幼馴染
急いで書いたのでいろいろ抜けてるかもです
「勘弁してくれよ…そんな大したことじゃないんだって。」
レオーネは降り注ぐルーの鋭い視線を辛そうに受け止めながら言った。
「レオーネにとって大したことがなくても私にとっては大したことだもの。それに、小さな子供も巻き込んでいたんだよ?もう少しで大事よ?どこが大したことないんだろうね…?」
「うっ…。」
「で?戻るけど説明してくれるよね。」
それはもはや疑問形ではなく命令形で。
レオーネは観念したといったようにぽつりと話し始めた。
「…天使役。」
「え?」
突然タイムリーな言葉がレオーネの口から出てきて驚くルー。
思わず聞き返す彼女にレオーネは繰り返した。
「天使役。お前がやるんだろ?」
「う、うん。なんで知ってんの?私だって知ったのさっきなのに。」
目を丸くしながら問い返すルーにレオーネは呆れ半分驚き半分、といった様子で応える。
「なんでって昨日、学校に掲示されてたぞ。お前が早退、っていうかじいさんに『雑用』押し付けられて帰った後。…天使役は毎年学校の生徒から成績優良なやつが選ばれるってんで注目されてるからな。
それはそれは大変な騒ぎだったぞ。知らなかったのか?」
「知るわけないでしょ!?
大体、私が帰った後に掲示されたっていうのにどうやって知れと!?」
「いや、俺はてっきりじいさんに聞いたものだと…じいさん相変わらずだな。」
憐憫の眼差しをむけてくるレオーネにルーは気づくことなくわなわなする。
…あ、あの街長め。人に『雑用』を押し付けた上に本人の承諾なしで掲示…!?
朝聞いたのは形だけっていうこと!?
…最初から私はあいつの手のひらで躍らせれてっ…!!
「ルー?大丈夫かー?」
レオーネの呑気な声で我に返る、ルー。
…そうだ、今は尋問の途中。その話は置いといて…本当は置いとけないけど、話の続きを聞かなくちゃ。
ルーはすーはーと深呼吸をしてから話を元に戻した。
「それで、私が天使役やることとさっきの小競り合い、どう関係してるの?」
「いや、あの…お前が…その…」
「あーもうはっきり言ってよ。普段はすぐツッコむくせに。」
「うるさい。とにかく、あれだ。天使役がお前っていうことが気に入らないってやつらがいてだな…。
さっきの奴らはその八つ当たりってとこだ。」
そっぽをむきながらまくしたてるように話すレオーネ。心なしか、頬が少し赤い。
ルーは今の説明を頭の中でゆっくりと咀嚼する。
…私が天使役なのに不満な人がいて、(まあ私もその一人なんだけど)さっきの奴らはレオーネに八つ当たりしてきた、と。
…あれ?
ここでルーはあることに気づく。
…八つ当たりするなら幼なじみのレオーネじゃなく私に直接した方が手っ取り早いし憂さも晴れるんじゃ…?
何でレオーネに……
首を傾げること数分。
何も言ってこないルーの様子におかしいと思ったのかレオーネは固まっているルーの目の前で軽く手を振る。
「おーい?」
返答はない。
諦めて手を組みしばらく待っていると、突然ルーが手をぽん、と叩き次いで先ほどのレオーネと同じく頬を赤らめた。
「ありがとね。」
短くそう言い、小さく微笑む。
…そうだった。
こいつが誰かと喧嘩するのは大抵自分のこと以外、他人のことでだった。
多分、私の悪口か何か言ったさっきのやつらと言い合い、それが小競り合いにまで発展したのだろう。
すぐに説明できなかったのは私が絡んでいたから、かな。
「ん。」
レオーネは照れを隠すように素っ気なく応えた。
その返事がなんだかうれしかったが、返すほどのことではないのでルーはとりあえず念押しをする。(もともとこれが目的というのは秘密。)
「でもやりあう時はちゃんと周りを見ること。今日みたいなことにならないようにね。」
「ああ。気をつける。さっきはお前が来てくれて助かったよ。」
最後の方は口早に言い、レオーネは話題を変えるようにところで、とルーの服に視線をやった。
「お前、その格好…」
ぎくり、とあからさまに反応するルー。
そうだった。…そうだったよ。元はこの格好を見られないように空の散歩をしていたんだった…。
しかも見つかったのはレオーネ。絶対つっこまれる!!!!!
……。
「おい、ルー?」
「…ふふ。」
薄く笑うルー。
…もうこうなったら開き直ってやる。いや開き直らないとやってられない。
「何よ?天使の衣装だけど何か問題ある?…言っとくけど自分でも性にあわないとは自覚しているのよ!!!」
しかし返ってきたのは意外な言葉だった。
「いや……そうじゃなくて…お前、その格好で空飛んでたのか?」
「……。」
……はっ。
いつもは男物の服を着ているから気にしていなかったけれど今日はワンピース。
「…やっぱり気づいてなかったか。」
レオーネは嘆息し、先ほどとは逆にルーを叱り始めた。
「お前な、自分の恰好をもっとちゃんと意識しろ。いつもと違うんだぞ?
それにお前だって年頃の女の子なんだからそれなりにいろいろと気にしろ。」
「うぅぅ。」
「大体日頃からお前は気にしなさすぎだ。男子の着替え中に何食わぬ顔で入ってきたり、教室で着替え始めたり…。」
指で数えながら、ルーの日頃の行いを上げていく。
そんなレオーネにルーも一応、反論してみた。
「で、でも着替えるときはちゃんと教室に誰もいないことを確認するもん。」
「…確認した後、男子が入ってきそう、いや入ってきたことが何回あると思っているんだ?
その度にどうにかする俺の身にもなってみろ。」
「うっ…。」
確かに、何回か下着姿の時に男子が入ってきてレオーネが慌てて追い出してたりはしていた。
…していた。
だから結局なにもなかったわけで。
「うん、それなら特に問題はないんじゃ?」
瞬間、私は声にしてしまったことを後悔する。
「問題あるからな!?どう考えても問題しかないからな!?」
ものすごい勢いで怒るレオーネ。
…私が気にしていないんだから別にいいと思うんだけど。
でも、謝っておいたほうが長引かなそうだったのでとりあえず謝っておく。
「ごめん、ごめん。」
「そんな棒読みで言われてもな。とりあえず今日はもうそのまま飛ぶなよ。」
あきらめたように嘆息し、釘押さす。
しかし、ルーは大丈夫と手を振った。
「あ、平気、平気。よくよく考えたらワンピースの下にドロワーズもはいてるし、そもそも空を飛ぶ儀式のときに着るための服だから、デザイン的にもそこらへんは配慮されてたよ!」
満面の笑みを浮かべるルー。
…この後彼女はレオーネに小一時間説教された。
読んでくださってありがとうございました!
前回と同じく文法の誤りや誤字・脱字は一応チェックしているのですが発見され次第、ちょこちょこと直していきます。