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天使の少女と海の街  作者: 兎季
第一章
6/25

不干渉

いつものことながら拙い文の読みにくさに注意です

「あれはなんなんだっ!!」

コルトス帝国の特別地域併合指揮官、エルべスは目の前の信じられない光景に半ば混乱しかけていた。

「…あれが、魔法…」

呆然と呟く自らの副官を当てつけのように睨む。

「も、申し訳ありませんっ」

副官はすぐに姿勢を正すが、やはり外の光景に息を呑む。

「相手は子供二人…。…こちらは軍艦で一斉砲撃、なのにあの子供はその全てを防いでいる…」

エルべスは窓から金髪の少女を見る。

純白の羽を生やし、空を飛んでいるだけでも信じられないのに、少女は一人でこの砲撃を防いでいる…いや、無効化しているのだ。

少年にいたっては何もしていない。

…魔法はコルトス帝国にはほとんど残っていない。いや、それはおそらく他の国でも同じだろう。服属させた国々でも魔法の存在はもはや消えかけていた。

残っているものといえば、大戦以前の遺跡にあるほんのわずかなものだけ。

それも、使い方がわからず宝の持ち腐れの状態になっているという。

だから、魔法なんてもの存在は知っていても見たことなんてない。それはここにいる者も同じだろう。

…幻の街、アンジュ・ポルト国が実在したものだと分かったのはつい最近。

それまでは何らかの土地が計器によって発見されることはあった。

だが、それは目に見えず次に観測してみると大抵、何もなくなるのでずっと計器の誤作動だと考えられていた。しかし最近開発された熱感知器によってある観測隊が『人間』に遭遇していたことが分かった、と報告するとその状況は一変した。

何回か送られた観測隊は発見された目には見えない土地に向かって攻撃をした。

すると、ほとんどの軍艦が突然の荒波に襲われたり、嵐にあったりしたのだ。

その中で熱感知器が感知したのは一人の人間の体温。それも空の中で感知した。

…それからおとぎ話の存在でしかなかったアンジュ・ポルト国の研究が一気に進んだ。

古い書物を紐解き、断片的にしか載っていない欠片のような情報や口伝えで残されている伝説。

それらをすべて集め、つなげた結果、アンジュ・ポルト国は存在している可能性が非常に高い、という結論に行きついた。…そしてこの世界では消え去ろうとしている魔法が存在しているということも。

だから、国王は幻の街を手に入れ、魔法を手にするためにこの軍隊を派遣したのだ。

「魔法がなんであろうと、この戦力で勝てないものはない、そう思っていたんだがな…。」

やっと姿を現した魔法。

それは、考えられないくらいの力だった。

…その昔、これを使った戦争で世界が滅びかけた、というのも今では容易にうなずける。

「…。攻撃止め。再びあの者たちと話す、回線を繋げ。」

エルベスはため息を吐きたくなる衝動を抑えながら、副官に命じた。


さっきまでの砲撃が嘘のようにやむ。

ルーは不審に思いながらも、障壁は維持し続け、隙あらば結界も張ろうと相手の出方をうかがっていた。

「レオーネの魔法ももう少しかかりそうだし、これからどうするかなぁ…?」

結界を張ってすべての存在を隠す。

ルーがその気になれば、フェレルの結界の上からさらに結界を張りこの場から去ることも可能だ。

ただ、それだけの結界を張るには障壁を維持しつつ、なんて片手間ではできない。

「私は、おじいちゃんみたいに器用じゃないもん。」

フェレルは、常日頃から街に結界を張りながらもいざとなったときに使う魔法は誰よりも強い。

「あんな化け物と自分を比較するなよ。あれは別格だ。」

レオーネはルーの独り言につっこむ。

先ほどまで目をつむって集中していたのだが、今は魔力を薄く体ににまとわせている。

眷属ちからを集め終わったのだ。

「…もうできたの?」

「当たり前。誰かさんと違って俺はこの手の魔法、得意だからな。」

からかうように言うレオーネにルーは頬をぷくっとふくらませる。

「ふんっ。結界と障壁ができれば大体のことには困らないし。それに、」

『少し貴公らと話がしたい。』

さらに言いつのろうとしルーの言葉を突然話しかけてきた使者がさえぎる。

…このっ!!毎回、毎回こいつはなんなのよっ!

ルーは心の中でそう叫んだが、街全体にかかわることなのですぐに切り替えた。

レオーネと目配せし、タイミングをつかんで武器破壊をする機会を探る。

「何かしら?一方的に攻撃してきて今度は話がしたいって?」

『それについては弁明はしない。ただ、貴公らに聞きたいことがある。

…何故、貴公らは反撃をしてこない?』

それは、本当に疑問に思っていることのようで、その言葉には純粋に疑問の意味がこめられていた。

ルーはそんな問いに心底あきれる。

…さっきも言ったのに、もう忘れてるし。それともそれが本当の理由じゃないとでも思っているのだろうか。

「言ったでしょ。私たちは戦争はしない。

そっちが仕掛けてくるのは勝手だけど、私たちがそれに応える義理はない。

実際、あなたたちの攻撃は私程度でも防げる。」

『…それが、理由か?』

口調は変わらないが驚愕の気配が伝わってくる。

今!

瞬間、ルーはレオーネを見、レオーネもそれに頷いて溜めていた力を解放する。

『エルクション・シード』

詠唱を省略した名前だけでの発動。

上げた手からはルーの障壁と同じくらいの風の陣が出現、

そこから現れた無数の風の針は、大砲という大砲すべてに降り注ぎ刺さった箇所を風化させる。

『なっ…!?』

ぼろぼろとまるで砂のように崩れていく大砲。

隙を突かれた形での攻撃、そしてその威力に使者は絶句し、ルーは静かに告げた。

「でも、その危ないものは封じさせてもらうわね。それがあると転移させるときにも困るし。

そして、あなたが使者というなら伝えて。

私たちは外の世界あなたたちに干渉しないし、干渉をされるつもりもない。」

『それは、』

使者が何かを言おうとしたがルーはそれを遮り、レオーネに合図する。

「言ったわよ?ちゃんと伝えてね。」

『テポレ・クルー』

レオーネが名を唱えると、風の陣とはまた違う今度は細密画のような陣が千の軍艦の下に展開し淡い緑の光を発する。

ヴンッー

耳に残るような音の後。

海を埋め尽くしていた千の軍艦は消え、それの代わりといったように大砲の残骸や、悪い『気』によって汚染された海が鈍く光っていた。

読んでくださってありがとうございました!

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