侵略
読みにくいです!どうかご注意ください…。
「うわぁ…。気合入ってんなぁ~…。」
「これを見ての感想がそれかよ…。」
ルーのこぼした言葉にレオーネは若干あきれる。
「えー。でもだって逆にここまでになるとそれくらいしかでてこないって。」
ルーは目の前に広がる光景を指ざした。
結界のすぐ外。
青とエメラルドグリーンの入り混じった海に、雲一つない空。
光が反射してまるで本物の宝石のように、いやひょっとしたらそれ以上に輝いている。
…そんな海に場違いな無数の軍艦。
数はおよそ千、といったところか。
ルーがいつも相手にしている100隻くらいの軍艦とは規模がまったく違っていた。
「…まあ確かに。ちなみにルー、これくらいのを相手にしたことは?」
「あるわけないでしょ。これは一体どうなっているのかしら…?」
「……。」
ルーの疑問をレオーネも心中に抱く。
可能性としては街の存在が知られた、くらいしか考えられない。
今までは幻の土地を追っていたが何らかの原因で街の存在を知った。…そう考えなければこの数の軍艦の説明はつかないだろう。軍艦あきらかに調査の域を超えている。
…ただ、レオーネはそれを素直には信じられないでいた。
街の結界を張っているのは街長たるフェレルだ。彼は普段はただの悪戯好きで厄介な老人だが、その魔法は街で一番なのである。レオーネはもちろん、ルーの『天使の魔法』をもってすら、その足元にも及ばない。
二人が警戒しているとドンッーと大きく重い音が響き、鉛玉が迫ってくる。
「えっ!?」
魔法で姿を消しているはずの二人に寸分違わずやってくる鉛玉にルーは思わず声を漏らす。
そんなルーの前にかばうようにでて、レオーネは片手を上げた。
『風よ、わが眷属よ。我らの身を守れ。シフィール!』
詠唱とともに風の陣が出現し、レオーネを中心に半透明の球体が形成される。
それとタッチの差で鉛玉がぶつかったが、その障壁の前にあっさりと無効化された。
「びっくりした…。」
「油断するなっていわれたろ。…でもやばいな。相手に俺らの位置がばれてるぞ?」
「ごめん、ちょっとびっくりして。魔法はちゃんとかかっているはずなのになんで…?」
ルーは今の状況を整理しようと深呼吸をする。
…今はレオーネがとっさに風の障壁を作ってくれたからよかったけど、そうじゃなきゃ反応が遅れてた。
数が多いのと対するときは絶対に隙をつくらないこと。…おじいちゃんから教わったことだ。
魔法は強力だが使うのは人間。
ふとした隙にやられてしまっては元も子もない。
ルーは気持ちを引き締め、じっと相手の出方を待つ。
すると、一番大きな軍艦から何かで声を拡張したのか、その場全体に聞こえる声で、
『我らはコルトス帝国の使者である。アンジュ・ポルト国の者よ、見えなくとも熱感知器でいることは分かっている。早急に姿を現せ。』
今の大砲は警告だとばかりに脅してきた。
ルーはレオーネの方を見て思わず聞いた。
「どうしよ?あと、熱感知器って何?」
「俺に聞くな。それに、判断するのはお前だぞ?
今街長の権限を代行しているのはお前だからな。俺はおまけだ。」
何食わぬ顔で身もふたもないことを言ってのけるレオーネ。
「ひどっ!?そしてなんて頼りにならない男なの!?」
「失礼だな。俺は、」
ドンッ、ドンッー
また新たに大砲が発射され、レオーネの障壁に当たる。
『もう一度だけ通告する。姿を現せ。我々は貴国らに話し合いをするために来ている。』
…。
こ、これは、もしかして!!
「どうしよ、レオーネ。あの人話し合いの意味わかってない。…言葉の意味、わかってないのかも!?」
「いや、あれは分かっててやっているんだと思うぞ。」
冷静につっこむレオーネにルーは心底驚いたとばかりに顔をしかめた。
「何それ!?外では、そういうのが流行りなの?」
「いやいや、だからあれは姿を現さないと問答無用で侵略するぞっていう意味だ。…これは、もう本当にばれているな。…どうする?」
前半は茶化して言ったレオーネだったが後半は真剣に聞く。
ルーは少し逡巡した後。
「魔法をとくよ。…ばれているなら、あの人たちの要件を聞いて街長であるおじいちゃんに判断を仰がなくちゃならない。…ただ、今の場は街長代行の私が仮の判断をしなくちゃだけど…。」
自信なさそうに話すルーに、レオーネは笑って応えた。
「わかった。」
励ますようにルーの頭をぽんぽん、と叩くと視線を軍艦にむける。
「…ありがと。」
小さくお礼を言い、そして表情をひきしめ、ルーは魔法を解いた。
青い光を放ち、現れる少女と少年の姿。
熱感知で誰かがいるとはわかっていたものの、思っていたよりもはるかに幼い姿に向こうは面食らった
ようだった。
『き、貴公らが、アンジュ・ポルト国の使者なのか!?』
「そうよ。私が街長代行。要件は何かしら?」
いつものルーを知っているものからすればありえないほどの冷たい口調と眼差し。
レオーネはずっと一緒にいて初めて見るその表情に驚きながらも、ルーの言葉を風を操って相手に聞こえるようする。
まだ相手は信じられないようであったが、熱感知で他に誰もいないことを確認すると、咳払いをしてから話し始めた。
『我らはコルトス王からの言葉を預かってきている。
―アンジュ・ポルト国、貴国らは即刻鎖国を解き、我らに下れ。
すでに世界の7割は我らが統一した。貴国らも我らの傘下に加わり、貴国らの固有の技術・魔法を我らに提供せよ。素直に従えば、自治と自由は認める。そうでなければ、侵略せざるを得ない。―
これが、王の言葉だ。我らは時間がない。…すぐに決めてもらう。』
一方的な通告にルーとレオーネの二人はあからさまに顔をしかめる。
「これってもう9割がた侵略な気がするのって私だけ?」
「というかむしろ侵略だな。こんな軍艦連れて話し合いも何もないだろ。降伏しろって暗に言っているようなもんだ。」
…しかも、今すぐ決めろなんて。
まあ、侵略なら言われなくても決まっているんだけど。
ルーは日頃からフェレルが口癖のように言っている言葉をそのまま口にした。
「私たちは戦争はしない。」
『では、我らに従うと?』
「いいえ。あなたたちにも従わないし、私たちもあなたたちに干渉しない。
ただ、そっちが攻撃してくるというなら、私たちは守るだけ。」
『わけのわからないことを。だが、通告はした。
これより、コルトス帝国はアンジュ・ポルト国に宣戦布告をする!全軍、撃て!!!』
「だから、宣戦布告されてもこっちは受けないってば。」
号令とともに、やってくる無数の砲弾。
再びレオーネが障壁をはろうとするが、ルーがそれを制した。
「私がやるよ。大規模なのは私の方が得意だからね。レオーネは武器破壊の準備しといて。これだけ多いと眷属集めるのに時間かかるでしょ?」
ルーの不敵な笑み。
レオーネも笑って返す。
「じゃあ頼んだ。ちゃんと耐えろよ?」
「もちろん。」
ルーは答えると、両手を前にだし、『呼びかける』。
『空と海よ、私にその力の一端を返し、害するものを阻みなさい。』
空からは青のグラデーションの光。
海からはその色、青とエメラルドグリーンの混ざった光がそれぞれまるで昔から一つであったかのよう混ざり合い巨大な障壁を形成する。
幻想的な光の障壁に無数の砲弾は当たるとすぐに光となって消えていった。
読んでくださってありがとうございました!
…会話が入ってくると色々ぼろがでます…