた顔をしていてそれなのに私の身体の心配をしてきた。私は大丈夫だと告げて、いつかのように庭を見つめながら話をした。
「呪詛をかけた姫、多分助かるだろう。」
彼が言うように、三日後には食事ができるまで回復したらしい。
「晴明様、ありがとう。」
琴姫様も、二の姫様も、そして私も彼に助けられた。
悲しい結末ではあったけど、これから私たちはもう一度始めなくてはならない。
決意を込めて晴明様を見ると、彼は優しく笑ってくれた。
この数日、彼の笑った顔は数度みたけど、こんなに優しく笑う顔は初めて見た。
つい、私たちを遮る市女笠の薄い布が憎らしくなるほどに。