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天使の少女と海の街  作者: 兎季
第一章
7/25

浄化と記憶

結構頑張りました。

それでもおかしなところがあるかも…(泣)です。



「ううううう。汚れてるーーー」

ルーは海を見て呻く。

普通に見れば何も変わらず宝石のように輝いている海。

しかし、ルーやレオーネといった魔法の使える者、とりわけルーには海が悪い『気』によって淀んでいるのがはっきりと分かった。

「だな。疎い俺でもわかるレベルだ。」


レオーネは感心した様子でふむ、と腕を組んでいる。


「いつもお前がうーうー言っている気持ちがわかったよ。確かに、これってかなり嫌な感じがする。」


「でしょ!!でも何でこんな大惨事レベルになんないと気づかないのよ!疎すぎよ。」


信じられない、と嘆くルーにレオーネはやれやれと肩をすくめた。


「お前が鋭すぎるんだ。俺は平均より少し下くらいだからな。それで、浄化できるのか?」


レオーネが心配そうにルーを見つめる。

浄化とは、魔法に分類されながらも普通の魔法それとは一線を画す。

呪いを取り去ったり、悪い『気』によって汚染された自然を元の清浄なものに戻すことができるが、かなりの力と精神力を使う。


それに、個々人によってその能力には大きな差があり莫大な力と精神力を使ってもほんのわずかな範囲しか浄化できない人もいる。

レオーネもその中の一人で、あまり浄化は得意ではない。

反面、ルーの浄化は街で一番とも言われるほど。

しかし、この広大な範囲を浄化となると、かなりきついものがあるだろう。


「大丈夫、だと思う。だからレオーネは先に行っておじいちゃんに報告しといて。

色々ばれたって。」

ルーは海を見極めるように見つめた後、レオーネの方を向く。

心配そうな幼馴染に大丈夫と安心させるように笑うがレオーネはやはり食い下がってきた。

「でも、」

「大丈夫だってば。それに浄化している姿は誰にも見られたくないの。レオーネも知っているでしょ?」


レオーネの言葉を遮ってさらに畳み掛ける。

初めて浄化をしたあの日。

ルーは浄化する姿を誰にも見せないと決めた。

あの姿は見られたくない。特に、レオーネには。

「ああ。」

「だから、先行って報告よろしく。」


譲らないルー。

しばらく見つめあいの勝負になったがレオーネが負けた。


「わかった。でもなんかあったらすぐにこれで知らせろよ?」

レオーネは青い羽根の形をしたペンダントを差し出す。


「なにこれ?」


「俺の眷属ちからと魔力を合わせて創ったお守りみたいなもん。

念じれば簡単な風の魔法が使える。お前、結界とか障壁は完璧だけど他が残念だからな。…危なっかしいからそれ持ってろ。あと一応天使役の祝い。」


照れくさそうに最後の言葉を付け加える。

ルーはぽかんとしていたがその言葉の意味を理解すると思わず笑みがこぼれた。

お祝いってことは昨日すぐに創ってくれたってこと…?

(……えへへ。)


この幼馴染はなんだかんだ言って昔から変わらずちょくちょく優しいのだ。

だからと言ってはなんだけど学校ではモテている、らしい…。(友達談。)

でもまあ、多分かっこいいんだろうなとは思う。

だって銀髪に整った顔。背が高くて細いけど、決して弱弱しくは感じない体格。

それになんといっても魔法のレベルがおかしい。

あいつはおちこぼれと違って学年主席なのだ。

おかしい。幼馴染だから大体同じような環境で育ったはずなのに。


色々な思いが巡りながらもペンダントは嬉しいのでさっそくつける。


「ありがと。大切にする。」

「ん。それじゃあまた後でな。」


レオーネもルーの反応に嬉しそうに顔を綻ばすと結界の中へ戻って行った。

ルーはそれを確認し、深呼吸をする。

……浄化となるといろいろ大変だ。

また、あの変な『記憶』が頭に入ってくる。

そう考えるとちょっと憂鬱だが、海をこのままにしておく方がもっと不快なので意を決して浄化をすることにする。


「ってそうだ、リボンはずしておかなきゃ。」


しゅるりとリボンをはずし、ポケットがないので自らの手に結んでおく。

とかれた髪は腰くらいの長さ。癖はなくまっすぐと流れ、きらきらと輝いている。


「よし。」


ルーは手を祈るように組み、浄化を始めた。


『穢れよ、我が魔力をもってその姿を現せ。』


詠唱と共にルーの魔力が桃色の光となって海に降り注ぐ。

それと同時、ルーの身体にも異変が起きた。

純白の羽は自身よりも大きくなり色も青へと変わる。髪は腰まであったのが足元くらいにまでのび、風にさらさらとなびいた。

その姿はルーの整った顔と相まって、神々しく見る者すべてを魅了するような、そんな人間の枠を超えた美しさだった。


しかし、ルーは悲しそうに呟く。


「やっぱり、規模が大きいから完全に変わちゃった。」


こんな姿、幼馴染レオーネには見られたくない。

自分が人間でないみたいで。

万が一怖がられれでもすれば立ち直れない自信がある。


一方、海からは黒く淀んだ『穢れ』が姿を現し、まっすぐにルーへと向かってくる。

だが、ルーは逃げようともせずただ目を閉じた。


(来なさい。元に戻してあげるから。)


『穢れ』はルーを包み次第に彼女の中へ吸収されていく。


「っ……!!」


苦しそうに声を漏らすルー。

頭に、知らない記憶が流れ込んでくる。


【私、人と友達になれてよかったわ。】


響いてくるのはルーの知らない、けれどどこか自分と似ている声色の女性ひと


聞いているとなんだか懐かしく感じる。


【だって、こんなに素敵な人が沢山いたんだもの。】


女性は心から幸せそうに笑う。


【見ているだけではわからなかった、知らなかったものを精一杯、体験できた。

おかげで世界わたしはどんなことがあっても希望を持っていられる。……最期まで頑張れるわ。

だから、そんな表情かお、しないで?】



「これ以上は、無理っ!!」


思わず叫び、穢れを遮断する。

とりこんだ穢れは自身の魔力で浄化し世界へと戻す。

すっかり浄化し終わると身体はもとに戻り、羽も元の大きさに戻った。


「また、これか。」


初めて浄化したときから流れ込んでくる知らない記憶。

どれも断片的でよくはわかない。

けれど、いつも幸せそうに笑う人だと思う。


自分の浄化が人と違うのを自覚したのは、初めて浄化を行ったとき。

おじいちゃんが見本にと見せてくれた浄化は魔力で直接行うものだった。

でもルーのは違う。


穢れを吸収し浄化する。

そして、その規模に応じて自分の姿が少し変わるのだ。

変わるといっても髪が長くなったり羽の大きさが変化したりする程度だが、ルーはとにかくそれが怖かった。

というか今でも怖い。


そんな姿を人様に見せれるはずもなく、浄化をするときは誰もいないところですることにしている。


フェレルですらルーの浄化する姿は見たことないのだ。

しかし穢れを放っておくわけにもいかず、浄化を頼まれたら断れない。

要は見らなきゃいいのだ。


さてと…。

ルーは海を確認する。

海は淀みがなくなり、さらに浄化したてなので清気も満ちている。


「うん、ちゃんと綺麗になった。これで、やっと帰れる。」

ルーは満足げに言うと、くるりと踵を返し結界の中へ戻って行った。



読んでくださってありがとうございました!

国語力がほしいです。切実に。

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